『必読』ダイジェスト 2025年上半期、環境シンクタンク「E20環境プラットフォーム」固体廃棄物産業研究センターの潘功主任が20か所余りのゴミ焼却場の調査・研究を行ったところ、そのうちの三分の二の企業がゴミ供給不足の問題に直面していることが分かった。
研究機関によると、全国の2172か所のゴミ焼却炉の平均負荷率は60%に至らず、40%の能力が休眠状態にあることが判明した。なかでも5%の焼却炉(107か所)は2024年に半年以上の運転停止をしており、「燃やすゴミがない」という休眠状態に陥っていた。ある上場企業の華北における大型ゴミ焼却施設は、現在ひとつの省のゴミ焼却業務を請け負っているが、その利用率はわずか60%程度だという。
十数年前、「ゴミが都市を取り囲む」という言葉が人々によく知られていた。多くの都市でゴミが山のように積み上がり、処理能力が深刻に不足しており、これは全国的な現象であり、メディアが争うように報道したが、その後どうなったかは誰も知らない。それが今や180度の逆転をみているとは、誰が考えただろうか。
燃やすゴミが足りないという状況はどうして生まれたのか。潘功はゴミの供給不足には三つの理由が考えられるとしている。一つ目は、ゴミ焼却場を過度に建設したためで、ほぼ県ごとに造られたため、供給アンバランスが引き起こされたためだ。二つ目は、今後の人口とゴミの量の増加予測が楽観的すぎたこと。三つ目はゴミの量と経済活動の活性度は関係があり、近年経済成長が鈍化したことで、国内の一人あたりのゴミ廃棄量が上がらず、国際的な増加レベルよりも顕著に低いためである。
たしかに中国のゴミ焼却場の増加速度は異常なほどであった。「第14次五か年計画」では、2025年末までに全国の都市・農村部の町の生活ゴミ焼却処理能力を1日あたり80万トン程度にするとしている。中国生態環境部の定例発表会が発表したデータによると、2024年10月の段階で中国のゴミ焼却処理能力はすでに1日あたり約111万トンに達していて、「第14次五か年計画」の目標を上回っていて、2016年の全国のゴミの1日あたりの焼却能力はわずか23万8000トンであった。
ゴミ焼却場の超速建設の直接的原因は、政府の強力な後押しにある。実際、大部分の焼却場の運営は中央財政や地方財政に依存している。中国のゴミ焼却場の収入は二つの部分に分けることができ、一つはゴミ焼却による発電がもたらす収入で、そのうちの一部は国家の補助によるものだ。そしてもう一つがゴミの処分費で、一般的に地方政府が支払う。
このほか、焼却後のゴミには約20%の固体廃棄物が残り、100トンのゴミならば残った20トンの固体廃棄物の中には銀・ニッケル・マンガン・錫などの金属が含まれていて、純化後には金1グラム相当の価値がある。そのため焼却工場は悪くない商売なのだ。
しかし現在、ゴミ焼却場は生存の危機に直面し始めている。ゴミ不足以外にも、国の補助がしだいになくなりつつあり、特にここ2、3年は経済情勢がよくないため、地方政府の財政力が激減し、ゴミ処理費の滞納も始まっている。
これに対し、中国のゴミ焼却業界はいま、工業ゴミを混ぜて焼却する、貯蔵ゴミを掘り出すなどの自救措置を取り始めている。2024年9月、広州市白雲区では、一部のゴミ埋め立て地を掘り起こし、貯蔵ゴミを計350万立方メートルほど掘り出すことを提起した。浙江省金華市もゴミを手に入れるため、3~4年をかけて以前に埋めた26万トンの古いゴミを掘り出す計画である。
しかし、ゴミ焼却場が破産すると都市のゴミ処理問題に影響がでるため、地方政府はなるがままにしておくわけにはいかず、破産寸前のゴミ焼却場の一部は政府の補助金を得ることになるだろう。
実際にはまったく解決策がないわけではなく、業界内の専門家は、ゴミの焼却場は今後いまだいくつかの面でチャンスをもっていると指摘する。まず、焼却場に入るゴミの発熱量が高まるにつれ、運営レベルの向上とともに、より発電効率を高めることができる。次に他の廃棄物処理産業に乗り出し、焼却場とシナジー効果を生む、あるいはコンクリートなどの産業と結びついて、循環経済を発展させるなどだ。
さらにもうひとつ重要な方向性は「輸出」で、中国のゴミ焼却業界は技術からいっても、コストからいっても、運営経験や投資能力からいっても、世界のトップレベルにあり、海外市場を開拓する強みをそなえている。中華環境保護連合会が発表した統計データによると、2025年5月末時点で、中国企業が参加する海外のゴミ焼却プロジェクトは(すでに調印済みも含む)79か所に達し、それはアジア・アフリカ・ヨーロッパ・オセアニア、南北アメリカにあまねく分布している。
(『日系企業リーダー必読』2025年7月20日の記事からダイジェスト)
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