【毎週日系企業ウォッチ】
研究院オリジナル 中日企業の技術協力はもはや「こちらは研究開発、そちらは応用」という片道モデルでは成り立たず、新たな協力関係を築く必要あり/ホンダの水素燃料電池自動車が中国で展開、将来が期待される/日本の外食企業は長期的なデフレ対応の経験を活かし、「低価格ながら品質は落とさない」というイメージで急速に中国市場を席巻
中日企業の技術協力のスタイルは変革期にある
しっかりした工業の蓄積に基づき、日本は巨大な技術の宝庫である。ハイエンド製造、新素材、ロボットなどの分野で、厳しい現場検証を経た「ハードテクノロジー」を数多く蓄積している。しかし他方では、現在の日本市場は飽和状態になりつつあり、多くの優れた技術を規模化できる応用シーンを見つけられずに苦しんでいる。そして今、世界で最も完全な産業チェーンと最も活発な市場を持つ中国は、間違いなくこれらの技術にとって最良の「実証フィールド」と「価値増幅器」である。中日技術協力の見通しと余地は非常に期待するに値する。
ただし、従来の技術取引の方式ではもはや通用しない。現在の科学技術革命の核心的特徴は融合である。まずは境界が曖昧になっている。製造業とサービス業が融合し、ハードウェアとソフトウェアが融合している。例えば、一つのインテリジェンス・ロボットソリューションの背後には、機械工学、AIアルゴリズム、データ分析とアフターサービスの複合体がある。二つ目は、イノベーションが加速している。研究室から生産ラインへの経路が大幅に短縮され、今日はまだ研究室の新発見でも、明日には業界の標準装備になるかもしれず、企業が新技術を「ゆっくり消化」していくための時間的余裕がますます短くなっている。この速度に、全ての参加者が、より柔軟で、より開放的になることを強いられている。そしてこれがまさに中日技術移転の難点でもある。例えば、ある中国の家電企業が日本の某大学の省エネルギーアルゴリズム技術にマッチングした。日本側が提供したのは一式の複雑な理論モデルであるが、中国側が必要としたのは既存の制御システムに直接組み込めるソリューションで、双方の需給にミスマッチがあったというケースだ。
これは、中日企業の技術協力はもはや「こちらは研究開発、そちらは応用」という片道モデルでは成り立たず、双方が早期から深く相互に関わることで、長期にわたるウィンウィンの協力関係を築く必要があることを意味している。
ホンダの水素燃料自動車、将来が期待される
中国の水素燃料電池自動車市場に展開するのはトヨタだけではなく、ホンダも積極的に推進を続けている。
10月22日、本田技研工業(中国)投資有限公司と中国東風汽車集団股份有限公司は、共同で水素燃料電池商用車の社会実証運行を開始、双方は共同合弁企業——武漢東本儲運有限公司に委託し、「率先して武漢市の既存物流配送路線で関連実証運行を展開し、その後広州、上海などの地域に拡大していく」という。
トヨタが乗用車を主とするのとは異なり、ホンダは商用車に焦点を当てている。中国は2060年カーボンニュートラル目標を掲げており、商用車分野の炭素排出量は運輸交通業の約70%を占めている。ホンダが商用車を切り口として選択したことは、中国の「ダブルカーボン」戦略目標に合致するものである。
ホンダのもう一つの考えは、中国の電気自動車市場の競争の激しさを回避することかもしれない。水素エネルギー分野はまだ初期段階にあり、ホンダは東風との協力により、その商用車製造経験と物流シーンの資源を利用し、潜在市場に素早く参入することで、BYD、テスラなどと電気自動車分野での直接競争を避ける。
ウォッチャーは、ホンダの水素燃料車の進展は順調で、将来が期待できると見ている。武漢東本儲運によって、完成車製造、物流運営資源を統合し、「研究開発――製造――運営」システムを形成させている。この措置はコストを削減するだけでなく、燃料電池技術の中国における複雑な道路状況などでの検証と最適化を加速する。
武漢東本儲運の水素エネルギー物流車は毎日200キロ以上を走行、水素エネルギー車の急速充填は3分、航続距離は600キロで、充電に4時間かかる電気自動車より長距離運輸に適している。
コストも絶えず最適化されている。武漢では12基の物流ハブ水素ステーションが建設済みで、充填価格は35元/kgまで下がっている。ホンダの次世代燃料電池モジュールのコストは半減し、中国現地産業チェーンの成熟(例えば、スタックのコストが2019年比60%低下)と重なり、2030年には水素エネルギー大型トラックの全ライフサイクルコストがディーゼル車より12%低くなると見込まれている。
日系の外食企業が過当競争の中国市場を席巻
ウォッチャーは、週末に中国のいくつかの大都市で、サイゼリアの入口に常に長い列ができていることに気づいた。15元のミラノ風ドリア、16元のイカスミパスタは、デリバリーを注文するよりお得である。スシローでは8元で一皿の寿司が手に入り、照焼チキン寿司は10元で、食事時には空席を見つけるのも一苦労だ。
誰が想像できただろう。かつて高価で知られた「精致な日本料理」が、今や「低価格」で中国市場を席巻しているとは。
実は少しも不思議なことではない、30年の「デフレ」経験を持つ日本企業は、現在の中国消費者が何を必要としているかを熟知している。簡単に言えば、人々は支出により慎重になり、かつて食事する際には「雰囲気が良いかどうか」を見ていたが、今は「少ない出費でいかに満足感を得られるか」をより重視している。
価格競争も中国企業の強みではあるが、如何に「低価格ながら品質は悪くない」ことを実現するかにおいて、日本の外食企業は核心的な優位性を持っている。日本は1990年代からデフレを経験しており、消費者は価格に特に敏感であることから、外食企業が生き残るためには、「節約」において極めなければならなかった。このような環境で鍛えられ、効率の高い運営能力を練り上げてきた日本の外食企業は、今ではこのノウハウを中国に持ち込み、大いに腕を振るっている。
ますます多くの日本の外食企業が中国で低価格戦略を推し進めつつあり、例えば「焼肉KING」を運営する物語コーポレーションは、以前は客単価1万円(約500元)の蟹料理を主力としていたが、今では客単価77元のハンバーグ専門店「肉肉大米」に転身、5年で100店舗という、現在の2倍以上まで拡大する計画がある。また、トリドール・ホールディングスの牛肉店「肉のヤマ牛」は、中国で販売する焼肉丼が30.8元と、日本での販売価格より安く、中期計画ではグレーターチャイナにおける店舗を5店舗から500店舗に拡大するとしている。
サイゼリアはさらに野心的な計画を立て、2035年までに中国の店舗を1000店舗、現在の2倍に拡大することを目指している。
『日系企業リーダー必読』は中国における日系企業向けの日本語研究レポートであり、中国の状況に対する日系企業の管理職の需要を満たすことを目指し、中日関係の情勢、中国政策の動向、中国経済の行き先、中国市場でのチャンス、中国における多国籍企業経営などの分野で発生した重大な事件、現状や問題について深く分析を行うものであります。毎月の5日と20日に発刊し、報告ごとの文字数は約15,000字です。
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