『必読』ダイジェスト 英『フィナンシャル・タイムズ』の5月13日付の記事では、「中国企業は現在、サプライチェーンの中から外国の部品を取り除く動きを加速させており、米国との貿易の緊張情勢が世界最大の二つの経済大国間のデカップリングを加速させる可能性がある」と指摘している。


米国が中国に対し高額の追加関税を課した後の数週間で、上海と深圳で上場している20社余りの企業が投資者に対し、「現在、外国製品の代わりとなる国内製品の調達に尽力している、あるいは同業者の仕入れの現地調達によって利益を受ける見込みである」と伝えたとこの記事では述べられている。


英『フィナンシャル・タイムズ』が目にしたこれらの財務報告は、半導体・化学工業・医療機器といった企業が発表したものである。これらはサプライチェーンの永続的な再構築によって、トランプの貿易戦争の潜在的で長く続く影響を示している。


記事によると、トランプの関税措置、および北京の反撃措置としての米国からの輸入商品に対する追加関税は、どちらも企業のこうした取り組みをさらに後押ししている。中国企業は地政学的衝突による不利な影響を避けようと努力している。


記事では米国調査企業ロジウム・グループのあるアナリストの言葉をひき、関税措置は、「中国企業に自給自足をさらに強めてほしい」という北京の願いを強くするだけで、「彼らは明らかに緊迫性を感じ取ったのだろう」と指摘する。


記事では「中国官僚の考え方に詳しいある人」の言葉を引き、「中国政府はこの貿易紛糾が自力更生政策の必要性と正確性を証明するものとみなし、この自力更生政策によって中国は米国の最新の圧力の波に対抗する能力を持ち得ると考えている」と述べている。


この記事が挙げている例によると、中国トップクラスの工業用ロボットメーカーの一つであるエスタン・オートメイション(Estun Automation)について、先月発表した年度報告のなかで、この企業が今、「外資ブランドが独占していた大顧客市場の迅速な奪取をはかっており」、自らのサプライチェーンの優良化をはかり、「原材料の国産品への切り替えを増やす」と投資者に訴えているという。


この企業のあるマネージャーは、現地化レベルをあげ、「コストを下げる」と語っている。「これは貿易戦争のみならず、全世界の経済が不安定であるためだ。われわれはできるだけスムーズにサプライヤーを替えたいと考えている」とのことだ。


中国国営の緊急設備製造企業の中船応急(China Harzone Industry Corp)は先月投資者に向け、「弊社では長年にわたって一貫して『国産品への切り替え』を強く推進してきており、関税に対応するため、国内の供給割合をあげ、いまだに北米から仕入れているごく一部の部品を切り替えようとしている」と語っている。


この企業はさらに、国内・国際という二つの循環が互いに促進する新たな発展構造を構築し、積極的に海外市場を切り開き、東南アジア・アフリカ・南米地区を深く開拓していくと述べている。


記事は「一部のアナリストの考えでは」としたうえで、「2015年に発表された“中国製造2025”計画は国内企業の主導戦略業界に明確な目標を設けたもので、ある程度において第一次トランプ政権時の貿易戦争を引き起こす要因ともなった」としている。


中国EU商会の最近のあるレポートによると、この政策は電気自動車・造船・鉄道設備などの業界においては成功した――中国の製造業は現在これらの業界でトップの地位にある――が、「この政策はまた一部の業界では効率の悪い投資や生産能力過剰を奨励することにもなり、さらに貿易パートナーとの緊張した関係を助長させた」として警告している。


「中国が国内仕入れ優先を推進する取り組みはまた、第三国のサプライヤーにも影響を与える可能性がある」と、この記事は指摘する。遼寧のシリコン素材サプライヤーである神工半導体公司(Thinkon Semiconductor)のある経営者は、「もう米国からは製品を輸入せず、日本・韓国・欧州からより多くの化学試薬を輸入しようとしている」という。そのうえでまた「さらなるリスクを避けるため、これからも(サプライヤーの)現地化を進めていく」とも語っている。


湖南省のベアリング製造企業の崇徳科技(Hunan SUND Technological Corp)のある責任者は、「中国の関税反撃措置は、蒸気やガスのタービンの中に米国のベアリングを使うことをメーカーに放棄させた」と語る。


「今、誰もが国産品への切り替えについて語っている」。長期的に見れば、多くの中国の顧客は国産製品を永久的に使うことになるだろうと彼は予測する。「これは段階的に進められる切り替えプロセスとなるだろう」


(『日系企業リーダー必読』2025年5月20日の記事からダイジェスト)

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