【毎週の日系企業ウォッチ】


研究院オリジナル 一汽トヨタの幹部が微博(ミニブログ)で小米(シャオミ)自動車の創設者である雷軍氏を「概念をでっち上げたうえ、数値まで間違えている」と名指しで批判しているが、これは非常に珍しいことである。中国で最初に無糖茶飲料のジャンルを開拓したサントリーは、最初の大幅なリードから現在では次第に後退しつつあり、深く考えを巡らせるに値する。ユニクロと京東(JD)はかつての短い協力の後、10年ぶりに再度「手を携える」ことになった。


異例のトヨタ幹部が小米自動車の雷軍氏を名指しで批判


この頃、一汽トヨタ自動車販売有限公司の企画部部長である趙東氏は、微博(ミニブログ)で小米自動車の創設者である雷軍氏を「概念をでっち上げたうえ、数値まで間違えている」と名指しで批判し、小米自動車の「ホイールアクスル比」(車輪直径と車軸の比)という概念に疑問を呈した。トヨタやその上級社員が同業他社にコメントすることは極めて稀であるため、この動きはすぐに業界で話題となった。


小米自動車は発売時にそのスポーツ性能を宣伝するため、特に「ホイールアクスル比」(車輪直径と車軸の比)という用語を提唱し、「ホイールアクスル比が大きいほど車のスポーティ感が強まる」とした。雷軍氏は小米自動車の3倍の「ホイールアクスル比」を「百年の高級車デザインの秘密」と宣伝し、小米の新車への予約は3分間で20万台に達した。その後、東風日産N7、智己(IM)L6、享界(STELATO)S9Tなどのブランドも後に続き、自分たちも3倍の「ホイールアクスル比」だと宣言した。


趙東氏は微博で次のように述べている。「“ホイールアクスル比”という概念は雷軍氏のオリジナルで、自動車理論にはもともとそんな用語はない。乗用車が3倍の“ホイールアクスル比”なら、トラクターになってしまうのではないか?さらに、小米が3倍の“ホイールアクスル比”とは後輪の間にタイヤが3つ入るということだとするなら、車軸とタイヤ直径の比は4倍であり、3倍ではない。簡単な計算すら間違っている」


趙東氏はまた、「小米自動車はデータ改ざんの疑いもあるとし、小米SU7が宣言する“ホイールアクスル比”は0.68だが、トヨタのエンジニアが実際に測定したところ0.62前後だった」としている。小米はポルシェ911と比較した後に自社の“ホイールアクスル比”がより優れていると宣伝したが、実際の911には“ホイールアクスル比”は0.71で、小米を大きく上回っていたという。


業界では、小米自動車のこの「概念のでっち上げ+データ改ざん」というやり方は、「トヨタの許容範囲を超えたもの」と考えられている。世界も術において最も堅実な自動車メーカーの一つとして、トヨタはこの「小手先の技巧」的色彩の強い行為を誰よりも快く思っていない。そして、中国国内の多くの消费者がさまざまな新コンセプトや新パラメータに惑わされ、何よりも基本的なエンジニアリング素养と製造品質を見落としていることが、トヨタのような「技術志向」自動車メーカーを非常に苛立たせている。


一方で、中国の新エネルギー自動車の台頭は、確かにトヨタにこれまでにないプレッシャーを感じさせてもいる。トヨタはハイブリッド分野では依然としてリードしているが、電気自動車市場では中国ブランドに大きく水をあけられている。


結局のところ、この件は二つの自動車製造理念の衝突を反映している。トヨタは伝統的な自動車メーカーの技術蓄積ルートを代表しているが、小米は中国の自動車製造「新勢力」の迅速な発展を代表し、「インターネット的思考」で自動車を製造し、まず製品をリリースし、使用しながら絶えず改良を加えてゆく。マーケティングのコンセプトは次々と現れるが、エンジニアリングの基盤は比較的脆弱である。


当研究院は、二つのルート自体に正解・不正解はないと考えているが、問題は、マーケティングのためにコンセプトをでっち上げたり、誤ったデータで消费者をミスリードしたりしてはならないということだ。この過度なマーケティングの風潮は最終的には業界や企業を損なうことになる。


注目すべきは、監督当局がすでにこの乱れた現象に関心を寄せ始めていることである。今年6月、三つの部門が共同で声明を出している。「自動車メーカーは誇大や虚偽の宣伝をしてはならず、手抜き工事で“内巻き型(内部の過剰で無意味な)”競争をすることを固く禁じる」


サントリーは中国の無糖茶市場の開拓者だが、それでも農夫山泉に敗れる


近年来、無糖茶飲料が中国市場で急速に台頭している。業界報告書によると、無糖飲料市場規模は2025年に600億元を突破し、2022年と比較して2倍になると予想されている。しかし、中国で最初に無糖茶飲料の分野を開拓した日系企業のサントリーは、最初のトップの地位から次第に劣勢になりつつある。


市場調査機関の馬上贏のデータによると、2024年第2四半期から2025年第1四半期の「無糖茶飲料」カテゴリーTOP5において、一位の農夫山泉は四半期平均の市場シェアが70%を超え、四半期ごとに成長している。二位のサントリーの市場シェア平均は約8.7%で、四半期ごとに減少している。


サントリーの烏龍茶は1997年には早くも中国に進出、一貫して中国市場に深耕しており、その結果2018年には中国の無糖茶飲料市場が爆発的に成長、サントリー烏龍茶はこの市場を代表するブランドとなった。中国連鎖(チェーン)経営協会が公表した「2022年中国コンビニエンスストア・ベストセラーリスト」によると、サントリー500ml無糖烏龍茶はリストで5位となり、トップ10で唯一の茶飲料であった。


では、中国の現地競合他社はどのようにして市場リーダーであるサントリーを追い越したのか?


業界では、中国の現地ブランドは製品イノベーション、チャネル浸透、ブランドの若返りの面でより優れていると考えられている。例えば、農夫山泉のブランド「東方樹葉」は製品ラインを絶えず拡大し、青柑プーアール茶、玄米茶など多数の新製品をリリース、消費者の多様なニーズを満たしている。これに対し、サントリーは製品マトリックスの更新で明らかに遅れており、烏龍茶製品は一定の評価を保っているものの、新製品のリリース速度は遅く、急速に変化する消費ニーズを満たすことは難しい。


そして、重要な勝因はチャネルネットワークである。2024年の無糖茶飲料企業トップ10のうち、7社はチャネル力の強力な飲料メーカーで、農夫山泉、康師傅、統一、コカ・コーラ、元気森林、哇哈哈、東鵬などが含まれる。これらの企業は強力な流通ネットワークを拠り所として、製品をさまざまな層の市場に浸透させている。一方、サントリーの優位な地域は一、二線都市およびコンビニエンスストアチャネルに集中しており、これらの地域でも果子熟了、茶小開などの新興ブランドから絶えずシェアを浸食されつつある。


当研究院では、現在の中国市場の競争は単一の優位性による競合を超え、総合的な実力の競争に進化していると考えている。チャネルの統制力、ブランドの影響力、製品のアップデート能力、サプライチェーンの効率という総合的な実力が勝利の鍵となる。これはすべての外資系ブランドが正面から向き合わなければならない課題であろう。


10年の時を経て、ユニクロはなぜ京東といま再び「手を携える」のか?


ユニクロの京東(JD)旗艦店が9月8日に正式オープンしたが、京東はその前日から高らかに発表していた。ユニクロと京東の前回の協力は2015年だったが、その協力はわずか3ヶ月で終りを告げた。10年後の再度の協力に、双方は高い期待を寄せている。


業界では、今年に入り、ユニクロの中国市場戦略に調整があり、店舗拡大の面では、ブランドイメージを代表できる旗艦店や大型店の建設を重点的に強化しつつ、非効率な店舗を縮小しており、この部分の空白はオンラインで埋める必要があると考えられている。


ユニクロと京東の協力は、オンライン消費市場を強化するための重要な施策である。同時に、ユニクロは京東の強力な物流能力に着目しており、顧客がより早くユニクロ製品を手に入れるのをサポートすることができ、「即時零售(オンデマンド・リテール)」がアパレルブランドの新たな成長の原動力となっている。さらに、京東が持つサプライチェーン統合、物流、技術、及びデジタルオペレーション能力は、ユニクロがオペレーション効率を最適化し向上させるのに大いに役立つだろう。


そして、京東は実はずっと「ファッションへのあこがれ」を抱いてきた。2010年の京東の出発点はアパレルだった。2017年、京東はファッション事業部を設立、メディア報道によると、当時の劉強東氏のスケジュールの90%はアパレル関連だったという。2025年、京東はアパレルと化粧品の分野で売り上げ1億元超えが100製品、1000万元超えのヒット商品が2000品目、100万元級商品では30000品目を目標としていることを発表。国際ブランドや国内の主要ブランドの出店を誘致するため、京東は積極的に支援し、優良なアクセス数を提供してきた。


ユニクロは中国市場に進出した最初のファストファッションの国際企業であり、京東アパレル(JD FASHION)から見ると、今回の協力は京東に膨大なファンのベースと市場認知度をもたらすことになるだろう。

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