『必読』ダイジェスト 中米関税戦争は中国で経営活動を行う外資系企業にどの程度の影響を与えるのか。中国ドイツ商会(在中国ドイツ商工会議所)華北・東北地区執行取締役兼取締役会メンバーのオリバー・オームス(Oliver Oehms)氏は4月21日、中国メディアに対し、「米国の相互関税政策はグローバルサプライチェーンに高度に依存する中国とドイツのいずれにも妨害をもたらしている」と述べた。だが、中国にあるドイツ企業にとって、影響は比較的限定的だ。中独企業の協力を促進するため、中国が開放を一段と拡大し、特に公共調達分野で国内外資本を平等に扱うのを実現し、知的財産権の保護を強化し、法律サービスなどの特定分野で参入基準を緩和することを期待している。


オリバー・オームス氏は次のように述べた。「最近の在中ドイツ企業への調査によると、経営が関税の影響を全く受けないと述べた企業は少数にとどまり、残りの企業は多かれ少なかれ試練に直面しており、一部の企業は米国から原料を調達したり、米国に顧客を持ったり、製品ポートフォリオの一部が米国から来ている。だが、ドイツ・米国間の関税情勢と比べると、これらの関税が在中ドイツ企業に与える影響は相対的に小さい」


オリバー・オームス氏は次のように見ている。その背景にある主な理由は、中国で生産し、主に中国の顧客にサービスを提供し、一部の事業のみがアジアの他の地域に拡大している「中国で中国のために」(In China、for China)戦略にある。このような高度なローカライズ・モデルは、ある程度において、在中ドイツ企業に「シールド」をもたらした。


中米関税紛争は間違いなく在中ドイツ企業のサプライチェーンに影響を与えるが、業界によって影響の程度の差がある。自動車、化学工業などの業界は現地化(ローカル化)の程度が高く、受ける影響は限定的だが、サプライチェーンが高度にグローバル化している航空業界のような業界は、より大きな影響を受ける可能性がある。


オリバー・オームス氏は、今後の在中ドイツ企業の戦略調整は「情勢が悪化し続けるか否かによって決まる」と述べた。現時点では、すでに中国でビジネスをしているドイツ企業は、関税の妨害を回避するために現地化を加速する可能性がある。


ドイツの対中直接投資は欧州連合(EU)加盟27か国の対中投資規模の約半分を占めている。ドイツ連邦銀行(Bundesbank)が2024年8月に英『フィナンシャル・タイムズ』紙に提供したデータによると、2024年上半期の対中直接投資は合計約73億ユーロで、2023年通年の65億ユーロを上回った。


「過去数年間、ドイツの対中投資は比較的高い水準で安定しており、この傾向は大きく変わることはないと見られている」。オリバー・オームス氏は次のように述べた。既存の中国企業の経営信頼は根本的に揺らいではいないが、中国への進出や投資を検討している企業はより慎重にリスクを評価し、世界的な不確実性の高まり自体が国際投資を抑制する可能性があるが、これは中国だけの課題ではない。中国以外の地域の高い対等関税には90日の猶予期間があるが、ドイツ企業が中国から東南アジアに投資をシフトさせる傾向は現時点では見られていない」


オリバー・オームス氏は、「ドイツの産業界は一貫して関税に反対している」と強調し、「現在の情勢の積極的な面として、中国・欧州とも強い意思を示しており、パートナーシップを新たな高みに引き上げたいと望んでいる」と述べ、さらに、特に最近の欧州委員会委員長と中国指導者との電話会談に言及し、「ハイレベルの相互作用(インタラクション)は、米国の関税政策が持続的にもたらす可能性のある各方面の損失をヘッジするのに役立つ」と話した。


また、オリバー・オームス氏が期待しているのは、中国が公共調達分野で国内外の資本を平等に扱い、知的財産権の保護を強化し、法律サービスなど特定分野における参入緩和を実現することだ。EUは中国企業の技術力と産業貢献をより客観的に見て、高い貿易障壁を設けることは避けるべきだ。理想的な方向性は、開放的な対話メカニズムを構築し、中国の対欧投資を誘致することであり、障害を設けることではない。


(『日系企業リーダー必読』2025年5月5日の記事からダイジェスト)

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