『必読』ダイジェスト 関税戦争の開戦後、中国は報復措置をとり、米国からの輸入製品に対する関税率を125%まで引き上げた。では、中国のどの分野が影響を受けるのか?


中国が米国から輸入している商品の中で、電気機械製品、農産物が最も多くを占め、その比率は合わせて60%前後に上る。農産物は代替可能性がとても高いため、中国は少しも不安を感じていない。米国から輸入している電気機械製品のうち、主要なものは集積回路や半導体、医療機器だ。集積回路や半導体は各メディアが非常に注目している分野だが、その中でもハイテク製品において、間違いなく米国は中国の「首根っこ」をかなりきつく抑えつけている。では、これから医療機器の状況について見てみよう。


中国の輸入医療機器も主要なハイテク製品だ。例えば一部の検査試薬、高付加価値消耗品、大型医療装置およびその基幹部品などである。中国の医薬製品において、米国は欧州連合に次いで二番目に大きな貿易パートナーだ。2024年、中国の医薬製品における米国からの輸入額は150億6000万ドルであった。業界内では、「関税戦争のもと、米国からの輸入製品を代替するのは容易ではなく、欠品や値上がりが生じると、病院や患者は価格面での圧力に耐えられないのではないか」と懸念する声も少なくない。


しかし、メディアが行った最近の調査によると、国産品による代替状況は予想よりも良好だ。


カテーテルに及ぶ大きな影響


輸入品の高付加価値消耗品を供給している米国企業にはメドトロニック、ジョンソン・エンド・ジョンソン、ボストン・サイエンティフィック、クックメディカルなどが含まれ、製品は主に整形外科、神経内科、神経外科で使用されている。


輸入品の高付加価値消耗品に関して、『財新網』が中国の幾つかの大型病院から知り得た情報によると、整形外科で使用されている消耗品の大部分は国産品での代替を実現できるため、受ける打撃は人々が思うほど大きくはない。


相対的に言って、神経内科と神経外科が必要とするカテーテル治療(カテーテル治療は薬物、手術以外の第三の治療方法であり、新しい治療方法)用器具の分野では、輸入器具が国内市場の7割以上を占め、その多くは米国企業によって製造されており、例えばバルーン、ステント、ロータブレータ、腔内イメージングなどが含まれる。この分野では、中国の国産品による代替率は高くない。


『財新網』の報道によると、中国の報復によって輸入関税が上昇したことに伴い、米国のジョンソン・エンド・ジョンソンは2026年に4億ドルの損失を被ることが予想されており、その大部分は同社が米国から中国に輸出する医療機器によってもたらされる。


大型装置も代替可能


大型の輸入医療装置を供給している米国企業はGEヘルスケア、バリアン・メディカルシステムズなどで、製品は画像診断科、核医学科、放射線治療科などで使用されている。


大型の輸入医療装置に関して、撮影装置を例に挙げると、CT、MRI、PET/CT、PET/MRなどが含まれるが、『財新網』の調査によると、基本的に国産品による代替は実現可能だ。取材を受けた整形外科医は、「実のところ国産装置の部分的なパフォーマンスはもはやずっと優れていると語った。


放射線治療装置、例えばガンマナイフや直線加速器なども、国産品による代替を実現することができる。ある著名な病院の放射線治療医は『財新網』に対し、「この10年間、病院内の国産医療装置はゼロからのスタートだったが、今ではかなりの比率を占めている」と語った。


しかし、一部の医師は、輸入製品のアフターサービスや部品交換などの値段が上がると、その影響は半年ほどたってから病院側に及んでくる可能性があることを懸念している。


さらに、一部の国産装置の基幹部品は米国から輸入されている可能性があり、そこにも影響が及ぶ。例えばCTのエックス線管球は、エックス線を発生させる基幹部品で、画質に大きな影響を及ぼし、生産の難度も高く、その生産はいずれも米国やドイツの企業が主導している。


中国の雑誌『財経』の報道によると、長きにわたって一級市場のイノベーション医療機器投資に注目してきた投資会社の責任者は、関税戦争によって短期的に国内医療機器の使用に影響が及ぶとはいえ、その影響は大きなものにはならないと判断している。そして、「医療機器と消耗品の分野で、米国に製造できて、中国に製造できないものなど見たことがない」と語った。


同責任者によると、中国国産製品の技術は実のところ米国製品に引けを足らないとはいえ、「臨床での応用が少なく、実際のデータが少ない」という弱点があるため、往々にして医師からの十分な信頼を勝ち得ることができていない。もしフィードバックやブラッシュアップ、改良に十分な時間をかけることができるなら、徐々に代替を進めることができる。高関税の状況下において、「(国産品による代替は)大半の分野では3年もあれば十分だ」


中国医薬保健品進出口商会のデータによると、2024年1~11月における国内医療装置の国産化率は43%に到達した。それと呼応するように、医療機器の輸入額は直近3年間連続で減っており、2022年、2023年、2024年の輸入額はそれぞれ9.1%、0.8%、4.7%減少している。


(『日系企業リーダー必読』2025年4月20日の記事からダイジェスト)

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