『ウィークリー日本企業ウォッチャー』


中国の上場自動車メーカー18社の利益がトヨタの40%未満であることは何を示しているか?


最近、中国の主要自動車メーカー18社の2024年総利益が依然としてトヨタ一社の40%にも満たないという驚くべきデータが公表された。


トヨタ自動車の2024年度総利益は人民元換算で2237億元だったのに対し、中国の上場自動車メーカー18社中、黒字だった13社の利益の総和はわずか1226億元で、赤字だった5社の欠損金額332億元を差し引くと、総利益はわずか900億元となり、トヨタのわずか38%にしかならない。自動車1台当たりの利益に見られる差も驚くべきものだ。トヨタの自動車1台当たりの利益は約2万2900元だが、中国自動車業界のリーディングカンパニーであるBYDはわずか9400元で、トヨタの半分にも満たない。


こうした状況の直接的な原因は誰もが知るとおり、中国自動車業界における極端な「内巻(不毛で過当な内部競争)」が引き起こす価格戦争により利益がむしばまれていることにある。しかし、業界のアナリストは、その背後に深い原因が存在することを指摘している。中国と日本の自動車メーカーが持つそれぞれ異なった考え方が、中日両国の自動車産業において互いに異なった発展状況を形成し、また異なった結果をもたらした。


日本の自動車メーカーは経験豊富で、常に深く思慮をめぐらす老人のようであるのに対し、中国は恐れを知らずに、前に向かって突き進む若造のようだ。日本の自動車メーカーはお金の勘定をしながら日々を過ごしているが、中国の自動車メーカーはお金をばら撒いて毎日を送っている。若者はやる気にあふれ、コスト度外視で競争に臨み、勝てば官軍と考えている。その一方で、老人はしっかりとした不動心を持ち、物事を一歩一歩着実に進め、儲からないことには決して手出しをしない。


日本社会の物事の扱い方は「専門的な事柄は、専門家に任せる」だ。しかし、中国社会の物事に対する考え方は、「あなたにできて、私にできないわけがないだろう?」というものだ。例えば、新エネルギー自動車が台頭し始めたばかりの頃、日本企業が目を向けたのは、主に技術と管理のリスクだったが、中国企業の目には「ライバルを追い抜く」チャンスと映った。


中国企業は新エネルギー自動車で「ライバルを追い抜く」面で主導権を握ったが、現在深刻な問題が次々と表面化し始めている。中国企業とは逆にトヨタは、電動自動車の大きな発展を急ぐことなく、むしろミドル・ハイエンド車種とハイブリッド技術に打ち込み、低価格競争市場から抜け出した。2024年、トヨタのハイブリッド車販売台数は前年比24.5%増となり、世界のハイブリッド車販売台数の40%を占め、利益拡大の要となった。


それゆえ、中国の自動車メーカーが現在の苦境から抜け出したいのならば、考え方を変えることを基調とし、トヨタを手本にし、同社が重視する長期主義、安定した持続的発展、短期的な売り上げを追求せず、むしろ製品とサービスの持続的な向上を通じて、ユーザーのロイヤリティを獲得することなどを見習う必要がある。


ユニクロは在中日本企業が見習うべき模範


最近、家具・インテリア雑貨販売大手のニトリが発表した財務報告によると、今年上半期、同社は中国国内にある21店舗を閉店した。これより前、同社は約3年間をかけて、中国国内の店舗数を約40店から100店舗以上にまで増やした。しかし、予期せず突然に全体の五分の一に相当する数の店舗を閉鎖し、さらに天津や寧波などの主要都市から撤退した。


ニトリは中国で「日本のイケア」と呼ばれ、同社の店内設計や商品構成はイケアと類似しており、さらにロゴやテーマカラーまでもがイケアと似ている。しかし、経営方式の面で、ニトリとイケアの違いはかなり顕著だ。ニトリはイケアと違って経営の重心を大型家具(およびレストラン)に置いておらず、日用品全般に力を入れている。家具類の商品が占める比率はわずか30%で、残りの70%はみな厨房用品やシーツ、布団カバー、調理家電などの日用品だ。次に、「コスパ」はニトリの事業の中核であり、同社が販売する「イケアと同等の商品」はイケア製品より3分の1ほど値段が安く、さらに日系同業他社の輸入品よりもずっと安い。


もし、これが10年前であれば、ニトリによるこの戦略の組み合わせは市場で素晴らしい成果を上げたかもしれないが、今では中国市場も変わった。ニトリは商品の種類を増やせば増やすほど良いと盲目的に信じているが、新発売する品目が多すぎると、雑貨店にしては大型店舗になってしまうため、消費者は種類が多すぎるゆえに目移りして選べなくなり、店での買い物体験は悪くなる。また、ニトリはコスパに執着しすぎるあまり、自社の独自色を打ち出せていないため、次第に好みがうるさくなっている中国の消費者を満足させることができていない。中国市場で、もっとも間に合っているのはコスパを重視した家具製品だ。


業界関係者のアドバイスによると、ニトリは同じく日本企業であるユニクロを見習うべきだ。ユニクロの初期のやり方はニトリと似ており、整った品揃えとコスパの高さを追求していた。そして中国の消費者が同社ブランドに飽きてしまった後、元々のコスパ+品揃えの戦略では引き続き消費者を呼び込むことができなくなった。そこで、ユニクロは独自性を打ち出した人気アイテムを主力商品にするようになり、例えばコラボによるUTコレクションは、どのコラボ商品も飛ぶように売れている。秋と冬にイチオシのHEATTECH吸湿発熱インナーや夏の主力商品であるAIRismシリーズはみな、ユニクロの地位を今のように安泰にした大人気シリーズだ。


日本最大の半導体商社Macnicaが中国への販売拡大を決定


中米貿易戦争が日増しに複雑化する中で、近ごろ、日本国内の大手半導体商社・Macnicaの原一将社長はメディアからの取材を受けた際に、地政学的リスクが存在するとはいえ、中国市場に注目しないわけにはいかず、今の問題は政治的リスクを如何に防ぐかだと語った。


米国半導体産業協会(SIA)の統計によると、アジア太平洋および他の地域では5月に半導体の売上がひと月で6%増加し、ひと月当たりの増加幅が最大の地域となり、その後を中国が続き、ひと月の増加率は5.4%だった。


Macnicaは主に欧米メーカーが生産する半導体を取り扱ってきたが、今後中国の需要側が欧米製品を避けて、中国国内製品を選択する可能性があるため、同社は中国メーカー製品の販売を拡大することを決定し、同社によるとすでに中国企業10社と契約を結んだという。同社は今後3年間で800億円を投じて、中国やインド、アジア他地域の販売会社を買収することによって売上を拡大する計画だ。

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