JPINS/文 1933年に創立したトヨタの2020年の売上額は約30兆円(約3000億ドル)で、営業利益は2兆4000億円(約240億ドル)だった。2022年1月18日、トヨタの時価総額は40兆円(約4000億ドル)を越え、日本の資本市場で首位に立っている。

トヨタ創立の70年後に設立されたテスラは、2020年の売上額はわずか315億ドルで、営業利益は20億ドルにも到達せず、トヨタとは一桁の差があった。しかし、2021年に同社の時価総額は1兆ドルを超え、最高値の時にはトヨタの約3倍(後にテスラの株価が下落したため、現在は3倍未満)を記録したが、資本リターン率の点で言えば、トヨタを大きく上回っている。

トヨタの保守的な性質は日本の自動車産業の状態をかなりの程度表わしている。2021年の中国における電気自動車の総販売台数は291万台で、2020年の2.6倍だった。日本の自動車市場における電気自動車の総販売台数に関して、現在入手可能なデータは、2021年11月までの統計しかなく、2021年1月~11月に日本の市場で販売された電気自動車は1万8720台で、月平均台数で計算すると、年間の大体の販売台数は、かろうじて2万台を超える程度だ。

しかし、全ての日本企業が電気自動車の将来性に期待していない訳ではない。2021年から、ソニーは電気自動車の方面で行動を起こしているが、それはトヨタなどの自動車メーカーに挑戦するという意味が大いにあり、日本のメディアは自動車業界に「ソニーショック」が生じたと驚きの声を上げている。しかし、問題となるのは日本の自動車産業において「畑違い」であるソニーの「乱入」によって、開発や製造、市場開拓の面で全てを一新するほどの変化がもたらされるかどうかだ。

一石三鳥かそれとも「二兎追うものは一兎をも得ず」か?

日本には「二兎追うものは一兎をも得ず」という諺がある。しかし、日本の自動車産業従事者はこの言葉で自らを表現することを好まず、彼らが好む言葉は「一挙両得」又は「一石三鳥」だ。

日本で新エネルギー車について語られていた頃、燃料電池車は外せない話題だった。燃料電池車を生産できるメーカーはトヨタとホンダだけだ。ホンダは1999年に初めて燃料電池車をリリースしたが、売れ口がなく、その後2021年6月に同社は乗用車タイプの燃料電池車の開発と生産から撤退することを発表した。トヨタは2002年に燃料電池車の販売を開始し、現在に至るまで開発と生産を続けているが、売れ行きは常にいまひとつだ。

日本の新エネルギー自動車の「一石三鳥」について言えば、日本はハイブリッドやプラグインハイブリッド車の開発と生産を特に重視している。筆者がハイブリッド車を使用している消費者から聞いた話によると、コストの面で、ハイブリッド車は従来型燃料車の約半分だという。ガソリン価格が上昇するほどに、ハイブリッド車のコストはより低くなる。2022年以降、ウクライナとロシアの紛争による影響を受けて、エネルギー価格が跳ね上がっているが、この状況はハイブリッド車の販売に有利に働いている。

1月28日にトヨタが発表した内容から見ると、2021年にトヨタが世界で販売した台数は1049万5548台だが、そのうち新エネルギー車は262万1925台であり、その詳細を見ると、ハイブリッド車(HEV)が248万2236台、マイルドハイブリッド車(MHEV)が7482台、プラグインハイブリッド車(PHEV)が11万1882台、燃料電池車(FCEV)が5918台、純電気自動車(BEV)が1万4407台だった。カテゴリーから見ると、トヨタはハイブリッド車が大半を占めており、電気自動車が占める比率がまだ非常に低い。

現在、欧州とアメリカ州においてハイブリッド車の方面でどんな大きな動きがあるのかまだ見えていない。欧州は大体2035年に、つまり13年後にガソリン車の販売を禁止するため、今からハイブリッドの開発や生産をしても明らかに間に合わない。米国もまだプロセスが統一されていないが、十幾つの州で2035年に燃料車の販売が禁止されるが、米国の自動車メーカーは当然ながら今この時期にハイブリッドの研究をすることを望んでいない。ハイブリッドは日本企業の独壇場なのかもしれないが、13年というタイムリミットがある以上、メーカーは電気自動車の開発と生産を考慮せざるを得ない。

ハイブリッド車の販売台数が年間でまだ260万台だった頃、トヨタはハイブリッドを手放そうとはしなかったが、従来型燃料車への未練も含めて、それはどれも理解できるものだ。しかし、トヨタは今、10年後の電気自動車のために準備を行っている。とはいえどう見ても、これもまた同時に3匹の兔を追っているように見える。

「畑違い」であるソニーの「乱入」は成功するのか?

電気自動車の流れが次第に顕著になってきた頃、日本の自動車メーカーはなかなか戦略を調整することができず、世界の主流から取り残されつつあるが、このことは日本の自動車業界の悩みの種となっている。

トヨタ、ホンダ、日産などの従来自動車メーカーが産業発展のトレンドを転換できなかった頃、本業が消費者用電子機器、エンターテイメント、金融だったソニーが突然立ち上がり、電気自動車を作ると発表し、日本の自動車業界は「ソニーショック」を受けたと驚きの声を上げた。

資金面で、ソニーは十分な準備をしている。ソニーの時価総額は17兆円で、日本企業の中ではトヨタに次ぐ位置にいる。2022年3月までの2021会計年度で、ソニーの営業利益は1兆2000億円(約120億ドル)で、収益の面でもトヨタの後に続いている。

電気自動車の技術面で、ソニーはトヨタなどの自動車メーカーとは比べ物にならないほど低い。ソニーは早くからロボットの開発に取り組み、ロボット犬の「aibo」やドローンの「Airpeak」など日本でも有名な製品をリリースしており、また言うまでもなく高性能中央処理装置(CPU)や各種センサー、デジタルカメラの方面で長年の技術的蓄積を有しているが、関連技術を自動車へ応用することに大きな問題はない。この他にソニーは年中、リチウムイオン電池の研究と生産に携わっており、ソニーのウォークマンやパソコンに使用されているリチウムイオン電池はソニーが自主開発したものであり、自動車メーカーと比べて、ソニーはこの方面で技術的な蓄積が何十年も先行している。さらに、自動車メーカーと異なるのは、ソニー自ら半導体部品を開発および製造しているため、半導体の方面で基本的に他社からの供給の影響を受けない。

2019年にソニーはコンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)で電気自動車のコンセプトカーVISION-Sを公開した時、それがいつ市場にお目見えするのかを公にしなかったが、2022年のCESで、ソニーは大々的にVISION-S02を発表し、そして速やかに商品化されることを明らかにし、市場でリリースする意思を示した。


ソニーがCES 2022で展示したコンセプトカー「VISION-S 02」(出典元:インターネット)

3月4日、ソニーはホンダと合弁会社を設けて、高付加価値の電気自動自動車を共同開発することを発表し、2025年に製品をリリースする予定だという。

日本の電気自動車市場に対するソニーのショックは束の間の繁栄なのか、それとも日本の自動車業界全体のモデルチェンジに新たな風を吹かせるのか?スマートフォン市場でのソニーの低迷は、常に同社を意気消沈させる要素だったが、ソニーショックを通じて電気自動車市場で挽回を図ることこそ同社の最大の目標だ。「後発優位性」を生かして、ソニーは今回の電気自動車事業で成功を収め、かつ日本の自動車産業に成功をもたらすだろうか?その答えはまだ出ていない。

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