研究院オリジナル 2025年1月上半期、中国メディアの報道・論評が比較的多かった中日経済関係のコンテンツおよび日本企業は以下の通り。


トヨタ中国が60年目にして初の非日本国籍社長を任命、その狙いは?


先日のトヨタ中国の公式発表によると、2025年1月21日より、李暉が昇進してトヨタ中国の社長に任命される。これはトヨタ中国の60年目にして初めての非日本国籍中国人社長である。これはトヨタが中国市場を深く開拓し、全面的な現地化戦略をさらに一歩推進していくことを示すものだと業界内では捉えられている。李暉は先日、2025年以降、トヨタは中国で独自の研究開発システムを構築していくと語っている。


李暉は1969年生まれで、30年を超える自動車業界での経験をもつ。彼は2000年に広汽集団に入り、2009年に広汽トヨタ販売部副部長に就任、2013年に広汽トヨタ取締役副社長に昇進し、2019年にレクサス中国の取締役副社長に転任している。


李暉が中国の社長に任命されたことは、中国で電動化へのモデルチェンジを進めていくというトヨタの決心を示すものだと業界内では受け取られている。2024年末の情報によると、トヨタは上海に革新的な電気自動車生産工場を建設する計画で、主に高級車ブランドの「レクサス」を生産し、また、今までの合弁モデルとは異なり、トヨタは初めて単独でこれを建設し、この工場を運営していくという。李暉は中国の国情を知り尽くしており、以前にレクサス中国の中国取締役副社長も務めていたため、この計画を順調に進めていくためにトヨタは李暉を選んだと考えられる。


住友化学が立て続けに中国業務を売却したのは賢明な措置


2024年12月18日、住友化学は中国にある二つのポリプロピレン(PP)複合材料とサーモプラスチック・エラストマー(TPE)業務のすべての株式を現地の複合材料企業の広州仕天材料科技有限公司に譲渡し、珠海と大連にある二か所の工場の引き渡し業務も終了していると発表した。住友化学がこの譲渡を行った理由は、中国の現地メーカーが台頭し、住友化学のこの業務の業績が悪化したためと業界内では見られている。住友化学も競争環境が厳しいことを認めている。


2024年12月24日、中国三利譜公司は住友化学とその傘下の関連企業がもつ一部の液晶ディスプレイ(LCD)偏光板業務関連の企業の株式および関連資産・サービスを買収すると発表した。住友化学はかつて世界最大の偏光板企業であり、中国のLCD産業の発展に伴い、偏光フィルムの需要が拡大したため、2009年に住化北京を設立し、2016年に旭友無錫を設立して、ピーク時には中国のLCD偏光板は売上額が1000億円規模に達する事業となっていた。


住友化学の公表によると、中国のLCDで使用される偏光フィルム市場の成熟化などの環境の変化に伴い、この事業の今後の持続的成長を実現するため、最もよい所有者という観点から考えて再構築を行ったとのことである。住友化学は今、OLEDや車載用などの技術面でのアドバンテージが発揮できる分野へシフトしていこうとしている。中国のLCD全産業チェーンに対するコントロール能力が絶えず高まるなかで、枠外にいる住友のLCD偏光板が単独で生き残るのは難しく、中国の現地企業と業務提携することではじめて会社の長期戦略に有利となると業界内では分析されている。


また別の面で、中国企業もまた、この種の業務提携がもたらす利点を見て取り、積極的な買収を展開している。たとえば住友複合材料業務を買収した広州仕天材料公司はずっと日系自動車企業の世界的サプライヤーであった。


中国の需要が日本の半導体企業が空前の繁栄を促す


中国半導体産業の発展が、日本の半導体企業に空前の繁栄をもたらしている。日本半導体製造装置協会(SEAJ)の統計データによると、2024年11月、日本の半導体設備の売上高は4057億8800万円という驚異的な数字となり、前年比35.2%という大幅増で、日本の半導体設備売上高は連続8か月10%を超える伸びとなり、1986年に統計を取り始めて以来、史上最高記録となっている。2024年度の日本の半導体設備売上高は初めて4兆円を超えるとSEAJは予測している。


中国市場はすでに多くの日本の半導体メーカーにとって最大の版図となっている。東京電子は中国大陸から50%近い営業収入を得ている。SCREENホールディングスの中国大陸市場売上高は昨年第2四半期に比べすでに46%の増加となり、世界のあらゆる市場のトップに位置している。中国はまた、アドバンテストにとっても最大の収入源となっている。


その繁栄の背後にあるカギとなる要素とは、中国市場の強い需要だ。2024年には世界の半導体設備の売り上げ予測は532億ドルを突破し、そのうち中国市場の割合が5割近くを占めている。また、日増しに厳しくなる欧米の輸出規制に対し、中国の主だった仕入先は日本の半導体設備になっている。


しかし、技術進歩と市場需要の変化、国家間の技術輸出規制などが日本の半導体企業が次に直面する重要な課題となるだろう。業界内では、中国の半導体産業チェーンに深く溶け込むことが、日本企業の一つの有効な策略であると考えられている。


参考にできる例として、HOYA株式会社と中国の京東方集団が合弁により成立させた重慶邁特光電有限公司がある。2024年12月10日、重慶邁特光電有限公司が出荷式を行った。これは中国内陸部で初めての大規模フォトマスク生産設備投資プロジェクトが正式に稼働したことを示している。


京東方はフラットパネルディスプレイ分野のシェアが世界一で、HOYA株式会社はフラットパネルディスプレイ分野の重要な部品企業で、フォトマスク生産でも世界トップクラスにある。邁特光電のフォトマスクプロジェクトはフラットパネルディスプレイ分野で中日両国のトップクラスの技術が手を取り合ったことを意味している。HOYA株式会社にとって、これは中国市場を手に入れるだけでなく、世界市場での優位性を獲得する可能性をもつものでもある。


日系中小企業(上海)国際産業パークは日系企業発展の新たな舞台になるか


2025年1月7日、上海臨港新片区日系中小企業(上海)国際産業パークが正式に開業し、その開業式では、開業支援、産業チェーン扶助、国際・一般特恵金融支援、従業員住宅などの方面の五種類十二項目の政策サービスが発表された。岡田勝在上海日本国総領事・大使が出席し、挨拶をおこなった。多くの日本の上海駐在機関、重点企業、日中商業協会代表などのゲストがこの開業イベントに参加した。


日系企業産業パークは上海市政府が重点的に打ち立てた中日協力模範区である。現時点で、臨港新片区内には日系関連企業が147社あり、日系企業が集まり発展する産業エコシステムが基本的に形成されている。今後、日系企業産業パークは中日両国企業の国際金融、科学技術研究、データサービスなどの分野における深い協力を重点的に推進していく。


産業パーク内には企業総合サービスセンターが設置されるほか、サイエンステクノロジー・インキュベーター、シェアオフィス、商品展示説明会、個人企業事務室および各種の生活利便施設があり、「5つの自由と一つの便利」、すなわち投資の自由、貿易の自由、資金の自由、運輸の自由、人員の就労の自由、情報のスピーディな伝達といった革新的制度の優位性を十分に発揮し、中日産業協力のイノベーション発展を後押しする。


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『日系企業リーダー必読』は中国における日系企業向けの日本語研究レポートであり、中国の状況に対する日系企業の管理職の需要を満たすことを目指し、中日関係の情勢、中国政策の動向、中国経済の行き先、中国市場でのチャンス、中国における多国籍企業経営などの分野で発生した重大な事件、現状や問題について深く分析を行うものであります。毎月の5日と20日に発刊し、報告ごとの文字数は約15,000字です。

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