研究院オリジナル 2023年9月前半、中国メディアの報道や評論は主に以下の日系企業について多く取り上げた。
日系企業が続々と中国の漢方薬市場で産業配置
最近、AFC-HDアムスライフサイエンス株式会社の浅山忠彦代表取締役会長の一行が中国重慶市を訪問し、璧山区を視察した。同社は璧山区で生産基地建設への投資を計画しており、同生産基地には原材料加工の生産ラインやヘルスケア商品および化粧品の生産ライン、医薬品の生産ラインなどが配置される予定だ。
AFC-HDアムスライフサイエンス株式会社は日本で唯一、小売りと卸売、OEM生産、海外特注生産をトータルで手掛ける企業だ。同社傘下の本草製薬株式会社は、1831年に創立された近代的なハイテク漢方薬企業だ。
実のところ、早くも2018年に、AFC-HDは中国の緑宝集団と提携していたが、その提携分野はヘルスケア商品の販売に限定されていた。今、中国市場に生産基地を配置することにしたのは、中国の漢方薬市場の方が日本よりもずっと大きく、近ごろは中国政府も発展を支える意思を示しているからであり、また漢方薬分野で日系企業は技術面での優位性を有しており、例えばAFC-HDのゼラチンカプセルの製造技術はずっと中国の漢方薬業界で称賛されてきた。それゆえ、いくつもの日本の医薬企業が中国における産業配置のペースを加速している。例を挙げると、ツムラは中国の老舗漢方薬企業の紫光辰済を49億円で買収し、ネット上で話題になった。
日本のカメラが中国で売れ行き好調
最近、ニコンは北京市三里屯のショッピングスポット「太古里」に直営店を正式にオープンした。これより前に同社は上海や広州、成都に直営店を設けている。三里屯の太古里は「首都のファッションと流行の代名詞」と称えられているエリアで、そこに直営店を構えたことは、同社が中国市場をポジティブに見ていることの表れだ。
ニコンの自信は、活気づいている中国のカメラ市場から来ている。CIPA(カメラ映像機器工業会)が公表した最新の世界カメラ販売台数の統計によると、ソニーとニコンは出荷台数がこの3年間で最高を記録したが、その業績は主に中国市場の盛り上がりによるものであり、中国エリアでの販売台数の増加幅は4割を超えており、欧米の先進国市場を優に上回っている。
中国市場はなぜこれほどまでに盛り上がっているのか?分析によって2つの主な要因に行き着いたが、その一つはSNSメディアの発展によって大きなビジュアルコンテンツの需要が発生したことであり、もう一つの要因は屋外でのレジャーや旅行を楽しむ中国人が増えていることであり、日常をしっかりと記録し、高品質の画像やビデオを撮る上で、スマートフォンではそのニーズを満たすことができないため、デジタルカメラの人気が再燃している。
THKが無錫市でスマート基地の建設プロジェクトを計画
9月6日、THK株式会社の寺町彰博社長は無錫市高新区を訪れ、同社の直線案内の「スマート基地」プロジェクトへの投資の覚書調印式に出席した。直線案内は同社の主力製品であり、国際市場におけるシェア率は60%に達しており、無錫プロジェクトは同社が中国で投資する初の直線案内の生産工場であり、同社の先進的な生産技術や生産設備、管理理念を全面的に導入し、さらに直線案内の国家標準の制定作業にも携わる。
THKは今回のプロジェクトを足がかりに、自動化分野の開発と探求を拡大し、半導体や産業ロボットなどのスマート装置分野にも進出して産業配置を行い、無錫市にスマート装置の主要部品の生産基地を設立する計画だ。
THKは2005年に中国に子会社を設立しており、中国の本部は大連市にある。2010年に大連で設立されたグループ企業は同社にとって海外初の研究センターだ。その後、常州市や無錫市に生産基地が設けられた。
AGCはなぜ中国を最も重要な市場と考えたのか?
しばらく前に、AGC株式会社の専務執行役員で、電子カンパニープレジデントの森山 賢三氏は2023世界ディスプレイ産業大会で、「AGCグループにとって中国市場は最も重要な市場だ」という認識を示した。同グループは世界で先進的なガラスおよびハイテク材料のメーカーであり、2010年時点で、中国が世界の液晶用ガラス基板市場における需要に占める比率はわずか5%前後だったが、2023年には約70%まで成長した。
2020年、世界の液晶用ガラス基板の年間需要はわずか約3000万平米だが、AGCグループは2023年にその需要が6億平米以上になり、市場規模は20倍に拡大すると予想している。今後はテレビの大画面需要による後押しを受けて、ディスプレイ用ガラス基板の需要は引き続き拡大すると予想されている。
間違いなく、中国は世界最大のテレビおよびスマートフォンの生産国であり、世界のディスプレイ業界の発展は中国によってけん引される。同グループはこのために中国で全面的な現地化戦略を実施しており、昆山市や深セン市、恵州市にそれぞれ投資して、溶炉と加工工場を建設し、第8世代から第11世代までのガラス基板の生産チェーンを形成しており、中国の各主要パネル工場にディスプレイ用ガラス基板を提供する。同時に、AGCグループは中国市場にソーダ石灰および高ホウケイ酸カバーガラスの安定供給を行っている。
現在、AGCグループの材料は中国の数多くの著名な建築物に使用されている。例えば、上海のシンボル的な建築物として知られる東方明珠電視塔には同社の高機能フッ素塗料材料が使用されており、北京オリンピックの際に建てられた水泳施設の「水立方」の外壁には同社の特殊フッ素材料が使われている。
住友商事が中国との新エネルギー協力の推進を加速
近ごろ、住友商事(中国)有限公司の吉崎一生代表取締役の一行は中国青海省西寧市の国家級技術開発区で商談を行い、双方はPV製造、リチウム蓄電、水素エネルギー産業などの分野で提携する意思を示した。
住友商事は冶金や化学工業、再生可能エネルギー、機械、電子、不動産などの幅広い業務分野で中国市場に参入しており、最近では同社が新エネルギー分野での取り組みを拡大している兆候が見られる。
8月、中国住友商事集団の有友晴彦CEOと四川省源投資集団公司は商談を行ったが、双方はこれより前に水素エネルギー分野で一連の協力を繰り広げており、住友は四川省源投資と継続的に協力分野の幅を広げ、水素エネルギーの産業チェーン全体や化学工業の新素材、エネルギー金属などの分野での協力を継続的に深化させ、共同で市場を開拓することを希望している。
これより前の6月に、有友CEOは山東省済南市を訪れて、現地の政府関係者と面会し、済南市新旧動力エネルギー転換開始地区管理委員会と協力覚書を締結し、双方が水素エネルギー産業や環境保護インフラなどの分野で協力を深めることに合意した。