『必読』ダイジェスト 私たちは現今の経済状況を評価・予測するために、各種経済データを活用する。しかし、国内総生産(GDP)、消費者物価指数(CPI)、雇用率などの重要なデータの収集と分類は複雑であり、実際の状況に追いつけないことがある。
アンケート調査は、経済を理解するもうひとつの手段である。国家統計局、中国人民銀行などは各種調査を頻繁に実施し、その結果は迅速に公表される。これらの調査は特定のクラスターに経済状況の認識、将来への予測を問うものだ。そして、その結果は起業家、投資家、研究者の参考に供される。
購買者景気指数(PMI)
購買担当者景気指数(PMI)は、企業における原材料の購買担当者の景気に対する見方を反映している。
PMIの調査対象は製造業で購買を担当する副社長、あるいは原材料の調達を担当する課長である。指数の景気臨界点は50%で、指数が50%を超えれば製造業が発展していることを示す。
中国の製造業PMIは、2021年以降ほぼ低下し続けている。2022年10〜12月期、PMIは50%を下まわり、継続的な収縮状態にあった。
2022年9月以降、新規受注指数と雇用指数は低下し続けている。9〜10月期はそれぞれ1.7%、0.7%減少し、10〜11月期は1.7%、0.9%悪化した。11〜12月期は2.5%、2.6%減っている。これら二つの指標の継続的な低下幅の増大は景気の悪化が加速していることを示す。こうした状況では、外部環境が変わらなければ景気の先行きは楽観できない。
2022年後半以降、非製造業とサービス業のPMIはともに50%を割り、急速な下落傾向にある。なかでもサービス業は2022年12月時点で40%にとどまり、同業界の収縮が目立った。
国家統計局はPMIを解析するなかで、サービス業界では新型コロナ禍が外食、ホテル、小売り、および観光など対面サービス業種にもたらした影響が大きく、卸し、金融など生産性サービス業種の指数を下まわった。
中央銀行による都市の預金者に対するアンケート調査
都市部の預金者に対するアンケート調査は、一般預金者の経済に対する認識を反映する。中央銀行(中国人民銀行)は四半期ごとに全国50の大、中、小規模の調査対象都市で営業する400銀行から無作為に50人の預金者を選んで調査を実施している。調査対象の合計は、預金者20,000人である。
調査内容は、預金者の経済に対する総合評価、貯蓄および負債状況、消費、預金者の基本状況など4項目だ。指数は0~100%で、それが50%を超える場合は改善または拡大傾向にあることを示し、50%を下まわる場合は悪化または縮小状態にあることを表す。調査は、現状認識と将来への期待の二つに分けられる。
2022年第1四半期以降、所得と雇用の指数はともに50%を下まわり、状況が悪化していることを示している。また一般貯蓄者の認識では、雇用情勢も加速度的に悪くなっている。
2022年末における将来の所得予想は、2001年以来20年以上ぶりの低水準を記録した。
中央銀行のアンケートは、今後もっと多く貯蓄、消費、投資したいと考えている人の割合も調査した。2018年以来、貯蓄を増やしたいと回答した人は増えているが、投資を増やしたいと答えた人の比率は下がっている。
中央銀行の起業家調査
中央銀行が実施している起業家アンケートの対象者は、全国(チベットを除く)の5,000余人の工業企業主である。調査内容には企業の全体的な生産状況、生産要素、市場の需要、資金状況、コストパフォーマンス、投資状況などが含まれる。
調査報告に示される指数は0〜100%で、それが50%を超えると状況が改善または拡大傾向にあることを示し、50%を下まわる場合は悪化または縮小状態にあることを表す。経営景気指数だけでなく、国内および海外受注状況にも着目している。
起業家は概して楽観的で、そのため高いリスクも背負う。2017〜2021年、景気指数は新型コロナの感染状況が深刻だった2020年上半期の50%未満で、2022年第3四半期もそこから抜け出せず、指数ははさらに下降している。最も楽観的な起業家も悲観的になることを免れず、中国の経済状況は芳しくない。
消費者の信頼度指数
消費者の信頼度指数は、国家統計局の中国経済景気監測センターが都市の消費者を対象に実施しているアンケート調査である。1997年末の指数を100(基準)としている。指数の変化は消費者信頼度の変化を反映し、指数が高いほど消費者信頼度が強いことを示している。
2022年以前、就業への期待度は所得に対する期待度を上まわってきた。しかし現在、それは所得への期待度を下まわる。これは、消費者の失業懸念が急激に高まていることの現れである。
以上、四つのクラスターに対する調査指数から、経済に楽観的でない姿が見えてくる。さらに具体的に言えば、「新型コロナ禍の3年」と言われているが、実際に経済がもっとも悪くなったのは2022年で、とくに上海ロックダウンの第3四半期がもっとも深刻だった。
(『日系企業リーダー必読』2023年1月5日記事からダイジェスト)
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