『必読』ダイジェスト 2024年、中国社会の消費とサービス業は低迷し、外国企業の対中投資意欲を押し下げた。華南米国商工会議所が2025年2月26日に発表した年次報告が明らかにした。それによると、続く中米貿易摩擦の影響を受け、一部外資企業の対中発展見通しが低下していることも明確になった。
華南米国商工会議所は1995年に設立された非営利団体で、華南地域で最大の外資系商工会組織である。同会議所は2024年10月11日から12月23日にかけて、316社の会員企業を対象に経済状況に関するアンケート調査を実施し、2025年2月26日に「2025年華南地域経済状況特別報告」として発表した。
調査対象企業のうち34%が米国企業で、中国本土と香港・マカオ企業はそれぞれ25%と17%、欧州企業が14%、その他の国や地域の企業は10%を占める。回答企業の7割以上が、中国市場向けに製品やサービスを提供することを主な事業内容としている。
年次報告によると、73%の企業が「2024年における中国での総投資収益率がプラス」または「大幅なプラスだった」と回答。一方、「中国での投資収益率が自社の世界全体の投資収益率を上回る」とした企業の割合は39%にとどまり、前年同期比で12ポイント低下している。特に消費財およびサービスを提供する企業で最も大きく減少し、前年同期比20ポイント減少して30%となった。
消費財・サービス企業の中で、中国を主要投資先トップ3に挙げた企業の数は前年同期比22%減少した。また、同業界の15%の企業が「投資戦略における中国の重要性が低下した」と回答しているが、2023年の調査でこのように回答した企業はゼロだった。2024年における中国での再投資の実施状況を見ると、消費財およびサービス企業の比率は、製造業など他の業界と比べて大幅に低かった。
「2024年の経済環境はとくに厳しく、消費サービス業の落ち込みが顕著だった」と、華南米国商工会議所のハーレー・セアディン(Harley Seyedin)会長は中国メディアに語った。その主な要因として、経済回復に対する消費者の信頼感が足りず、消費行動が保守的になったことを挙げている。
また、2025年1月中旬に開催された広東省の「両会」(省人民代表大会と省政治協商会議)で発表された「広東省2024年国民経済・社会発展計画の実施状況および2025年計画案報告」(以下「国民経済報告」)でも、消費の減速傾向が示された。2024年の広東省の社会消費財小売総額は前年比0.9%増と予測され、目標値を5.1ポイント下回っている。参考データとして、2023年の広東省社会消費財小売総額が4.7兆元、前年同期比5.8%増だったことなどの数字がある。
「国民経済報告」によると、広東省の社会消費の約9割を占める都市部は低迷し、年間成長率が0.8%程度にとどまった。特に自動車関連消費の落ち込みが顕著で、約10%減となった。「不動産など資産価格の下落や収入減少予測が、都市住民の消費能力と消費意欲に大きな影響を及ぼした」と報告書は指摘している。
華南米国商工会議所の調査によると、2024年、企業全体の収益力は前年よりも弱まっており、85%の企業が中国で利益を上げたものの、この割合は2022年および2023年の88%から低下している。
調査対象企業の対中成長見通しも低下しており、特に米国企業の見通しの悪化が最も顕著だった。中国市場での発展に「自信がある」と回答した米国企業の割合は46%で、前年より14ポイント減少。これは中米二国間関係の影響がうかがえる。調査では半数以上の企業が、「継続する中米貿易摩擦が中国の事業戦略に影響を与えている」と回答した。
例えば、米国の対中追加関税が企業のサプライチェーン構造に直接影響を及ぼし、多くの企業がチェーンの再編を余儀なくされている。21%の企業は、中国国外で部品や組立工場を探すことでサプライチェーンを変更し、17%の企業は米国外で部品や組立工場を手配して調整を図った。生産ラインの移転先としてまず選ばれたのはベトナムだった。
中米貿易摩擦の影響を受け、二国間関係を楽観視する企業は全体のわずか4分の1にとどまり、前年より19ポイント減少した。特に米国企業の姿勢の変化が顕著で、2025年の中米関係を「良好」と見る米国企業の割合は25%にとどまり、前年比22ポイント低下した。
過去の調査結果をみると、企業の中米関係に対する見通しは変動してきた。2019年から2024年、「楽観的」または「やや楽観的」と回答した企業の割合は年次毎にそれぞれ28%、33%、40%、27%、44%、そして最終年の25%だった。また95%の企業は「2025年の中米貿易摩擦はさらに激化する可能性がある」と予測し、この割合は統計データがとられるようになってから過去最高値となった。さらに70%の企業が「米中貿易摩擦の影響は今後2年以上続く」と予測している。
「現在、米国はもはや国家安全保障という名目で米中貿易全体を括るような手法はとらなくなっている。これは良い兆候だ」と華南米国商工会議所のハーレー・セイディン会長は述べ、「依然として両国間には摩擦が存在するものの、少なくとも現在では姿勢が明確になり、交渉の余地は広がるだろう」と指摘している。
(『日系企業リーダー必読』2025年3月5日の記事からダイジェスト)
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