研究院オリジナル 2025年6月後半、中国メディアの報道・論評が比較的多かった中日経済関係のコンテンツおよび日本企業は主に以下の通りだ。
中国市場がサンリオ創業者の日本トップ富豪への返り咲きを後押し
サンリオの2025年度(2024年4月~2025年3月)財務報告によると、純利益が前年比137%と大幅増となる417億円を記録し、売上額は45%増の1449億円だった。近ごろ発表されたフォーブスによる世界ランキングの最新データによると、サンリオの創業者で、名誉会長を務める97歳の辻信太郎氏が10年の歳月を経て、再び日本のトップ富豪に名を連ね、32位に入った。辻氏のトップ富豪への返り咲きにおける中国市場の功績は小さくない。
サンリオの本業はカルチャー産業であり、贈り物やテーマパーク、キャラクターライセンス、グリーティングカードの販売、映画製作などを含む。現在、サンリオの中国大陸における売上高が同社の海外売上高に占める比率は30%を超えている。2025年度、中国における同社の売上高は前年比44%増で、営業利益は前年比58%増だった。
業界の分析によると、近年サンリオが中国で収めた業績は中国市場に対する洞察と理解の賜物だ。
一、中国人の「新しいものを好み、古いものを嫌う」という特徴に狙いを定め、サンリオは複数キャラクター戦略を採用しており、キャラクター収入は多様化している。代表的なキャラクターのハローキティは2015年度、2020年度に中国エリアでそれぞれ97%、87%の収入を独占し、そして2024年にクロミがハローキティを抑えて「売上ナンバーワン」になり、またシナモロール、マイメロディ、ハンギョドンなどの人気キャラクターがみな顧客購入ランキングでベストテンに入っている。
二、マーケティングの重点をSNSに置いている。マイクロブログは1日3回更新し、小紅書では盛んに「種草(SNSや口コミで商品やサービスを魅力的に紹介して、購買意欲を醸成すること)」を行い、ティックトックでは毎週動画を更新し、また自社公式のウィーチャットグループを通じてプライベートトラフィックによるフォロワーの支持やロイヤルティを強化している。同時に四半期ごとにテーマ活動を2~4回の頻度で実施し、芸術展やポップアップストア、テーマレストランなどの活動を展開している。上海で開催された「サンリオファン・フェスティバル」は来場者数が約2万人を記録した。
三、総合オンラインショッピングサイトのアリババと密接に協力している。アリババのエコ資源によるアシストを受けて、サンリオは年間6回のマーケティング活動(例えば、「サンリオ天猫スーパーブランドデー」)を開催することにより、ネットショッピングの検索回数が110%の急上昇を記録した。
四、ライセンスから現地IPの創出への積極的な転換を図っている。サンリオは「中国国産IP」を将来的な成長の主要なエンジンとしている。2025年3月、中国で試験的に「雪球奈奈」、「草球猫」など5つの国内キャラクターのWeChat表情絵文字をリリースし、5月末には、さらに「咪咪沐沐」、「噸噸鼠」、「糯松松」の3つを追加した。
サンリオ中国の目標は、3年以内に中国地区の収益を3億1000万元(約62億円)から5億元(約100億円)にアップさせることだ。業界は、中国におけるポップマートの爆発的な人気により、今後「癒し経済」および感情連動型の消費に対する消費者の需要が急増すると見ており、サンリオの未来は明るいと言える。
日本の「貧民寿司」が北京、上海、広州を席巻
現在、中国における飲食業の状況は悲惨であり、2024年に新規開業し、ネットで話題になったグルメの生存率は50%未満だ。しかし、北京や上海、広州などの一級都市では、日本の安価な寿司が逆境の中で頭角を現し、席巻の勢いを示しており、特にスシローやはま寿司の二大ブランドが、次々に新規出店をしている。北京を例に挙げると、スシローは1年もたたないうちに北京で9つ目の店舗を開店させ、はま寿司はすでに7つの店舗を出店している。北京にあるスシローとはま寿司は店舗に行っても、順番待ちをしなければ飲食をすることができず、さらにスシローは週末になると順番待ちの整理券が2000番台に達することも珍しくない。
中国では、伝統的な寿司は高級な消費であり、一皿100元(約2000円)以上する場合も少なくない。経済全体が後退している中で、中産階級はスシローが登場するまで、寿司の消費市場からフェードアウトしていた。他の日本料理店では数十元で提供されている食材も、スシローではわずか一皿10元(約200円)で食べられる。さらにスシローは、サーモンを8元、ホンマグロを10元、フォアグラ寿司を8元で提供するという3つの出血大サービスを行っている。スシローは中産階級の寿司愛好家にとって、まさに困っている時の救いの手であり、あまりの安さに巷では冗談めかして「貧民寿司」と呼ぶ者もいる。
同じ寿司ブランドでも、スシローはなぜこれほどまでに価格を抑えられるのか?そのカギは食材の現地化にある。スシローはフォアグラを山東省、ウニを大連で買い付け、鰻と酢飯なども中国国内で直接購入しており、それによってコストは輸入と比べて40%も下がった。
まさに劇的と言えるのは、スシローの成功がピンチによってもたらされたことだ。2023年8月に日本が福島県のALPS処理水を排出したことは、人々の心に不安をもたらした。これに対して、中国海関総署(税関)は日本を原産地とする水産品の輸入を全面的に見合わせることを発表した。その結果、スシローは速やかな食材サプライチェーンの調整を余儀なくされ、食材調達のメインを輸入から現地調達に切り替えたが、この調整が同社の低価格戦略の基盤となり、その後の人気沸騰につながった。
情報筋によると、スシローが北京で開店した最初の3店舗の人気は同社の予想を大きく超え、その中で最も人気が低い店舗でも月平均の売上額が約300万元で、1年間で投入したコストを回収することができたという。昨年、はま寿司は大型ショッピングモールの「藍色港湾」に北京一号店を開店したが、初月の販売成績は400万元前後で、こちらも予想を上回った。
日産の逆転勝利への道:中国に立脚し、中国から羽ばたく
6月25日、東風汽車集団と日産自動車は資本金10億元で合弁会社を設立することを正式に発表し、同会社は自動車の輸出事業を専ら担い、海外市場に向けて自動車や部品、輸出およびパーツを輸出する。業界は今回の日産による会社設立を「死中求活の取り組み」と見ている。
しばらく前、日産は2024年度の決算が6708億円という「災難級」の赤字だったことを発表した。6月24日、同社は2025年第2四半期の業績について、2000億円の赤字になるという見通しを示した。ちなみに前年同期は9億円の黒字だった。同社は2023年の4266億円の黒字から最近2年間で約1兆円の累積赤字に転落した。
販売台数のフリーフォールとも言える下落は、日産が受けた壊滅的な被害の主要因だ。2021年、同社は中国市場で138万1000台の自動車を販売することができていたが、2024年には、販売台数が69万6000台まで減少し、3年間の下げ幅は50%に達した。
業界アナリストによると、中国の自動車メーカーがスマート化、電動化へのモデルチェンジに引き続き力を注ぎ、シェアを獲得している一方で、日産はずっと工場の閉鎖や人員削減に明け暮れ、市場での課題に対する対応が後手に回っており、このようなジェネレーションギャップは、短期的なコスト削減で埋め合わせられるものではないため、日産は考え方を変える必要がある。
日産すでに問題の所在を把握しているようであり、2025年に「Re:Nissan」と題する経営再建計画を打ち出し、逆転勝利を目指して中国市場に賭けたいと思っている。
4月27日、日産は中国でバッテリー式電気自動車・N7を11万9900元から販売すると発表し、N7は発売されたとたんに、その高いコストパフォーマンスゆえに中国市場で支持され、発売初日に累計1万138台の注文が入り、発売から50日間で注文数は2万台を突破した。この売れ行きは異常なまでに競争が熾烈な中国市場において滅多にない成果であり、とりわけ常に後塵を拝している日産にとってはなおのことだ。
N7が一回で大成功を収めたとはいえ、中国国内では自動車の生産能力が過剰であり、極端で不毛な内部競争にさらされるため、日産の遊休生産能力は50%と高い。逆転勝利を収めるため、日産は重点をより一層「海外展開」戦略に置き、中国の強大な国内サプライチェーンに立脚して、世界市場を奪取しようとする可能性があると業界は見ている。N7のキャッチコピーの1つは、「中国発、世界へ」であり、日産の将来的なビジョンを十分に表現している。
それゆえに、東風と日産は自動車輸出に特化した合弁会社を設立した。日産の計画によると、2025年は中国から10万台の車両が輸出される。同社のイヴァン・エスピノーサCEOは東風に対してグローバル生産拠点としての門戸を開くという考えを示しており、例えば英国のサンダーランド工場が、海外の車両生産を助けているように、東風に業務を担わせることによって中国市場の生産能力過剰の問題に対処するつもりだ。
TOKYO BASEは中国で「大きくてゴージャス」から「小さくて美しい」に転換
6月14日、ファッションの新鋭として知られるハイエンドアパレル企業のTOKYO BASEが上海市静安区に「STUDIOUS SHANGHAI富民路店」と「CONZ SHANGHAI富民路店」の2店舗を新規開店した。その中でも「STUDIOUS」は初となる単独での路面店形式による海外出店だ。そして、上海はまた同社のニューブランド「CONZ」を海外展開する上での出発地点となった。
事実上、TOKYO BASEにとって今回の取り組みは中国市場における戦略転換だ。コロナ禍の影響を受け、2022年以降、中国国内の同社店舗は客の流れが悪くなる一方だ。2024年1月期決算では、中国大陸における同社の売上高は前年比7.1%減で、6億4900万円の赤字を計上し、同社は上海市新天地のUNITED TOKYO、北京市三里屯のPUBLIC TOKYO、北京市西単のSTUDIOUSを相次いで閉店した。
中国市場における事業で巻き返しを図るべく、TOKYO BASEは最新の中国市場向け成長戦略を発表し、今年度(2025年2月~2026年1月)から実施する。同戦略の要点は「大きくてゴージャス」から「小さくて美しい」への転換であり、中期経営計画では大型店舗の開設を予定しておらず、むしろ店舗面積が200平米に満たない集合形式の小規模店を一級都市に設けることによって、投資効率と収益性を兼ね備えられるようにする。以前、同社は主要商業施設内の一等地にこだわり、330平米前後の大型店舗を出店してきた。業界アナリストによると、中国の経済成長が鈍化し続けている中で、このような「ハイリスク・ハイリターン型」の戦略はすでに時代遅れだという。
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