研究院オリジナル 2025年5月前半、中国語メディアの報道・論評が比較的多かった中日経済関係のコンテンツおよび日本企業は主に以下の通りだ。
日本企業の対中投資先は静かにサービス業へシフト
中国には広大な消費市場があり、また市民の生活水準の持続的な上昇に伴い、中国の人々は商品に対してだけでなく、サービスに対しても質の高さを求めるようになっている。こうした状況の後押しを受けて、サービス業の分野において細やかな管理とイノベーション能力を備える日本企業は、素晴らしい発展のチャンスを手にしており、サービス業はまさに日本企業が中国で拡大し、発展していく上での新たな方向性となっている。
日本銀行のデータによると、卸売・小売、飲食・宿泊、レジャー・エンターテイメントなどの製造業に属さない日本企業の対中投資が日本の対中投資総額に占める比率は拡大し続けており、2020年から2023年にかけて26.1%から49%に上昇した。2023年、日本の卸売・小売による対中直接投資総額は830億円に到達し、同年度の日本による対中直接投資総額の21%を占めた。
日本企業のサービス業にしてみれば、中国はまさしく至るところにチャンスが転がっている市場だ。
飲食チェーン・サイゼリヤは2024年度の中国地区における売上高が667億7900万円に到達し、前年比25%超増で、アジアにおける売上高の8割以上を占め、グループ全体の売上高の約3割を占めた。
オムロンは地元の薬局チェーンと共に「標準化代謝性疾患管理センター(MMC)ヘルスコンビニ」を設立し、中国の消費者に便利で効率が高く、専門的な慢性疾患管理サービスを提供している。2024年時点で、MMCヘルスコンビニは85店舗展開されており、中国国内28省をカバーしている。
介護サービスは見通しがいっそう有望な市場だ。2035年までに中国のシルバー経済規模は19兆1000億元に到達し、消費全体に占める比率は27.9%に達すると予想されている。中国で事業を展開しているのはヘルスケアを専門とする日系企業だけでなく、他の企業も同分野に参入し始めている。例えば、日立エレベーターは、古びた住宅団地に住む高齢者が外出時に直面する問題を解決するために、古びた住宅団地への施工に適した「日立増設専用エレベーター」を設計・開発した。牛丼で有名な吉野家は摂食・嚥下が困難な高齢者を対象にした介護食を発売した。
一部のニッチと見なされている分野でさえも中国消費者からの注目が次第に集まっている。例えば、近年日本式のペットサービスや日本式の引っ越しサービスも中国市場で徐々に台頭している。
豊田章男氏は電気自動車を愛したことがない
トヨタは中国市場でbZ3、鉑智3X、鉑智4XのEV3車種を相次いで発表し、今回の新車発表はトヨタが電動化にシフトし始めたことの表れと世論は見ているが、その一方である中国メディアは、今回の新車発表は中国市場向けのカスタマイズに過ぎず、本質的に、「豊田章男氏は電気自動車を愛したことがない」とコメントした。
2024年、トヨタの新エネルギー車種は世界で29万5000台販売されたが、その数はトヨタの総販売台数のわずか3%に過ぎず、そのうちBEVは14万台だった。新エネルギー車種の比較的に鈍い販売の勢いは、トヨタの世界王者の地位にほとんど影響を及ぼしていない。2024年、トヨタの販売台数は1082万台で、世界の自動車販売台数の首位に立ち、5年連続で世界販売台数のトップに君臨している。それゆえ、豊田章男氏が自動車の電動化ブームに対して公然と力を込めて「反対論を唱える」のも理解に難くない。
豊田氏はEVの使用と普及には「インフラとの一体化」が必要と考えており、多くのトヨタ車オーナーは電力が不足している地区で暮らしており、充電設備も足りていない。これこそ豊田氏がEVに対して保守的な見方を堅持する基本的な理由なのかもしれない。
2024年、世界の家庭における1000ワットごとの平均的な電気代は0.16ドル(約1.16元)で、中国は0.075ドル(約0.54元)、日本は0.258ドル(約1.87元)だ。
2024年時点での中国における充電設備の総数は1281万8000台で、前年比49%増を記録し、新エネルギー自動車の保有台数と充電設備の数の比率は7.5:1だが、欧州は15:1以上、ドイツは38:1だ。
トヨタ製BEVの将来的な比率に関して、豊田氏は、BEV車がどれほど発展するとしても、BEVが世界市場に占めるシェアは最大で30%だと見ている。それゆえ、この観点から見ると、トヨタは確かに中国市場を特別扱いしていると言える。
三菱電機が取り入れ出した「中国式のやり方」
三菱電機は「中国式のやり方」で中国市場の「不条理な内部競争」に参戦しようとしている。
匯川技術、信捷電気など中国国産ブランドによるミドル・ローエンド市場での猛烈な攻勢を受けて、2025年3月、三菱電機は中国市場向けに設計したサブブランド「菱領」をリリースした。同ブランドの主力製品はエコノミータイプのPLC、サーボドライブ、I/Oモジュールで、価格は三菱電機のマスターブランドよりも30~40%安く、現地のサプライチェーンを改善することによって納品周期を2週間以内に短縮し、さらに「72時間以内の故障対応」のサービス保証を付帯している。
菱領のLR1シリーズ・カートリッジ型I/Oモジュールはモジュール設計を採用し、三菱MXシリーズのコントローラーと互換性があり、中小企業が神経を尖らせるコスト面でのニーズを満たし、なおかつ日系ブランドならではの安定性も維持している。
三菱電機はこの「上下からの挟み撃ち」の戦略によって、マスターブランドの値下げによる付加価値の損失を回避するのと同時に、現地化生産(例えば大連工場)を通じてコストの最適化を実現した。業界関係者はこの三菱電機の戦略について、言うなれば同社は左手で価格戦に首尾よく対処しながら、右手で高い利益を獲得し続けていると評価した。
まだ活路を見い出せないパナソニック
近ごろ、パナソニックは2025年度に組織再編を実施し、世界全体で同社全職員の約4%に相当する1万人をリストラすると発表した。
早くも今年初めに、パナソニックは外部に対して改革計画を公表していた。一つはテレビ事業からの撤退と同事業の売却で、もう一つは同社グループ傘下の家電メーカーの解散および家電、エアコン、照明などの事業の再編だ。
昨年以降、パナソニックの家電は中国市場において洗濯機以外の冷蔵庫やエアコンなどの売上が程度に差はあるものの下がっている。特にかつてパナソニックにとって自慢のタネだったエアコン、冷蔵庫などの冷却コンプレッサーの基幹部品において、美芝、海立、華意など中国企業の力強い台頭に直面した結果、パナソニックはすでに戦いに敗れてしまったと言っても過言ではない。
この他に近年パナソニックは中国市場で激しい競争に直面しており、また自社の組織管理の効率が低い上にコストが高いため、同社は現在密かに外部に対するブランドライセンス経営というライトアセット経営方式への移行を加速させている。ほとんどの中国消費者に知られていないが、パナソニックブランドとして販売されている生活家電やキッチン家電、クリーン家電などの製品は、どれもパナソニックからブランドライセンスを受けた中国企業が生産および運営を担っており、パナソニック自らが開発、生産、運営しているわけではない。このような経営モデルの弊害は非常に顕著だ。例えば、品質管理をコントロールできないことやサービス基準の不均一、ブランドイメージの低下、イノベーションの原動力不足などが挙げられる。
今回の改革で、パナソニックは家電事業に対して、元々分散していたマーケット部門、サービス部門の集約化および効率化の改革を実施し、世界で基準を統一することによるコスト削減・効率向上を追求することを提起した。しかし、同社による今回の改革は典型的な「対症療法」だ。同社にとって確実な活路は、やはり新たな発展のエンジンと原動力を見つけ出し、事業の市場競争力を向上させることだ。
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