『必読』ダイジェスト ウィーチャット(微信)公式アカウントに掲載された11月10日付『邢予青東京漫谈』を以下抄訳する。トランプ氏は11月5日の大統領選挙を制し、「王者の凱旋」ともいえる勢いで勝利した。選挙期間中、トランプが有権者に訴えた「米国を再び偉大にする」ための核心的経済政策の一つが、中国から輸入する製品に60%、その他の国からの製品に10%の関税を課すというものだ。


中国企業が自社ブランド製品を米国に輸出する場合、米国市場の競争圧力によりこれ以上価格を引き上げる余地はほとんどない。このような情況においては、中国企業は関税コストを米国の輸入業者や消費者に転嫁することはできない。関税負担を引き受ければ、輸出で利益を得ることができる中国企業はほぼ存在しないとみられる。


しかし、被害を受けるのは自社ブランド製品を持つ中国企業だけではない。例えば、米国企業が中国企業に製造や組立を委託している製品、具体的には中国で組み立てられるヒューレット・パッカード(HP)のパソコンやアイフォン(iPhone)なども同様だ。中国企業はこれらの製品の関税を支払う義務を負わない。製品の所有権が中国企業ではなく米国企業にあるためだ。中国企業が得られるのは僅かな加工や組立の工賃であり、それで関税を賄うには到底足りない。米国企業はこれらの製品にかかる関税の全額を負担しなければならない。「Design in California by Apple Assembled in China」などと記されたすべてのアップル製品が、このカテゴリーに該当する。


最近では、アップルが一部製品の組立をインドやベトナムに移し始めているが、依然として約90%のアップル製品は中国で組み立てられている。中国で組み立てられたiPhone、iMac、iPad、iWatchが米国市場に入る際、中国に拠点を置くフォックスコン(Foxconn)や立訊精密工業(Luxshare Precision Industry)、ゴアテック(GoerTek、歌爾股份)などの契約製造業者は、これらの製品に対する60%の関税を支払う義務を負わない。これらの企業はアップルからわずかな加工賃を受け取るだけであり、高価なアップル製品に対する60%の関税を支払うほどの収入も得ていない。アップルはこれらの製品が米国へ輸入される際に60%の関税を支払わなければならず、これにより米国でのアップル製品の販売コストは大幅に増える。


アップルの2024年アニュアル・レポートによれば、同社の平均粗利益率は37.2%であり、米国市場における売上高は約1670億ドルである。このうちハードウェアの売上が約1252億ドルと推定される。アップルが関税コストを消費者に転嫁せずに競争を維持しようとする場合、米国市場での利益率はゼロに陥る可能性がある。


仮に価格への価格転嫁を行う場合、米国市場での製品価格を平均37%引き上げる必要がある。アップル製品はすでに同類製品の中では「高級品」と位置づけられている。さらに37%の価格上昇となれば、投資家たち、とりわけアップル株を大量に保有するバフェットは、米国での販売が10%減少するのか、それとも30%減少するのか、アップルの株価がどれだけ下がるのかを慎重に考える必要に迫られるだろう。


トランプ氏は、シカゴ経済クラブでの発言で関税政策を正当化し、高関税を課す目的の一つは外国企業の工場を米国内に誘致することにより、米国人の雇用を増やすことだと述べた。しかし、アップルが組立作業を米国国内に戻すのは現実的に不可能だろう。2010年、アップル創業者のスティーブ・ジョブズは当時のオバマ大統領に「これらの仕事は決して戻ってこない」と語っている。その理由は明白で、アップル製品の組立は労働集約型の作業であり、週末に残業をして収入を増やすことよりも生活を楽しむことを好む米国の労働者が、月収3000元(約6万円)の賃金でこの作業に従事することなどあり得ないからだ。


さらに、アップル製品の組立能力をすべてインドや東南アジア諸国に移すことも、短期間では不可能だろう。


アップルのティム・クックCEOは最近の講演で、「アップルが中国に組立工程を移したのは低賃金労働力を求めたからではなく、中国の強力なサプライチェーンのためだ」と述べた。しかし、2007年に初代iPhone3Gを中国のフォックスコンで組み立てると決めた際、中国は1台あたり6.5ドルの安価な労働力を提供することのほかには、アップルが「強力なサプライチェーン」と呼べるような部品を提供することも一切できていなかったことを、彼はもう忘れてしまっているのかもしれない。アップルの新たな製品組み立て基地のインドでは2023年、約2000万台のiPhoneが組み立てられたが、中国よりもさらに安価な労働力以外には、今のところアップルが満足するようないかなる「強力なサプライチェーン」も有してはいない。


(『日系企業リーダー必読』2024年11月20日の記事からダイジェスト)

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