陳言/文 最近、DeepSeek(中国名:深度求索)の突発的な登場に伴い、同社の所在地である杭州市も人々に注目されている。DeepSeekのほか、宇樹科技(ユニツリー)、遊戯科学(ゲームサイエンス)、雲深処科技(ディープロボティクス)、強脳科技(ブレインコ)、群核科技(メニーコア)など6社の注目のスター科学技術企業があり、「杭州六小龍(杭州の6つの小さなドラゴン)」と呼ばれており、人工知能(AI)、ヒューマノイドロボット、ブレインコンピュータインターフェース(BCI)など現在の最先端技術分野で国際的な先進レベルに達しているからだ。これが人々の熱い議論を引き起こしている。なぜこれらの企業は杭州に集中して現れたのか。
実は、これは偶然ではなく、前回のインターネット経済爆発時代に、杭州は先行イノベーションの高地であり、阿里巴巴(アリババ)や網易(ネットイース)など多くの有名企業が誕生している。杭州の馬雲(ジャック・マー)は世界的な影響力を持つイノベーション型企業家となった。
杭州はどのようにして特にイノベーションに適した土壌になったのか。理由はいくつもあるが、最も肝心な点は、杭州の政府が他の地方と少し違うということだ。
遊戯科学の創始者である馮驥(フェン・ジー)氏は、杭州は「辛抱強い」と見ている。遊戯科学のチームが杭州で起業した時、彼らはあまり知られていない小さな会社で、6年間に及ぶ研究開発期間中、杭州は常に辛抱強く付き添い、花が咲くのを待っていた。2019年に同社のオフィス所在地の鎮政府は3600平方メートルの物件を提供するというサポートを行った。馮氏は将来の発展を考えて、2棟のオフィスビルをさらに借りたいと申し出たが、借りるのはプロジェクトが拡大するまで待たなくてはならないということだった。鎮政府はそれからオフィスビルを2024年に契約するまで3年間空きビルのままにし、さらに1年間の賃料免除という優遇も与えた。馮氏は、他の場所だったら、このような支援を受けることはありえないと考えている。
杭州の忍耐力は革新・起業への支援が一貫していることにも現れている。2008年に杭州市は「杭州市大学卒業生創業3カ年行動計画」を発表したが、これまでに6回わたってつぎつぎに推進され、ますます多くの人々に恩恵をもたらしている。近年、杭州市は「青荷計画(青年人材の活用などに関する計画)」も打ち出した。2020年から現在までに全市で導入された35歳以下の大学生は累計200万人を超え、人材純流入率は連続で全国1位となっている。常住人口で計算すると、現在杭州には3人に1人の若者がいる。
最も重要なのは、杭州政府のやり方は、中国ではほぼ異質なものであるということだ。
ある北京のオーナーはメディアに対し、「杭州で企業経営に至るまでのプロセスにおいて、現地政府のパフォーマンスが自身のこれまでの認識を覆した」と述べた。第一に、入居手続きや補助金申請の全過程で、政府関係者は彼の飲食接待を受けたことはなく、タバコ一本受け取っていないということだ。第二に、政府部門は物件探しを手伝ってくれただけでなく、自発的に賃料を半分に減額してくれたことだ。これは彼の会社が政府のある条件を満たしていたから受けられたサービスであるが、彼は事前にこのような条件があることも知らなかった。第三に、政府の補助金は決められた時期に自動的に支払われ、直接口座に入金される。彼が関連部門に出向いて催促する必要はない。第四に、手続きが終わると、政府部門の人の姿は消え、彼を煩わせることもなければ、あれこれ指図することもない。第五に、すべての地方の警察は、事件の捜査のため杭州の企業に行く場合、現地の報告が義務付けられており、杭州の警察指導者が同行しなければ企業に踏み込むことはできない。
「DeepSeekはなぜ杭州で生まれたのか」は、地域競争の優位性の議論に限られた問題ではなく、「政府は改革をさらに推し進め、良好なビジネス環境を生み出し、経済発展を再び促すことができる」という中国社会の希望を真に反映している。
中国日本商会HPからの転載
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