『必読』ダイジェスト ブルームバーグがある研究で世界85カ国の発展途上国家を分析した結果、出した結論とは、「製造業は、もはや貧困国が豊かになるために必ず通らねばならない道ではない」というものだ。なぜなら、中国がこの道を歩んできた以上、他の国にはもう歩むべき道がないからだ。
中国の製造業の規模はすでに連続14年間世界のトップにあり、現在速度は落ちているものの、その実力と潜在力は依然としてその他の経済体の追随を許さないものである。スイスのIMDビジネススクールの経済学者リチャード・ボールドウィン教授は、「中国が早々と機先を制しており、続く者にはもうチャンスはない」と言う。
中国の製造業はいったい何の機先を制しているのか。
一つは半製品の絶対的コントロールという局面だ。世界の製造業製品のうち、中国で生産されるものが4割を超えている。特に原材料の抽出・加工からハイテク製品の製造まで、中国は広範な半製品を提供することができ、半製品の生産で世界の42%を占め、2018年の中国の半製品市場価値は先進国の総和を超えている。半製品で他の競争相手をはるかに引き離しており、このことにより中国は世界の製造業サプライチェーンの中で重要な発言権を持ち、かつこの構造はすでに固定化しつつあるようだ。
その一つの例が、「インド製造」のアップルのiPhoneだ。実際には完全にインドで製造されているのではなく、「インド組み立て」といったほうが正確だ。なぜなら必要とされる川上の部品のほとんどを中国大陸から空輸する必要があり、このためにアップルは関税を払わねばならないが、その関税は約22%である。アップルの187社のメインサプライヤーのうち、157社が中国大陸に工場を設けており、アップルは中国の製造業とは切っても切れない関係にある。
次に、産業チェーンの「内因性」イノベーションだ。製造業の大部分のイノベーションは最先端技術による進展ではなく、具体的な実際の生産過程におけるものであり、産業チェーンの協力、技術のアップデート、工程の改良により、絶えず蓄積・進化してきたもので、一種の内因的な、隠れたイノベーションである。中国製造業の産業チェーンの完全性とその巨大な規模のおかげで、こうしたイノベーションは産業チェーン全体に波及し、中国製造業に軽視できない競争力をつけることになった。
三番目は製造業の「スマート化」アップデートである。2024年の世界の「ライトハウス工場」(模範的意義をもつデジタル化製造業とグローバリゼーション4.0のモデルケース)の数は172社におよび、中国がそのうちの45.3%を占めている。そのほかにも、現在中国は世界で最も多くのスマート工場とオートメーション端末をもち、すでに建設されているデジタル化作業場やスマート工場が1万以上あり、世界で最大のスマート製造応用市場となっている。
しかし別の面では、技術革新と産業チェーン構造の急速な変遷のもとで、中国の製造業もまた、多くの新たな難問に直面している。
まず、先進製造業技術の衝撃だ。米国をはじめとする先進製造業界は、今まさに各種の最先端技術を結び付け、大規模生産とサプライチェーンの融通性という問題を解決しようとしているところで、今後生産・製造の基本ロジックやモデルを変える可能性があり、「これが中国の製造業の覇者という地位に真っ向から挑戦するものになるだろう」と多くの人が考えている。たとえば、今後は3Dプリンターを一台買えば、製品をプリントすることができるので、現在の製造業は徹底的に覆されるだろう。
次に、これが最も脅威ではあるが、エンジニア思考が生産性サービス業の発展を制限することだ。現在の中国のエンジニアを尊重する思考は、極端に製造部分の性能の向上とコスト削減を追求するもので、この思考モデルが中国製造をつくり上げてきたのだが、イノベーションを封じ込めることにもなった。アップルは毎年中国で1億7千万台ほどのiPhoneを生産し、そのうち中国の製造段階で手に入れることのできる利潤は利潤全体の10%にも満たない。アップル本社が産業チェーン上の研究開発、物流、金融決算、アフターサービスなどのサービス部分を掌握することにより、毎年500億ドルに達する利潤が懐に入ってくる。生産性サービス業を手中にいれたアップルは、自らの製造工場はもたないが、利潤の支配者なのだ。根深いエンジニア思考から解放されなければ、中国の製造業の今後の発展は極めて大きな制約を受けることになるだろう。
(『日系企業リーダー必読』2024年11月5日の記事からダイジェスト)
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