陳言/文 河南省鄭州市から南へ 100 キロほどいくと許昌市に到着する。ほとんどの中国人が許昌に行ったことはないかもしれないが、ここ数年、許昌はとても人気があり、河南省内はむろんのこと、北京や山西省太原市、江蘇省太倉市などの都市から許昌へ、直通の高速バスが何本も出ていて、人々が許昌へ行く目的とは「許昌市胖東来商貿集団有限公司」(胖東来)で買い物をするためだ。
“胖”(太った)という言葉は、他の漢字の前にあるか後ろにあるかで、印象が異なる。現代中国語で“胖”という言葉はあまりよいイメージをもたないが、“胖乎乎”(まるまる太った)や“胖墩墩”(ずんぐりむっくりの)という言葉における“胖”は、かわいらしいイメージをもつ。しかし、“矮胖”(ずんぐりした)や“虚胖”(小太り)といった言葉にはかわいらしいイメージはなく、マイナスイメージがある。“胖東来”は“胖”が前に置かれている言葉なので、人に親しみやすいイメージを与えることができる。
許昌生まれの于東来は、1995 年に「望月楼胖子店」を創立し、当時ここは普通の小売店に過ぎなかった。後にタバコと酒を専門に取り扱うようになり、「胖東来煙酒有限公司」と改名し、2002 年になってようやく「胖東来生活広場」に発展した。2005 年、胖東来は初めて他都市へ進出し、まず新郷市で「新郷胖東来百貨」を設立し、その後、河南省内部でしだいに大きくなっていった。
2025 年 1 月 8 日に于東来が SNS メディアで発表した情報によると、2024 年の胖東来集団全体の売上高は 170 億元近く、納税額は 6 億元余り、利潤は 8 億元余り、従業員の平均月収は 9 千元余りであった。河南省のきわめて平凡な小売店がこのような発展をみせたのは、偽物を売らないという最大の特徴があったからだ。ここ数年、ネットでの購入はもちろんのこと、一部の大型スーパーマーケットでも偽物を手に入れることがあるが、胖東来は偽物を売らないばかりか、顧客が満足できなければ、理由を問わずして返品でき、胖東来に行けば本物を買えるという風評が広まり、企業自身が大きな伸びしろを手に入れた。
実際には中国では、米国および日本の一部のスーパーマーケットチェーンはみな評判がよく、日系コンビニエンスストアは各地ですばらしい発展ぶりをみせている。
ここ数年の胖東来の成功は、ビジネスにおいて誠実さを堅く守ったことに関係がある。誠実であるからこそ、胖東来の宝飾店にお客が押し寄せ、レストランはさらに満席続きで、ドラッグストアは薬を買って病気を治すという消費者の需要を満足させることができた。スーパーマーケットは宝飾店、ドラッグストア、そしてレストランに支えられて利益率があがり、胖東来は営業の面で新たな道を歩み始めた。同時に小紅書(Instagram と Amazon が合わさったような SNS)や抖音(中国版 TikTok)などのメディアを利用することで影響力が拡大し、胖東来の発展に虎に翼を添えている。
ますますかわいらしさを増す胖東来は、今は河南の片隅にあっても、これからは河南省を飛び出し、中国国内各地で花開くことも不可能ではないだろう。
筆者は日本企業(中国)研究院執行院長の陳言です。中国日本商会HPから転載しました。
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