『必読』ダイジェスト 「勉強が運命を変える」というのは中国の親に根強い観念だが、この観念は中国にかつて存在した科挙制度まで遡ることができる。確かに、これまでずっと、「勉強によって運命を変える」ということは一般の中国人にとって最も確実な道だった。それゆえ、中国人は誰よりも子供の教育を重視し、中には異常と言えるほど極端に走ってしまう親もいる。
良い大学に入ることは、良い仕事に就くことを意味するが、中国は人口がとても多く、良い大学のリソースが非常に限られているため、中国の子どもの大半が幼稚園の頃から、十数年にわたる熾烈な競争という戦いに加わることを余儀なくされる。
これによって極めて良くない結果がもたらされている。本来、子ども時代は最も悩みや心配事がないはずなのに、深刻な学業の圧力にさいなまれ、生活における喜びや興味を失い、うつ病を患う者が増加しており、ひいては学生が飛び降り自殺を図るという悲劇が高い頻度で生じている。統計によると、2023年、中国の高校生のうつ病の検出率は40%と高く、中学生は30%、小学生は10%だった。2017年から2021年までの期間、中国における全体的な自殺率は著しく低下しているという傾向が見られる中で、15歳から24歳までの青少年の自殺率は顕著に上昇しており、10万人毎に3人を突破した。
親たちも巨大な経済コストを払っており、『中国養育コスト報告 2024年版』の調査研究データによると、子ども一人を0歳から4年制大学卒業まで育てるのに必要な費用は平均で68万元にも上るという。
このような状況に対して、長年、社会では批判の声が上がり続けており、国もまた学生の学習負担を軽減する政策を繰り返し打ち出してきたが、何も効果はなかった。
とはいえ現在、この状況にも変化が生じているようだ。なぜなら親たちは、もはや勉強で運命を変えることがますます難しくなっていることに気づいたからだ。
現在の大学新卒生の就職率を見ると、いくらか分かることがある。今年、国内のある有名大学の卒業生の就職率は平年の平均90%以上から約67%まで下がった。博士課程の大学院生の就職率はさらに深刻で、2022年の100%から今年は15%未満まで低下した。ある著名な大学の花形と言える専門的な学部を専攻する大学院生の就職率でも、これまでは毎年ほぼ100%だったが、今年は40%まで下落している。つまり、大学生の大半が十数年も苦労を重ねて学び、家族もまた何十万もの大金をはたいたにもかかわらず、結局は仕事が見つからないというものだ。
さらに留学生を見ると、国外での就職のハードルが上がり続けているため、8割以上の海外留学生が、卒業後には帰国することを選択して成功を目指している。統計によると、中国に帰国して就職した海外留学生の平均年収は18万元未満で、国内卒業生の平均年収の約14万元と比べてもそれほど差はない。留学費用に100万元以上も費やしたことを考えると、とても割に合わない。
突き詰めていうと、もはや時代は変わったということだ。70年以降に生まれた世代の大半と全ての80年代、90年代以降に生まれた世代は、生まれたときから改革開放の恩恵を受けてきた。これらの世代が享受してきたのは年平均10~20%の経済成長、大量の求人数、急速に上昇する給料水準であり、それによって、ある程度の個人的な努力が伴えば、翼を得た虎のごとく時代の恩恵に十分に浸ることができた。しかし、今では、経済成長が衰退し、就職の機会も給料水準も急激に悪化しているため、もはや多くの親たち自身の成功体験も裏付けるものがなくなっている。
このような新たな状況下において、社会にはこれまでと違った観点が見られるようになっている。たとえば、現在の社会経済に巨大な変化が発生しており、人材に対する要求も以前と変わってしまい、良い大学に進学してより上の社会階層への移行を実現する機会はますます少なくなっている。そして、詰め込み教育を受けてきた者が社会の発展ニーズに適応できるとも限らないため、教育観念を転換し、子どもが正常な一般人としての人格を培い、品性を形成し、体を鍛えることに注意を向けるべきで、そうするほうが子どもの将来の長期的な成長にとってよりプラスになるという観点だ。また別の観点では、子どもにプレッシャーを負わせるだけでなく、両親もまたさらに努力して、自身の資産やリソースを増やし、子どもに強力な援助とサポートを提供する必要があるという。
しかし、ソーシャルメディア上で最も多く広がっているのは、「成り行きに任せる」という観点だ。どのみちいくら努力したところで結果がそれほど変わらないのなら、我が子には楽しい子ども時代を過ごさせ、心も体も健康であってくれるほうが、親としても負担や心配が少なくて済むというわけである。
(『日系企業リーダー必読』2024年10月20日の記事からダイジェスト)
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