『必読』ダイジェスト 「中国GDPの米国GDPに対する比率は61%まで下落した」という話題が最近セルフメディアで盛んに取り上げられている。


2021年末、中国のGDPは114兆9200億元に到達、米ドルに換算すると17兆8200億ドルに相当するもので、当年の米国のGDPは23兆5900億元だったため、中国GDPの米国GDPに対する比率は77%という過去最高値を記録し、両国間のGDPの差は5兆2000億ドルとなった。しかし、国際社会が一様に2030年前後に中国のGDPは米国を超え、世界のトップに立つと予想した矢先に、中米間の差は3年連続で広がっていった。


2022年に、この差は7兆4700億ドルまで拡大し、中国GDPの米国GDPに対する比率は70%まで低下した。


2023年、中米間のGDPの差は引き続き拡大し、同比率は65%まで下がった。


2024年上半期、中国GDPの米国GDPに対する比率は61%まで下落した。


「中国台頭のピークアウト論」が世間をにぎわせているが、それは西側の社会で流行している「70%のジンクス」を反映しているようにも見える。それは、一つの国のGDPが米国の70%に達したら、米国からの圧力に遭い、その後徐々に衰退していくというものだ。


80年代の末、日本のGDPは一時、米国の70%に達した。しかし90年代にバブル経済が崩壊した後、「失われた30年」に陥り、今や日本のGDP総額は米国のわずか15%前後に過ぎない。


ソ連は、70年代初めごろに、日本と同じく70%の位置にいたが、その後ピークから衰退期に入り、最終的には崩壊した。


では、中国の台頭も終わりを迎えるのだろうか?


2022年、中国の実質GDP成長率はわずか3%で、過去40年以上の期間で2番目に低いGDP成長率だった(最も低かったのは2020年)。2022年、中国は厳格な新型コロナウイルス予防抑制に起因する苦しみを経験したが、多くの人々が特殊な時期が終わりつつあると感じた時、社会秩序は一旦通常に戻り、中国経済は爆発的な発展を迎えた。しかし、予防抑制措置が2022年末に完全に撤廃されると、2023年初の短い期間を除いて、以降の各四半期の中国経済のパフォーマンスは非常に軟調になり、現在に至るまで好転していないため、「中国経済は永遠に米国を超越することができないかもしれない」という悲観的な感情が中国国内の人々の間で蔓延し始めた。この状況も「中国GDPの米国GDPに対する比率は61%まで下落した」という話題が盛り上がりを見せる背景的な要因となっている。


中国がここ数年間で自国の経済成長が著しく減速していることを認めなければならないが、中米両国間のGDPの数値および比率に特化した考察を行うならば、中国人もそれほど悲観的になる必要はない。なぜなら、中米間の差の拡大をもたらす点で無視できない要素は、為替相場だからだ。


2021年、人民元から米ドルへの為替レートは年初の6.5から一気に6.3まで上昇した。2022年初以降、米ドルに「尋常ではない動き」が見られる中で、米国連邦準備理事会は11回連続で利上げを行い、値上げ幅は累計525ベーシスポイントに達し、金利は今世紀の最高水準まで上がった。2021年末から2024年第1四半期末まで、人民元は米ドルに対して10%以上も価値が下がり、「1ドル=7.3元」の大台を割り込んだ。それゆえ、2021年末時点の為替レートで2023年の中国経済を改めて計算すると、中国のGDPは20兆ドルを突破し、中国GDPの米国GDPに対する比率は73%を超える。


為替レートの影響から抜け出すために、一部の国際機関は「国際ドル(GKドル)」を作り出し、それを基準にして各国GDPおよび経済成長、国民の実質の生活水準を評価している。国際通貨基金および世界銀行の国際比較プログラムで試算すると、中国のGDPは2016年に米国に追いつき、2023年には、中国のGDPは32兆9300億「国際ドル」になり、これに対して米国のGDPは27兆3600億なので、中国は米国の120%ということになる。


しかし、これを根拠に「中国経済が全ての面で米国を超えた」と信じる者など本当にいるだろうか?


市場相場での計算と「国際ドル」に基づいた計算のうち、どの方法がより妥当なものかについては、さらに議論する必要があるが、それはかなり専門的な話題であり、全ての人々を納得させられる答えなどないため、ここではこれ以上論じる必要はない。『必読』が言わんとしているのは、「中国GDPの米国GDPに対する比率は61%まで下落した」という類の話題は人々の感情を扇動し、議論を焚きつけるだけのものは、基本的にこのようなまやかしの問題であり、中国経済の真の問題を見つけて理解する上で何の役にも立たたないため、過度に重視する価値などない。


(『日系企業リーダー必読』2024年9月5日の記事からダイジェスト)

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