文/日本企業(中国)研究院シニアフェロー  島影均

「日中関係は戦後最悪」と言われる。確かに地政学的に言って、現在の位置関係は簡単に変わらないし、変えられない。さらばどうする。慣れるしかないのではないか。

ここ2年の国際情勢は新型コロナウイルス感染症のパンデミックによって極めて異常である。日中関係も例外ではない。「爆買い」と冷やかしながら、一方で、日本の商店街の顔である東京・銀座では中国人観光客向けの品ぞろえが行われ、大歓迎だった。ところが、その銀座は今や閑古鳥の巣になっている。

この時期に行われている中日両国の相手国に対する好感度調査を見ると、中国側の対日好感度が急降下している。日本側の対中好感度が低迷しているのは常態化しているが、中国側に「日本嫌い」が増えてきたのはなぜか? 

米国の対中政策が従来に「取り込み」から「中国外し」に転じ、米国の対外政策に追随する日本の対中批判の頻度が増え、コロナ禍の一つである「引きこもり」を余儀なかされている中国人にメディアを通じて中国を批判する日本のさまざまなレベルの声や映像が迫って来る。 

そうした中国人も友人知人の日本人はと聞けば「あの人は別よ」と答えるはずである。これはお互いさまで、アンケート調査によれば日本の7割以上が「中国嫌い」「中国人嫌い」だが、友達の「陳さん」や「王さん」は別と答えるのと同じ症状だろう。

英国とフランスは狭い海峡を挟んで向き合っていて、過去、何度も戦争をしている。最近でこそ、フランス語に外来語として英語が混じってきたが、長年、フランス人はパリで観光客に英語で道を尋ねられるとフランス語で答える、と言われていた。

一方、英国人は最近まで性病をフレンチディディーズ(フランス病)と言っていた。

ところが、フランス娘に結婚相手は「堅実な英国紳士が良い」と答え、英国紳士は「フランス女性」を結婚相手にしたがると聞く。

日中関係もこの「大人の関係」を見習うべきではないだろうか。両国には相手国の知人友人がいない人はいないだろう。好きか嫌いか聞けば、「あの人は別」と言う答えが帰って来る。それでいいのではないか。コロナはかつてパンデミックを起こしたウイルス同様、いずれ集団感染のレベルに達して終息に向かうだろう。

そうそれば中国人観光客の来日も増えるだろうし、おっかなびくりながら、日本人の中国観光も盛んになるだろう。コロナ下でも中国観光の広告に対する注目度は高い。潜在的な中国観光ニーズは意外に大きい。

そうなれば、「中国人は大嫌い」「日本人は大嫌い」の世論はもっと下がるに違いない。民意の動向を実は最も警戒している政権担当者の政策にもじわりと影響を与える。

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