研究院オリジナル 2024年11月上半期、中国メディアの報道・論評が比較的多かった中日経済関係のコンテンツおよび日本企業は以下の通りである。
日本企業と中国企業の協力には非市場性不確定リスクを考慮すべきとメディアが助言
先日、静岡県にあるインフィック株式会社が中国・杭州の正元智慧集団公司と介護産業における協力協議に署名した。
このたびの協力は明らかに政府が背後でとりもったもので、浙江省と静岡県は1982年以来ずっと省(県)友好パートナーシップを結んでいる。11月7日、浙江省・静岡県経済交流促進機構第33回会議が杭州で開かれ、浙江省の盧山副省長、静岡県副知事で日中友好協会理事長の増井浩二氏らが会議に出席した。この席上で、正元智慧集団公司と静岡のインフィック株式会社が介護産業における協力協議に署名した。
しかしこの協力は少し理解しがたく感じられる。正元智慧集団公司はスマートキャンパス、スマート産業パークの建設・運営を専門業務とする会社で、介護分野に関わったというような情報は何もない。かつ、会社の実際の支配者であり理事長兼社長の陳堅は証券操作、先物市場に関わったとの疑いにより、2023年11月に公安機関の監視下に置かれている。
「正元智慧集団公司のような中国企業との協力には非市場的な不確定性リスクがあり、インフィニック株式会社はこのような協力の決定を下した際、関連する背景調査を行っていなかったように思える」とある中国メディアは指摘している。
日系資本の保険会社が中国の自動車保険に新規参入
先日、中国国家金融監督総局は、愛和誼日生同和財産保険(中国)有限公司(あいおいニッセイ同和損保)が業務範囲を拡大し、新たに自動車保険業務を追加し、その中には自動車の自賠責強制保険や商業自動車保険が含まれると発表した。これは今年初めてこの種の業務拡大の許可を受けた会社である。
中国の自動車保有台数が増えるにつれ、特に新エネルギー自動車の急速な発展につれ、自動車保険市場の規模は日増しに拡大し、今年の1~10月の新エネルギー車の自動車保険費用は前年同期比で53%増という大幅な伸びとなり、業界全体の自動車保険費用の4.06%という伸びをはるかに上回っている。新エネルギー自動車の保険費用は従来のガソリン車よりもはるかに高い。新エネルギー自動車の事故の増加は、自動車保険市場への新規参入者および、BYDやシャオミなどの自動車メーカーも新会社を立ち上げたり、株式参入したりして相次いで参入している。自動車メーカーには豊富なサービス資源や経験があり、彼らはこのパイの分け前を預かるチャンスを見出したためだ。
あいおいニッセイ同和損保もまたこの新規参入者となった。この会社は日本のMS&ADインシュアランス グループの中心的企業であり、トヨタ自動車はMS&ADの株主の一人で、トヨタ自動車とあいおいニッセイ同和損保は協力して自動車保険製品を開発したこともある。
矢崎が中国で新エネルギーへのモデルチェンジ実現の近道を探し当てる
11月4日、矢崎中国投資有限公司と阿爾特自動車技術股份有限公司(IAT)が共同出資により北京阿爾特矢崎新エネルギー科技有限公司を設立した。
矢崎自動車は従来のガソリン車の部品サプライヤーであり、生産するワイヤーハーネス製品はほとんどがガソリン車に使われてきた。しかし近年、新エネルギー自動車業界の急速な発展により、新エネルギー自動車の市場浸透率が年を追うごとに上昇し、自動車市場競争の構造の変化に対し、この企業は巨大な経営圧力に直面しており、製品のモデルチェンジ・アップデートに迫られていた。今年4月、矢崎は22年間ガソリン車のワイヤーハーネスを生産してきたスワトウの澄海工場の閉鎖を余儀なくされている。
矢崎としては、中国は将来的に世界の新エネルギー自動車の中心となり、新エネルギーへのモデルチェンジを実現するには、中国の新エネルギー車サプライチェーンに入りこむことが近道である考えた。また、中国本土のトップ企業と協力することは、これも中国新エネルギー車のサプライチェーンに入る近道となる。明らかに阿爾特自動車は理想的な協力パートナーで、この会社は中国で初めて独立した自動車設計会社として上場し、主な業務は自動車の研究開発、基幹部品の研究開発および製造、新エネルギー自動車の研究開発などである。
合弁会社は今後2年以内に動力電池システム、駆動システム、充電・配電システムなどを開発する計画である。合弁会社を新エネルギー自動車向け高圧電気システム分野で世界トップクラスの企業にしたいと矢崎は考えている。
また、矢崎はさらに高い目標を掲げている。現在、阿爾特は海外開発経験と市場調査研究データを積み上げており、矢崎の強大な市場リソースもまた世界中に及んでいる。双方は阿爾特の国際業務配置と矢崎の世界市場リソースにより、独特な「研究開発+製造+商社」というビジネスモデルを構築し、共に世界市場を開拓していく。
ある業界内関係者は、日系自動車の完成車企業に比べ、矢崎のような部品サプライヤーは、中国の現地企業との連携により新エネルギー自動車のサプライチェーンに入り込むほうが、効率的に新エネルギーへのモデルチェンジを実現させることができるかもしれないとみている。
花王グループの中国ハイエンド路線が大きな挫折
先日、花王グループの傘下にある高級化粧品ブランドEST(エスト)の天猫国際海外フラグシップ店が、2024年11月30日に正式に運営を停止するとの情報を発表した。これ以前に、EST公式サイト店は2024年8月31日に営業を終えており、香港・マカオにあった二つの実店舗もまた今年の早い時期に営業を終えている。
化粧品業務はずっと花王グループの営業総収入のなかで主要な地位を占めていたわけではないが、花王はハイエンド化粧品分野に食い込むことを望んでいて、2021年にはSENSAIとESTという二つのハイエンドブランドを中国市場に導入したが、ここ2年の中国市場での発展は思うようにはいかなかった。2023年の花王グループの財務報告書によると、アジア市場の販売額は5.6%下がり、中国市場の成長の伸び悩みが影響を与えた要素の一つとなっている。2024年上半期、中国のいるアジア地区は花王化粧品の世界における唯一の縮小市場となった。
業界関係者は、花王の中国における存在感はP&G、ロレアル、ユニリーバよりもはるかに低く、これはブランド経営管理能力によるものであるほか、日本ブランドがしだいに中国で人気を失っているという大きなトレンドとも関係している。
IPG中国チーフエコノミストの柏文喜はそれに加え、花王グループは中国市場の急速に変化する状況に戦略の調整が追いついておらず、そのために消費者のニーズを満足させることができなかったと考えている。このほかにも、消費者の購買力の低下、オンライン・オフラインチャンネルの競争の劇化などの要素もまた、売り上げ減少の原因となったとみている。
花王グループによると、ESTは中国市場から撤退するわけでなく、販売戦略の調整を行うだけで、ESTの販売をTikTokなどのプラットフォームで展開する予定であるとのことである。しかし、花王の販売チャンネルを変える策略は小手先だけの対策で、根本的な対策ではないように思える。終わったばかりの中国国際輸入博覧会で、花王グループは化粧品展示の重点を依然としてキュレルやフリープラスなどのミドル~ローエンドの大衆向け製品においており、花王の高級化粧品分野における決心と競争力は、まだ検討が必要とされるだろう。
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