研究院オリジナル 2024年10月後半、中国メディアの報道や評論は以下の中日経済関係の内容や日系企業について多く取り上げた。
日系資本が相次いで中国の医薬品業界の資産を現金化
近ごろのメディアの報道によると、大塚ホールディングス(Otsuka Holdings Co.)は中国の医療装置メーカー微創医療の株式の売却を検討している。2024年6月30日時点で、大塚ホールディングスは同社の筆頭株主であり、20.87%の株式を所有している。
微創医療は中国の大手器具・装置メーカーで、心血管ステントで事業を起こし、同社の製品は心血管、整形外科など多くの分野をカバーしている。2001年頃、微創医療が経営危機に陥った時、大塚ホールディングスは同社に1800万ドルの資本注入を行った。
近年、微創医療の業績は下降し続けており、危機に包囲されているため、20年間共に歩んできた大塚ホールディングスも同社から手を引くことを決定した。2020年から2023年まで、微創医療の累積赤字は18億1100万ドルに達しており、同社の時価総額はピークだった2021年の1300億香港ドルから10月18日には117億4400万香港ドルまで下落した。
今年以降、日系資本が次から次へと中国の医療品業界の資産を売却している。
2023年4月、ツムラは100年の歴史を持つ漢方薬の老舗企業・辰済薬業を2億5000万元で買収した。しかし、そのわずか3カ月後、辰済薬業は中国資本によって買い戻され、山西省国有資産監督管理委員会と宝鶏市国有資産監督管理委員会が新たな株主になった。
2024年7月、遠大医薬の公告によると、7億4800万元で天津田辺製薬有限公司の買収が完了した。天津田辺製薬有限公司は田辺三菱製薬株式会社が有する中国の主要企業の一つで、心臓・脳血管や内分泌代謝および消化管などの慢性疾患分野に特化した先発医薬品を生産および販売している。
2024年8月1日、協和キリンは中国の子会社である協和麒麟(中国)製薬有限公司の全株式を香港維健医薬集団に売却することを発表した。
最近、日系資本が相次いで中国の医薬品業界の資産を売却し、現金化している状況に対する世論の見方は様々であり、この状況を日系資本による中国市場撤退の流れの一部だという見方を示す者もいれば、この状況は中国の医薬市場の全体的な環境が厳しくなっていることと関係していると見る者、逆にこれらは互いに関連性がなく個別の事案だと言う者もいる。
世界初の新エネルギー自動車工場が中国で操業開始、ホンダはこれを機に劣勢を挽回できるか?
10月11日、ホンダの世界初の新エネルギー自動車工場が湖北省武漢市で正式に操業に入った。湖北省の現地政府とホンダは同工場の操業を非常に重視している。同工場の操業開始後、生産第一号となった車種は「霊悉L」で、今後は新ブランドの車種「燁」シリーズが生産され、年間の生産台数は約12万台となる見込みだ。ホンダ中国の担当責任者によると、ホンダは中国で計画を5年前倒しにして、2035年までに四輪自動車の電動化率を100%に到達させるという。
ホンダ中国は最近、9月期の中国大陸での売上が前年比で42.93%減少し、7月および8月期の売上も前年比で40%以上減少したことを明らかにした。同社は売上減少の主な原因として数多くの「新エネルギー」自動車が市場に与えた影響を挙げている。現状への対策としてできることは、製品構成の調整を加速し、電気自動車にシフトすることだ。このため、ホンダは今年武漢工場の第2生産ラインと広州工場の第4生産ラインを閉鎖し、全体で約30万台分のガソリン車の生産能力を縮小した。これと同時に武漢の新エネルギー自動車工場の建設に着手した。
しかし、アナリストの中にはホンダによる今回の行動を好ましく見ていない者もいる。その理由として、第一に、ホンダの新エネルギー自動車工場の生産能力が速やかに12万台の規模に達したとしても、市場においてこの規模の台数ではやはり競争力に欠けるからだ。BYDの新エネルギー自動車の年間生産台数は200万台以上だ。第二に、ホンダの新エネルギー自動車工場の操業が同社の生産能力の過剰が最も深刻な時期と重なることだ。ガソリン車の助力を受けて新エネルギー自動車の開発を支えることも実際的な戦略だが、逆に新エネルギー自動車をガソリン車の救いの手と考えるなら、その挑戦の難易度は非常に大きくなる。
日本企業の海南自貿港進出を支援する場の設立を中日の当局者が支持
10月21日、海南省三亜市日本企業インキュベーションセンターのオープン記念式典が三亜中央ビジネスエリアで開催された。同センターは日本企業の海南自由貿易港への進出を支援するための場となる。海南自由貿易港は中国で唯一の自由貿易港で、最先端の経済開放エリアであり、2025年末に島全体を経済特区にするための税関による封鎖作業が完了する見込みだ。
駐広州総領事の貴島善子氏はオープン記念式典に参加し、同センターは日本の民間企業が100%投資しており、日本政府から公益性を持つ企業組織として認定されていることを強調した。貴島氏は日本および三亜の各界に対して、共に手を携えて、双方向の投資ルートを開拓するように呼びかけた。
三亜市の尹承玲副市長は、同市がRCEP、CPTPPなどの国際貿易ルールを基準とし、輸出型経済の構築に力を入れていると語った。今回設立された三亜市日本企業インキュベーションセンターは、日本企業が三亜を理解し、三亜に投資し、三亜に進出する上で重要な窓口になる。
当日、日系資本企業6社が三亜に進出する契約の調印式に出席した。これらの6社は貿易、文化観光、医療ヘルスケア、物流、コンサルティングサービスなどに関連する企業で、同市の現在および将来の産業発展の方向性と非常に合致している。
なぜセブンイレブンは中国市場で失速しているのか?
中国フランチャイズ経営協会が発表した2023年商業フランチャイズ経営ランキングで、セブンイレブンは中国国内の総店舗数が3906店で40位だった。1992年に同社は中国市場に参入し、より標準化、専門化されたコンビニ経営モデルを導入し、業界の手本となった。しかし、同社は今、失速し続けており、中国の国内コンビニチェーンに置き去りにされており、後から参入してきたローソンにも追い抜かれてしまった。
業界アナリストによると、セブンイレブンは中国市場で主に以下の面で問題を抱えている。
第一に、フランチャイズ加盟制度に欠陥が存在していることであり、個人のフランチャイズ加盟者はセブンイレブンブランドとの協力に直接加わっておらず、むしろ各エリアの同社協力パートナーを介して協力しており、この面で個人のフランチャイズ加盟者に不確実性がもたらされている。また別の面として、各エリアの協力パートナーは同社の経営および管理理念を個人のフランチャイズ加盟者に完全に伝えるのが困難であるため、個人のフランチャイズ加盟者に対する管理と統率が不十分になっている。
第二に、セブンイレブンが整った後方支援設備を備えているとはいえ、業務のイノベーションの面で、新たな動きが明らかに少ないことだ。これに対して同業他社は活発な動きを見せている。例えば、ローソンは「三層の消費空間」のビジネスモデルを打ち出し、ファミリーマートは第5世代の店舗を展開しており、「1日5食」戦略を全面的に展開している。好德は新たなリテール事業部を設立し、オンラインコミュニティでの共同購入や無人実店舗、商品投入機能を併せ持つ自動販売機などを設けている。
第三に、ブランドマーケティングが頻繁に世論の嵐に巻き込まれ、その影響が自社のイメージに及んでいることだ。例えば、今年5月から7月までの期間、江蘇省のセブンイレブン2店舗が「農夫山泉」の販売を停止したというニュースが世論をにぎわせた。2022年夏に同社の一部の店舗が「彼女が酔わなきゃチャンスなし」というキャッチフレーズを展開し、公に女性を侮辱しているとして非難され、自社ブランドに巨大な悪影響がもたらされた。そして否定的な世論が形成されると、同社の支社はいずれも力を尽くしてフランチャイズ加盟業者がしたことは自社と無関係であるように装い、今回の出来事は店舗の従業員が勝手にやったことだと声明を出したことが災いし、自社のイメージがいっそう損なわれてしまった。
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