研究院オリジナル 2024年5月後半、中国メディアの報道や評論は以下の中日経済関係の内容や日系企業について多く取り上げた。
ローソンの株式市場撤退は実体市場に有利に働く可能性
近ごろ、ローソンは7月24日に市場を正式に撤退すると発表し、同社は市場から注目を浴びた。ローソンは誤解を解くため速やかに外部に対して、ローソンが今回実施するのは日本での上場廃止であって、市場自体からの撤退ではないため、ローソンの経営に影響が及ばないと表明した。実のところ、近年ローソンの中国市場における業績は非常に良い。
今年4月、中国チェーン経営協会は『2023年中国コンビニエンスストアTOP100』を発表したが、ローソンは自社店舗数が6330店で5位にランクインし、外資系ではトップに立ち、7位に入ったセブンイレブン(3960店)の約1.6倍だった。現在、ローソン中国は17の省・直轄市で経営展開しており、125都市に進出している。2023年の販売額は前年比124%増で、売上高(税込み)は142億元を超えた。
業界の分析によると、ローソンが今回、通信大手のKDDIと提携したことには、重要な戦略的意義があるという。近年、コンビニ市場の勢力構造に大きな変化が生じており、通販サイトと宅配物流の急速な発展に伴い、業務形態にも新たなスタイルが出現している。ローソン中国・事業推進本部の吉田涼平総支配人は、オンラインの客単価は少なく見積もってもオフラインの2倍だと語った。それゆえ、ローソン中国は近年、インスタントリテールをはじめとするオンライン販売に発展の重点を置いており、オンライン+オフライン、前置倉庫、倉庫・店舗一体型などの新たな小売りモデルの発展に取り組んでいる。現在、ローソンはフードデリバリーサイトとの協力を強化しており、2023年2月、安徽省でローソンはフードデリバリー大手の美団と提携し、「24時間営業コンビニ」のプロジェクトを開始した。
今回の提携では、KDDIの先進的なデジタル技術を導入することによって、ローソンの店舗運営効率をさらに向上させ、オンライン販売業務の新たな方向性を開拓することが期待されている。最近、「2024年中国コンビニエンスストア大会」で、ローソン中国の三宅示修総裁は、実店舗の価値を再評価することを表明した。
資生堂は今後中国市場で販促に頼らないことを決定
5月10日、化粧品大手の資生堂は今年3月31日までの2024年度第1四半期の業績報告を発表した。第1四半期、同社は日本国内市場と中国高級市場での市場シェアを拡大し、最大限に復活を確かなものとした。
資生堂は昨年から中国で経営改革を実施し、組織構造を市場の変化に速やかに対応できる構造に作り変え、また実店舗を最適化することによって、生産率を向上させた。同社は中国事業に対する戦略調整を発表し、大規模な販促活動による成長の実現に過度に依存することをやめ、ブランド価値に基づくより持続可能なモデルに転換することにした。
こうした転換のために、中国市場における第1四半期の純売上高はマイナスに陥ったが、クレ・ド・ポー ボーテ(Clé de Peau Beauté)やナーズ(NARS)の両高級商品は持続的な増加を記録した。
これより前、資生堂ブランドは中国市場で「核汚染水」放出危機による深刻な打撃を被っていたが、同社の藤原憲太郎社長兼最高執行責任者は、4月から、当社があるキャンペーンを展開したところ、「資生堂ブランドの使用をやめていた一部の顧客が戻ってくるようになった」と語った。特に藤原氏は、そのキャンペーンとは「ダブルイレブン」などの販促活動ではなく、主に自社商品の効能や効果を説明するというものであることを強調した。
中国市場における競争でも、特に国内ブランドとの差別化の競争において、効能や効果という観点から見れば、日本のブランドにはまだ一定の優位性があり、高級ブランドは特にそう言える。4月25日、資生堂傘下の米国スキンケアブランドのドランクエレファント(Drunk Elephant)の中国進出が始まったが、業界内では、それによって資生堂は中国市場で成長をけん引する馬車をさらに入手したと受け止められている。
日本の船主がますます愛情を注ぐ中国の造船所
最近、商船三井(MOL)は新造のLNG(液化天然ガス)輸送船の命名式を行った。同輸送船は中国の滬東中華造船(集団)有限公司に発注したものだ。今後さらに5隻の船が順次竣工する予定だ。
5月8日、蘇美達船舶はプレスリリースを行い、同社と新大洋造船が合同で、伊藤忠商事と協力して63型バルカー2隻を新たに造船するプロジェクトに関して、中国国内で最終的な合意に達したことを発表した。これより前の今年1月、蘇美達船舶は春日海運から63型バルカー2隻の造船を受注し、4月末には同社からさらに1隻の追加注文を受けた。
船舶ブローカーのエクスクルーシブ シップブローキング(Xclusiv Shipbroking)が発表した報告によると、日本の船主からの注文の40%は、日本国内の造船所と契約が交わされているが、同注文の33%は中国の造船所が受注している。そして、中国の受注量は猛烈な勢いで増加しており、2023年に日本の船主から中国の造船所が受注した新たな造船の注文数は約2倍に増加し、2024年1月から4月までの期間、日本の船主は12隻の造船注文を中国の造船所に行っているが、その内訳はバラ積み船が6隻、ガス輸送船が6隻だ。
この数年間で、中国の造船所が引き渡す船舶の質は向上し、また引き渡しの周期も短縮されており、徐々に日本の船主の注目を集めている。現在、中国の船主からの注文数は世界トップで、今後より多くの日本の船主が中国の造船所を選択すると見られる。
日系リチウム電池企業の中国市場での敗因
21世紀に入った頃、日系企業はリチウム電池産業で絶対的な優位性を持ち、パナソニックやソニー、三洋のリチウム電池は世界市場で独占的な地位を占めていた。今やリチウム電池の「ワールドチャンピオン」である寧徳時代の前身企業・ATLも当時はTDKグループの完全子会社だったが、後にそれが世界上位10社に入る大手動力電池企業になり、日系企業の方は好調なのがパナソニックだけになってしまうとは誰も想像できなかったことだろう。
2009年前後、リチウム電池産業チェーンにおける日系企業の配置は全面的かつ緻密で、各主要材料および補助材料がみな企業の生産能力でカバーされていた。例えば、森田化工や東京応化工業がヘキサフルオロリン酸リチウムを製造し、宇部興産や三菱化学が電解液を手掛け、旭化成や東レが電池用隔膜を作り、クレハがバインダーを供給し、旭硝子や三井化学が正極材を担った。当時、中国国内のリチウム電池産業は基本的にまだ空白の状態だった。
実のところ、日系企業は早い時期から中国のリチウム電池市場に注目し、業界による調査研究活動も非常に入念に行われ、企業の技術と管理の水準も一様に中国国内企業より高かった。例えば、2007年から2010年まで、森田化工(張家港)公司の主要業務による収入の年平均増加率は67%に達し、ヘキサフルオロリン酸リチウムの粗利率は2010年に59%に達した。
しかし、日系企業がこれほどまでに大きな先進的優位性を占めたにもかかわらず、それを市場の優位性に転化できなかったのはなぜか?ある中国の研究者によると、これは中国市場に対する日系企業の誤った認識が招いたものだ。
第一に、中国市場の広さと厚さに対する評価が甘かったことだ。例えば、2008年の世界金融危機の際、多くの日系企業が中国国内には制度的な欠陥が存在し、また海外の金融危機が需要の急激な減少をもたらし、経済が大きな打撃を被ると考えて、(事業拡大に)二の足を踏んだため、最高の発展期をモノにすることができなかった。例えば、2011年に宇部興産は江蘇省に万トンクラスの生産能力を有する電解液生産ラインを新設する計画をしていた。当時、中国国内の最高水準は千トンクラスで、このプロジェクトが完成すれば同社は業界トップの地位を確かなものにできたが、最終的に実行には移されなかった。
第二に、日系企業の閉鎖性が非常に強く、日系企業内の産業チェーンの循環に慣れなければならなかったことだ。このため、中国国内企業は産業チェーンの上流・下流を新たに構築するしかなかった。国内の新エネルギー自動車メーカーの台頭に伴い、蚊帳の外に追いやられた日系企業内を循環する産業チェーンは次第に衰退していった。
第三に、生産能力の拡大に対して全体的に保守的だったことだ。その原因は日本国内のバブル経済の破綻が残したダメージか、或いは中国市場に対する警戒心にあるのかもしれないが、成長が急速な中国市場に対して、多くの日系企業は高い利益を固守したいと思う反面、生産能力規模の拡大に対しては消極的な態度を示した。しかし、中国という超巨大な内部競争が伴う市場で、規模の大きな優位性を持ち合わせていないなら、最終的に居場所を失ってしまう。