研究院オリジナル 2024年1月後半、中国メディアの報道や評論は以下の中日経済関係の内容や日系企業について多く取り上げた。

中国での市場競争によって日本電産が迫られる難しい選択

近ごろ、日本電産は2023年度(2024年3月31日まで)の収益予想を1350億円まで下方修正し、これより前の予想よりも300億円下がったが、その原因は中国市場における競争の激しさにより、同社の電動自動車部品事業の営業赤字が約600億円に達する見込みとなったからだ。

2023年、日本電産の電動自動車部品事業の業績は低迷した。2023年12月時点で、同部門の売上額は3四半期連続で100億円前後にとどまっており、2024年1月から3月までの期間はさらに45億円まで減少することが予想される。

中国自動車工業協会のデータによると、2023年の中国における電動自動車およびその他の新エネルギー自動車の販売台数は前年比38%増で、約950万台に達したが、2024年にはさらに20%増加し、1150万台に達する見込みだ。現在、電動自動車は中国にとって数少ない急速な成長をもたらす業界であるため、おびただしい数の参入者がなだれ込んでいる。そのため、多くの自動車メーカーの間で価格競争が過熱し続けており、すでに儲けが出ない状態になっている。そして、自動車メーカーはこうした値下げ圧力を他の部品サプライヤーに波及させているため、日本電産の電動自動車部品事業も徐々に力を失っている。日本電産の代表取締役会長兼CEOである永守重信氏は、決算記者会見で電動自動車事業および中国の電動自動車市場について言及した際に、「我々のライバル、我々自身、そして我々の顧客がみな赤字に陥っている。私は企業経営に50年間携わっているが、このような事態に直面したのは初めてだ」と語った。

儲けが出ないため、日本電産は受注を減らしている。しかし、中国は今まさにガソリン車から電動自動車に転換する過渡期を迎えており、大手部品企業の中には、未来の市場のために、たとえ赤字のリスクを背負ってでも、喜んで受注している企業もある。

アナリストは、日本電産がずっと利益の維持を最優先して、受注と投資を減らすなら、シェアを速やかに失う可能性があると指摘する。電動自動車部品を次なる成長の柱としている日本電産にとって、今は決定を下すべき重要な時だ。

ユニクロが中国のファストファッションブランドのSHEINを「襲撃」

1月16日、ユニクロは、中国のファストファッションブランドのSHEINがユニクロのミニショルダーバッグを模倣したとしてSHEINを起訴したことを公表した。同ショルダーバッグは歴代のユニクロ製品の中で最も売れているアイテムだ。

実のところ、現在ユニクロとSHEINは特に競争関係にあるわけではない。中国大陸市場はユニクロにとって売り上げが2番目に大きい地域であり、世界で最も多くの店舗を有する。これに対して、SHEINの本部はシンガポールにあり、主に中国以外の市場で販売しており、中国国内ではほとんど知られていない企業だ。

アナリストによると、SHEINは中国国内市場に足を踏み入れていないとはいえ、その強大な実力と猛烈な発展の勢いは、ユニクロをますます不安にさせている。民間シンクタンクの胡潤研究院による『2023グローバルユニコーン企業ランキング』で、SHEINは4500億元でユニコーン企業として世界4位にランクインし、中国以外での同社のネット検索回数はZaraの3倍以上だ。

SHEINの産業チェーンから見て、中国の上流における約1/3のアパレルサプライチェーン企業がSHEINに納品しているが、ユニクロも同様に生地の供給から縫製工場まで、商品の生産拠点が中国にある。それゆえ、サプライチェーンの力から見ると、両社は中国の強大な生産基地で背中合わせにしており、明らかな差は見られない。

マーケティング力から見て、SHEINはEC企業として独自の優位性を持っている。同社はインターネットを巧みに活用し、一方で顧客に対してカスタマイズされた商品のレコメンドを提供し、他方で販売量や在庫量などのフィードバックに基づいて、速やかに商品発注を決定し、新商品の発売周期を短縮している。ユニクロのような従来型のファストファッション企業と比べて、SHEINはより早く新商品をリリースすることができ、またコストパフォーマンスを極め、ヒット商品を頻発している。2023年、SHEINは米国でユニクロやZaraを上回り、米国のファストファッション市場で40%のシェアを占めた。

それゆえ、同じくファストファッション市場のリーディング企業として、ユニクロが考慮せざるを得ない危険は、SHEINが中国国内市場への進出を決定した場合に、どうやってその挑戦に立ち向かうかだ。

近年、SHEINは著作権の問題で立て続けに訴訟に巻き込まれており、消費者の懸念を引き起こしている。ユニクロによる今回の起訴は、(SHEINに)狙いを定めた襲撃と言ってもよい。

昨年ホンダの中国での販売台数は前年比11%減、しかし今年は自信満々

2023年、ホンダは中国市場で依然として困難に直面した。1月4日に同社が発表した中国での販売台数のデータによると、2023年の下げ幅は約11%で、その中でも広汽ホンダの販売台数の下げ幅が大きく、前年比約16%減だった。

業界内では、ホンダが2023年に中国で総販売台数を落としたことは、電動自動車による従来型化石燃料自動車市場への圧迫が関係しているという見方が一般的だ。広汽ホンダにせよ、東風ホンダにせよ、大半の車種が依然としてガソリン自動車だ。

実のところ、ホンダは電動自動車の重要性を十分に認識している。2023年初、ホンダは電動自動車事業の実現を加速させるために、組織体制で変更を加え、電動自動車事業開発本部を新設し、これに対応して人事の調整も行った。しかし、同社による自動車の電動化の過程はまだ始まったばかりであり、短期間で成果を出すことは期待できない。同社の2つの主要な電動化車種であるe:NP1とe:NS1は、2023年1月から11月までの月平均販売台数が千台以下だった。

業界内では、ホンダが2024年に勢いを盛り返す可能性があるという見方がある。現在、同社が武漢で進めている世界初の電動自動車スマート工場の建設もすでに最終段階に入っており、建設が完成すると東風ホンダは年間100万台クラスの生産能力を持つ「スーパー自動車メーカー」になる見込みであり、これによって東風ホンダの「電動化時代」の幕開けが加速する。2023年11月に開催された広州モーターショーで、ホンダはe:Nシリーズの第2弾となる車種を発表したが、それぞれ广汽ホンダのe:NP2、東風ホンダのe:NS2で、どちらの車種も2024年に発売される。

ホンダは今回の車種に対して、勝算があるという自信に満ちている。同社は2023年の上海モーターショーで、2035年に中国で純電動自動車の比率を100%にするという目標を実現すると宣言した。しばらく前に同社の電気自動車設計部門のクリエイティブ・ディレクター兼取締役がメディアからの取材を受けたとき、率直に中国の電動自動車のデザインは「凝っているがチープだ」と批判したが、そこからもホンダが徐々に自信をつけ始めていることが見て取れる。

中国市場に好感を持つ日本のミネラルウォーター

中国のミネラルウォーター産業はすでに成熟しているとはいえ、その巨大な消費規模に日本の同業他社が引き寄せられて、中国市場の開拓に取り組んでいる。近ごろ日本のミネラルウォーターブランドである「のむシリカ」が中国で試験営業を始めた。

同ブランドは2016年に日本で誕生し、株式会社Qvou傘下のミネラルウォーターブランドだ。ミネラルウォーターや天然水の分野を長年にわたって開拓してきた他の日本のボトルウォーターブランドと違って、のむシリカは巧みにECを活用して様々な販売モデルの革新を図っており、2023年7月時点で累計販売本数が1億本に達し、勢いのあるニュージェネレーションが出現した。

中国の同様のミネラルウォーターに表記されているメタケイ酸の含有とは異なり、のむシリカは主に二酸化ケイ素が含まれているが、二酸化ケイ素は中国の消費者にとってあまり馴染みがない。しかし、中国は世界で最もECの発展が成熟している市場であり、のむシリカはEC主導モデルで水を得た魚のように勢いづき、それに中国消費者の新しい物好きの性質が相まって、のむシリカは比較的順調に販売を伸ばすかもしれない。

2023年6月、Qvou株式会社の中国本部が正式に海南自由貿易港に設けられた。それから3カ月後、同社は二酸化ケイ素入りのミネラルウォーターを携えて広州国際美博会に姿を現し、また小紅書やTikTok、マイクロブログに続々と公式アカウントを開設した。

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『日系企業リーダー必読』は中国における日系企業向けの日本語研究レポートであり、中国の状況に対する日系企業の管理職の需要を満たすことを目指し、中日関係の情勢、中国政策の動向、中国経済の行き先、中国市場でのチャンス、中国における多国籍企業経営などの分野で発生した重大な事件、現状や問題について深く分析を行うものであります。毎月の5日と20日に発刊し、報告ごとの文字数は約15,000字です。

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