『必読』ダイジェスト 青島で 10月11日に開催された第4回多国籍企業リーダーズ・サミットでプライスウォーターハウスクーパーズ( Pricewaterhouse Coopers,PwC)のグローバル・クロスボーダー・サービス中国担当マネージング・パートナーである黄耀和氏が中国メディアの取材に応じ、「中国における多国籍企業の発展は、最近、新たな変化を見せている」と述べた。
PwCは過去5年間、米国、欧州連合(EU)、東アジア諸国連合(ASEAN)、日本、中東などの投資家向けに年次調査リポート『グローバル・インベスター』を作成してきた。黄耀和氏はその調査に基づいて、「世界の新たな政治・経済状況のもとで、多国籍企業が以下の3つの大きな変化を遂げつつある」と述べている。
同氏はまず、「第1の変化は多国籍企業の対中投資はよりいっそう慎重になり、これまでよりも明らかにリスクに対して神経質になっている」と指摘。多国籍企業のグローバル本社はますます対中リスクへの警戒心を高めており、その中国支社のCEOの多くが、「今年は中国市場に対する本社の見解を調整させるのに多くの時間を費やした」と黄耀和に語ったことを明らかにした。 黄耀和氏は同時に、「多国籍企業の多くが中国から撤退するというわけではない」と中国メディアに説明している。プライスウォーターハウスクーパーズの多国籍企業に関する定例調査によると、多国籍企業CEOの約7割が「中国から撤退することはない」と明確に回答し、およそ2割のCEOが「他国への投資を検討し始めている」と答え、「中国から撤退する」と答えているのは残りの1割強であるという。
黄氏はさらに、2023年1月以来、複数の多国籍企業グローバル本社の首脳レベルが 頻繁に中国を訪れたが、その後は、「多くの多国籍企業が自社の中国支社や中国チームにより多くの自主権を与えるようになった。たとえば以前はグローバル本社の承認が不可欠だった重要案件について、今年は中国支社の独自審査に委ねるようになっている。これは今年になって顕著になった二つ目の変化だ」と語る。
黄氏はまた、現在、多国籍企業グローバル本社で業績を挙げるのが厳しくなりつつあり、中国支社に対してより高い利益率を求めるようになったことで、中国支社の中国国内拠点の布陣が東部沿岸地方から中部や西部などの内陸部にシフトしつつあることを発見したという。「これもまた新しい動きである。なぜなら中国内陸部のマーケットは広大で、たとえば重慶市だけでも3400万人の人口を擁しているからだ。そこまでの人口を有していない欧州の国々ではありえない現実である。武漢や西安、成都などの都市には質の高い人材が集まり、コストも比較的に安い。 こうした状況は中国内陸部が多国籍企業を惹きつける重要な要素となっている」と指摘する。
これと同時に、より多くの多国籍企業が中国現地企業との提携を強化し始めており、これが黄耀和氏の発見した 3つ目の変化である。
黄耀和氏の説明によれば、多国籍企業の中国国内における拠点の布陣には複雑で長い承認プロセスが必要だが、中国現地企業はマーケットの変化に対応するスピードや業務効率が高い。これに対し、多国籍企業はマーケットや消費者の把握で現地企業には到底かなわない。こうした理由から、「多国籍企業と中国現地企業が提携することで、多国籍企業は自社の研究開発力を発揮し、マーケットは中国現地企業が開拓するという協力体制を構築している」と黄耀和氏は説明している。
(『日系企業リーダー必読』2023年10月20日の記事からダイジェスト)