『必読』ダイジェスト 香港の日刊英字新聞『サウスチャイナ・モーニング・ポスト(South China Morning Post,SCMP)』による2023年10月5日付の報道で、2人の消息筋の話によると、オーストラリア当局は過去8年間に3つの異なる内部研究を実施して、大口商品の輸出国であるオーストラリアがサプライチェーンを多様化し、対中依存からの脱却を完全に実現できるか否かを確かめたが、いずれの研究においてもこれらの目標を達成するのは「不可能」という判断が示されたという。
記事によると、こうした党派の影響を受けていない一致した判断は、「昨年末にキャンベラがAUKUS(オーカス。米、英、豪三か国による安全保障の協力枠組み)などからの妨害にもひるむことなく、貿易を再開するために北京と接触したのは正しい行動だった」ことを証明する助けとなった。
関係者の話によると、オーストラリア外務・貿易省と財務省は共同で3つのうちの2つの研究を担当し、1つは2015年に、もう1つは2020年に実施した。これら2つの研究から導かれた結論はいずれも「中国に代わってオーストラリアの大口商品輸出市場になり得る市場はどこにも存在しない」という判断を示した。
デリケートな話題であるため、名前を公開しないことを条件に、2人の関係者は「外務・貿易省と財務省の研究により、オーストラリアが貿易を多様化し、中国への依存からの脱却を実現するのは不可能であることが示された。多様化を実現するために東南アジア市場への転換を図っているが、実質は『チャイナ・プラス・ワン』に過ぎない」と語った。
記事によると、1つ目の研究はトニー・アボット首相(Tony Abbott、任期は2013年9月18日から2015年9月15日まで)在任時に実施された。当時、アボット政府は米国が発した警告に従って行動をとる決定を下したが、その警告とは、「対中経済貿易への依存度が高まれば高まるほどオーストラリアは中国からの圧力を受けやすくなる」というものだった。
記事は次のように指摘する。「オーストラリアにとって中国は鉄鉱石や液化天然ガス、農産物の主要な購入国である。二国間貿易は一般的に両国関係の『バラスト』と見なされており、また双方の関係が完全に崩れるのを防ぐ手段でもある。2020年、両国関係の破綻がかつてないほど現実味を帯びるようになったころ、貿易の多様化の概念がより注目を浴びるようになった」
記事では、「2022年に就任したアンソニー・アルバニージー首相(Anthony Albanese,2022年5月21日から現職)が率いる政府は意図的に対中関係の改善を図っている。同政府が出した報告、即ち3つ目の研究の報告は、アボット政府が行った研究と同じ結論に達した」と伝えられている。
別の関係者の補足によると、オーストラリア政府の上層部は、「対中依存から完全に脱却するのは無理だ」との認識を持っているという。
これら3つの研究はいずれも機密であり、『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』は報告の現物又はコピーを入手することはできなかった。
シドニー工科大学・豪中関係研究院のジェームズ・ロレンスセン院長は、「このようなオーストラリアの輸出業者の『多様化』は、愚かで実現不可能なことであり、また中国の気分を害するというリスクも存在する」との考えを示している。
オーストラリアの気候エネルギー金融シンクタンクの董旭陽(音訳)アナリストは、「サプライチェーンの多様化によって対中依存からの脱却を図るのは困難だ」という認識を示した。董氏は、「人々が好むか否かにかかわりなく、現状として、世界の他の地方では力不足で、世界の再生可能エネルギー業界は中国が主導してきた。中国は世界的なエネルギーのモデルチェンジに必要な規模と速度でこれらの製品を生産している」と語った。
(『日系企業リーダー必読』2023年10月20日の記事からダイジェスト)