研究院オリジナル 今度はハルビンが突然注目を浴びることになった。
2024 年の正月期間中、とても寒かったので、筆者は家に数日閉じこもり、テレビやスマホ動画を見て過ごした。
ハルビン市文化テレビ・ラジオ観光局の提供したビッグデータの推計によると、正月休み の 3 日間で、ハルビン市を訪れた観光客数はのべ 304 万 7900 人におよび、観光総収入は 59億 1400 万元にのぼったという。観光客数と観光総収入のどちらも史上最高を記録した。
ハルビンの混雑ぶりから推測してみると、2024 年 2 月 10 日の旧正月の時には、ハルビン は依然として中国で最も寒いものの、検索ワードでは最もホットな都市になるに違いないと感じさせられる。
数年前の厳冬の折に、ハルビンに出張に行ったことが思い出された。乗用車から降り立つ と、新調したダウンジャケットも着ていないかのような寒さで、ズボンに至っては紙一枚く らいの薄さに感じたものだ。頭を上げて目に入ったのはホテルではなく、入浴施設であった。 そこの人が風呂に入らないかと熱心に誘ったので、実に意外に感じた。中に入ると、室内は 北京よりもはるかに暑く、入浴施設の中でご飯を食べたり、休憩したりできるのも、面白か った。今回山海関以南の「南の人」がハルビンにやって来たとき、きっと筆者と同じような不思議さを感じることだろう。
一番寒いときには海南省の三亜にバカンスに行き、海鮮を味わうべきだ。でも 2024 年に 入る直前直後には、人々は競うようにハルビンに行った。凍った大地とロシア風の街路、そして風変りなライフスタイルが、多くの人を日本や欧米諸国などの海外に出かけた気分にさせてくれるのだろう。
ハルビンに行く前には、セルフメディアなどで報道される東北三省は生活が苦しく、人口 流出が激しく、長年経済発展がひどく遅れているというイメージをほとんどの人が持って いたが、ハルビンに行ってみると、かつてはしゃれた生活をし、重工業は先進的で、教育レ ベルもその他の地区よりもはるかに高かったことを知る。東北のいくつかの貧しい隣国は、 この都市に地理的に優れた条件を提供することはできないが、隣国が安定し、大きな動乱が 起きなければ、それだけで東北にとっては悪くないことで、隣国との貿易により自身の発展を得るなどということは、そもそも考えられることではない。
頼りにできるのは国内だけだ。中国では一年で 1 億人もの人が海外へ出かけ、ほとんどの 人が行きたい国にはすべて行ってしまい、国内の秘境を探し始めている。同じ通貨で、支払 いは簡便、言葉が通じ、交通が便利で、医療的な心配もないなど、国内観光の長所を今考え てみると、違うのは生活環境の差異くらいなものだ。ハルビンの厳しい寒さや氷の彫刻など は他の都市にはなく、入浴施設を体験したり、東北料理を味わったり、スキーやスケートを 楽しんだりすることは、山東・江蘇・浙江などの沿海部の風情とは異なっていて、成都・昆 明・南寧ともまるっきり違う。ハルビンが突然 2024 年の正月や旧正月に人気の観光地となったのには、このような社会的背景があるのだ。
メディアがハルピンの旅行ブームを煽っている。中央テレビ局がニュースの中でおびた だしい時間を使いこれに関する情報を伝えているほか、正月期間中に SNS を見たとき、ハル ピン観光の体験記が次から次へとプッシュ通知され、おのずとここへの関心をひくことに なる。政府系メディアが宣伝するだけで、セルフメディアがどっと押し寄せなければ、ハルビンの観光ブームをつくりあげることはできなかっただろう。
今回のハルビン観光ブームは、2024 年の旧正月まで持続するだけでなく、今後数年間変わらずに続くものと思われる。
原文は2024年1月9日に中国日本商会HPに掲載されている。