研究院オリジナル 2023年12月後半、中国メディアの報道や評論は以下の中日経済関係の内容や日系企業について多く取り上げた。

中国世論は東芝の上場廃止事件をどう評論しているか?

12月20日、「日本の光」と呼ばれた老舗企業の東芝が東京および名古屋証券取引所での上場を廃止し、1949年以降74年にわたった上場企業の歴史が幕を閉じた。東芝は中国での知名度がとりわけ高く、日系企業の代名詞と言っても過言ではないほどだったため、東芝の上場廃止事件は中国でも重大事件として大いに注目され、多くのメディアや専門家がこの事件に対する見解を示した。

『毎日商報』の評論では、東芝が現在の局面に行き着いた真の原因は自分自身にあるという見解が示された。東芝には盲目的な投資や思考の硬直化、組織の肥大化、長すぎる意思決定の流れ、過度な保守性など一連の問題が存在する。まさに、湯之上隆氏が自著の『日本型モノづくりの敗北』で指摘しているように、「(日系企業は)10年に1回の新技術の波に直面したとき、市場のチャンスに対する鋭敏性を欠き、これまでのやり方にこだわったため、チャンスを失ってしまった」

全国日本経済学会の副会長を務める上海対外経貿大学・日本経済研究センターの陳子雷主任によると、東芝の運命は多くの日系企業に直面している矛盾を際立たせており、それは日本の伝統的な企業文化と現代の企業文化による矛盾だという。日本の伝統的な企業文化において、「委任者」は代理人として敬われ、管理者の権力は株主よりも大きい可能性さえあり、現代の企業文化と真逆だ。現代の上場企業として、東芝の運営はかなりの程度株主の意見で決定されており、経営管理者の権力は比較的に限られている。株主は短期的な収益を含む売上高を追求するのに対し、管理者は製品の開発や企業の長期的な発展を求めている。このような背景の下、東芝は長年にわたり幾度も倒産危機を乗り越えてきたが、技術革新、投資戦略などの業務で妨害を受けてきた。

『新民晩報』によると、日本のこれら老舗企業が直面している問題には、いくらか共通点があるという。東芝だけでなく、最近ではトヨタ傘下のダイハツ自動車も不祥事で世間をにぎわせている。これらの企業の主要な問題は、競争相手からの圧力だ。時には、これらの「競争相手」が、国や政治形態という形で出現することがあり、それは非市場手段による圧力だ。圧力を受け止めきれない企業は混乱し、重大な意思決定でミスを犯してしまう。

中国国際問題研究院・アジア太平洋研究所で特任研究員を務める項昊宇氏によると、東芝の上場廃止は、かつて輝いていた日本の製造業が直面している困難の縮図であり、日系企業が企業ガバナンス、リスク管理および市場の変化に対応する能力に欠けていることがその主な原因だ。東芝が直面している問題は日本の産業全体においても普遍的であり、日系企業が20世紀の急速な経済成長期に形成した独特の企業文化と制度は、すでにインターネット時代のニーズに適合しなくなっているが、それでも多くの日系企業の思考は依然として保守的で硬直しており、現状に安んじていて進取の気性がないため、国内外の市場の変化に基づいて速やかに経営戦略を調整することができない。

ローソンの壮大な目標:2025年に中国国内1万店達成

過去2年間、オフラインの業態はコロナ禍による打撃を受けてきた。ローソンと同時期に中国に進出したセブンイレブンは拡大に勢いがなく、ファミリーマートは2022年、業績が縮小し、店舗数が134店減少した。その一方で、ローソンは快進撃を維持しており、2022年には1175店を新規出店し、現在の総店舗数は6000店以上に達している。

規模以外に、ローソンが公表した2023年3月から5月までの業績によると、中国エリアの営業利益は2億円に到達し、中国エリアではこの2年間で初となる黒字を計上した。ちなみに2022年の同期の売上は28億円の赤字だった。

ローソンの好ましい業績の拡大は柔軟性によるものだ。ローソンは早い時期からエリアライセンス、大エリアフランチャイズといった方式を採用して未開のエリアに進出した。例えば、湖北、湖南では中百集団と、北京、天津、河北では超市発と提携し、これら現地の大手企業が擁する倉庫物流システムやサプライチェーン、工場リソース、市場に対する熟知度を活用することによって、未開の市場を速やかにカバーしている。湖南のある加盟店は、ローソンを選んだ理由として、同社のブランドが気に入ったこともあるが、より重要な要因は、提携先が持つ国有企業の中百集団のお墨付きが信頼に値するからだと語った。

こうした提携方式は速やかな業務展開を可能にしただけでなく、地方への大規模な拡大も実現した。ローソンの「大エリアフランチャイズ」はすでに市・県レベルでも浸透しており、江蘇のような発展したエリアだけでなく、ローソンは地方の小さな町にさえも勢力を伸ばしている。

流通システムの構築における専門性だけでなく、ローソンはマーケティング方式においてもイノベーション精神を示している。ローソンは現在の若年層および親子世帯の消費者の「人気トレンド」を敏感にとらえ、二次元カルチャーを主軸に、二次元やゲームをテーマにした関連のマーケティング活動を重点的に展開しており、同社は様々なウェブサイトでの公式アカウントのアイコンにも二次元キャラクターを採用しているが、そのおかげで同社は多くのロイヤルユーザーを獲得することができている。2023年4月時点で、ローソン中国は2800万人の会員を擁しており、会員顧客全体の30%を占めている。

2021年、ローソンの竹増貞信社長は中国エリアの業績について言及したときに、「店舗数一万店突破に力を入れたい」と語ったが、現在の発展状況からすれば、2025年には一万店到達も夢ではない。

中国という美食の国でなぜサイゼリヤは絶賛されているのか?

ネット上で、中国のネットユーザーの多くが残念に感じていることは、自分が住んでいる都市にディズニーランドがないことではなく、日本発のイタリアンレストランのサイゼリヤがないことだ。

サイゼリヤが公表した2023年度の財務報告によると、同社の財務報告期間における売上額は前年比27%増で、営業利益の増加はなんと約17倍だった。同時に2024年度の推定売上額は15%増で、2110億円に達し、営業利益は81%増で、131億円に達する見込みだが、この金額において、貢献度が最も高いのは中国市場だ。

中国は世界的な美食の国として名高いが、サイゼリヤはなぜ中国市場でこれほどまでに台頭することができたのか?その要因を一言でまとめるとするならば、それはサイゼリヤよりも美味しい店はサイゼリヤほど安くはなく、サイゼリヤと同様に安い店はサイゼリヤほど美味しくないからだ。

ネット上の消費者によるサイゼリヤの評価では、「美味しい」、「種類が多い」、「安い」という言葉が頻出度の高いキーワードとなっている。サイゼリヤのメニューには100種類の料理が並んでいるが、そのうちの72種類は価格が20元(約400円)以下だ。サイゼリヤの一人当たりの消費額は47元前後(約940円)であり、この額は一級都市での大半のファーストフードの価格に近く、同じイタリアンレストランのピザハットの一人当たりの消費額は72元(1440円)で、サイゼリヤはその金額のわずか65%だ。この2年間、中国では消費の後退などの影響により、コストパフォーマンスが高いサイゼリヤの人気がうなぎ上りとなっている。

サイゼリヤの快進撃を支えているのは、主に2つの核心的な能力だ。1つは規格化であり、洋食と似ている。もう1つは究極の効率だ。日本の農場からオーストラリアや中国広州の食品加工工場まで、さらにはセントラルキッチンや物流センター、そして店舗まで、同社は全フローを自社で担い、垂直一貫型で、効率の高いサプライチェーンシステムを構築している。同社の食材の90%は自前で調達したものか、自社加工したものであり、セントラルキッチンでは規格化された作業、大規模処理を実施し、統一された加工と配送を実現している。同社店舗のキッチンには、包丁が見当たらないし、コックもいない。

サイゼリヤの今後の見通しは非常に明るい。財務報告によると、中国経済が後退しているとはいえ、サイゼリヤの価格帯はライバル他社よりもずっと安く、来店者も増加するだろう。サイゼリヤは今後、中国でさらに多くの都市に出店することを計画しており、中国国内3000店舗の達成を目標にしているが、その目標数は現在の中国にある総店舗数の6倍以上だ。

三井海洋開発が南通で重量と石油貯蔵量が世界最大のFPSO製造プロジェクトに着手

三井海洋開発株式会社(MODEC)は世界トップレベルのFPSO(浮体式生産貯蔵積出設備)メーカーの一つであり、2008年から現在まで、三井海洋中国公司は平均して毎年1基のFPSOを中国で建造して引き渡している。しばらく前、江蘇省南通市にある三井海洋の子会社は、中国遠洋傘下の啓東中遠公司と提携し、重量と石油貯蔵量が世界最大の新型FPSO製造プロジェクトに着手した。現場として南通市が選ばれた理由は、同市が世界最大級の造船産業基地だからだ。同市には166キロに及ぶ「長江黄金水路」があり、1995年に川崎重工が同市で中遠海運川崎船舶工程有限公司を設立した。

3つの国々で日本の小企業に訴えられたアリババグループ

最近、日系企業のBWB Incが韓国、日本、米国の3カ国でアリババグループを訴え、アリババが同社の越境ECの特許を侵害したとして、同特許使用の差し止めと損害賠償を求めて裁判所に提訴した。BWB Incは東京に本社を構える特許管理会社であり、通関と物流の特許を有している。同社は日本で提訴した訴訟で、アリババと同社物流子会社の菜鳥集団、オンラインショッピングモールの天猫を運営する淘宝中国控股有限公司に対して特許使用の差し止めを裁判所に求めた。アリババはBWB Incが有する特許の侵害を否定しており、東京地裁に請求の棄却を求めている。

大手企業を含む多くの日系企業が購読している『必読』

『日系企業リーダー必読』は中国における日系企業向けの日本語研究レポートであり、中国の状況に対する日系企業の管理職の需要を満たすことを目指し、中日関係の情勢、中国政策の動向、中国経済の行き先、中国市場でのチャンス、中国における多国籍企業経営などの分野で発生した重大な事件、現状や問題について深く分析を行うものであります。毎月の5日と20日に発刊し、報告ごとの文字数は約15,000字です。

現在、『日系企業リーダー必読』の購読企業は、世界ランキング500にランクインした日本企業を含む数十社にのぼります。

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