『必読』ダイジェスト 『ウォール・ストリート・ジャーナル』は8月10日、「新たな貿易データの分析から、中国は高級製品から原材料にいたるまで412品目のうち、少なくともその70%を米国とその同盟国からの輸入に頼っていることが判明した」と伝えた。

ワシントンD.C.に本部を置く戦略国際問題研究所 (Centerfor Strategic and International Studies)の国際政治学者ビクター・D・チャ(Victor Dong Cha)研究員は2022年の貿易データを分析してこのような結論を導き出した。チャ氏はさらに、「関係諸国はこれらの商品を利用して中国から加えられる経済的圧力に対抗することができるが、そのためには大規模な協調的集団行動が必要であるものの、これまでそのような行動を中国に対して取ったことはない」と指摘した。

報道によれば、上記412品目の「多く」は、中国国内に代替品が不足している。

たとえば、ソーラーパネルの製造に必須の銀粉は、ほぼ全量を日本、米国、韓国からの輸入に頼っている。電池やその他の電子部品に使用するニッケル・パウダーとニッケル・クロムの約86%は、オーストラリア、カナダ、イギリスからのものだ。また白酒の原料となる高梁(コーリャン)は、3分の2が米国産である。

この分析レポートは、世界の公式貿易統計を追跡調査した国連商品貿易統計データベース(UN Comtrade)を使用している。中国の製造過程における対外依存度を算出するにあたり、米国とその12カ国以上の同盟国の貿易状況を総合し、カテゴリー別に分析を加えた。

その結果、日本への依存度が高い品目が124件と最も多く、次いで米国87品目、ドイツが64品目、韓国28品目、フランスが27品目だった。輸入額でみると、最も多かったのが米国からの115億ドル、2位はオーストラリアの106億ドルだった。

このデータは米国や同じ考え方を有する国々が協力して「中国が加える経済的圧力」を阻止する行動に出れば、きわめて強力なものになりうる可能性を示している、とビクター・D・チャ氏は『ウォール・ストリート・ジャーナル』に明らかにしている。

中国はこれまで、「政治的な対抗措置を取る目的で貿易上の影響力を繰り返し行使している」と批判されてきた。ノルウェー・サーモンやオーストラリア・ワインから韓国への団体旅行までさまざまな製品や産業を標的にしてきたのがその例だ。米国やオーストラリアなどは、これまでに中国との一対一の貿易摩擦を経験してきた。こうしたなか、これらの国々は「リスク回避」や「フレンド・ショアリング」(friend-shoring)といった手法を採用して中国周辺に代替サプライ・チェーンを構築してきた。

もうひとつの選択肢は、米国や目的をおなじくする国が対中貿易を武器にするための協調的な集団行動を取ることだ。そうすることで、中国政府に明確な代価を払わせることになる、とビクター・D・チャ氏は強調する。

同氏は「この考え方を諸外国の政府関係者と共有したところ、彼らも興味を示している」と明らかにした。

最も難しいのは、中国に対抗する各国が「対中コンセンサス」を醸成することだ。過去、これらの国々は常に個別に中国と対峙してきたが、これこそが中国が常にいかなる国にも孤立感を持たせ、諸外国を蹂躙してきた理由であり、中国は諸外国が「集団で対抗してくることはないと考えている」とビクター・D・チャ氏は語る。

報道によれば、同氏は、「国家安全保障の抑止原則に基づくなら、NATO協定第5条の原則に類似した形で運用される経済同盟を設立すべき」と主張した。同条項は、「いかなる加盟国への攻撃もすべての加盟国への攻撃と同じと見なすこと」を定めているものだ。

中国の年間輸入総額は2兆7000億ドルにのぼるが、そのうち米国とその同盟国に大きく依存しているのは約470億ドルに相当する品目で、比率からみれば多いとは言えない。しかし、「北京政府が重視する‟中核領域”のサプライ・チェーンにリスクが生じれば、対中抑止力として機能する可能性を秘めている」とビクター・D・チャ氏は指摘している。

(『日系企業リーダー必読』2023年8月20日記事からダイジェスト)

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