研究院オリジナル 2023年11月前半、中国メディアの報道や評論は主に以下の中日経済関係の内容および日系企業について多く取り上げた。
日本最大の物流企業が「一带一路」で事業を展開
中国の「一带一路」プロジェクトでも、特に陸路の中欧班列は、日系企業が欧州およびアジア大陸の市場を開拓する上で全く新しいビジネスチャンスをもたらしている。例えば、名古屋には数多くのグローバル製造企業が集まっており、それらの企業は日常的に海外貿易に携わっているが、大型の装置を欧州に輸送する場合、一般的な海運を利用するよりも、中欧班列のサービスを使う方が明らかに輸送時間の短縮につながる。
中国メディアの報道によると、こうした物流の利便性は、企業を引き寄せているだけでなく、日本政府の強い関心を呼び起こしている。経済産業省は日本最大の物流企業である日本通運株式会社に中国などの地域でのモデル事業の展開を委託しており、後に日本通運は貨物の集積地および発送地として中国の西安を選択した。
2018年12月20日、日本通運の「中欧班列(長安号)日通便」の第一便が発車し、日系企業の製品を41台のコンテナに満載にして、カザフスタンやロシア、ベラルーシ、ポーランドを経由して最終目的地であるドイツのデュースブルクに到達した。同列車の運行期間は15日だった。
日通の中欧班列には2つの輸送ルートがあり、1つは東京、横浜、名古屋など主要港から中国の大連まで海上輸送した後、さらに大連からドイツのデュースブルクまで鉄道輸送するルートで、もう1つは成田、羽田、中部、関西などの主要空港から中国の重慶まで航空輸送してから、次に重慶からデュースブルクまで鉄道輸送するルートだ。海陸連絡輸送では、東京港からデュースブルクまでの輸送期間が40日から28日まで短縮され、空陸連絡輸送の場合、輸送時間は最短で22日だ。
専門家は分析を通じて、「一带一路」でも特に陸上のルートは、日系企業にとって意義が非常に大きいと指摘している。欧州の産業は現在、東部に移転しており、東部の労働力は東欧および中欧に移っており、日系企業は中欧班列を利用して速やかに中央アジアおよび欧州東部の市場に進出することができている。
2013年に日本通運は日通西安公司を設立したが、現時点で同社は中国大陸の43都市で174の支社や子会社を設けており、職員数は約4000人に上る。中国は同社にとって配置規模が最大の海外市場の一つとなっている。
中欧班列だけにとどまらず、日本通運の子会社であるNX国際物流(中国)有限公司は2021年、広西省南寧に事務所を設立し、陸上および海上の新ルートを利用して、広西省を中心に、中国華南地区および中西部地区、アセアンの3つの市場を開拓している。2022年にNX国际物流は海南省にも事務所を設け、海南自由貿易港の建設に呼応して事業を展開している。
ソフトバンクが中国のボトルネック解消プロジェクトに投資、見通しは明るい
最近、ソフトバンクが行った財務報告によると第2四半期は9311億円の赤字であり、巨額赤字の原因は主にWeWorkへの投資であり、孫正義氏のテック株を選ぶ力に疑問が投げかけられた。しかし、同社による中国国内投資の見通しは好調を呈しており、同社が中国で早い時期に投資した万国数据や芯原微電子、中芯集成の中国企業3社は現在上場している。また同社が投資しているロボット向けのクラウド型サービスを提供する達闥科技やサードパーティのデータスマートサービス事業者のTalkingDate、オペレーティングシステムメーカーの统信軟件などは、すでにユニコーン企業になっている。
しかし、ソフトバンクによる中国投資で最も好調とされているのは、中国のボトルネック解消プロジェクトへの投資だ。中米の科学技術デカップリングの状況下で、中国政府は米国によるハイテク分野での制限を打破するために、重点産業、特にチップなどの半導体産業に対して中国企業が国産品による代替を展開できるように全力でサポートしている。誰もが知っていることだが、中国政府は企業へのサポートに全力を尽くして、中国の巨大な市場における技術の空白を速やかに埋める必要があり、これに対して、ソフトバンクは中国のボトルネック解消プロジェクトに特化して投資した。
今年初め、ソフトバンク中国は半導体材料および専用装置の開発企業である晟光硅研に投資した。昨年末、中国の国産3次元CADおよび工業クラウドソフトのサービスプロバイダーである新迪数字の約7億元に上るBラウンド融資にもソフトバンク中国は加わっている。ソフトバンク中国はさらにAIタッチセンサーチップのメーカーである他山科技やスマートフォンの高周波チップおよびナビゲーションチップのメーカーの迦美信芯、半導体開発企業の超芯星、青禾晶元、また電力用半導体モジュールのパッケージデザインメーカーである利普思半導体などのハイテク企業にも投資している。
現在の状況を見ると、かなりのプロジェクトの見通しが明るい。例えば、他山科技は世界初のデジタル-アナログ混合AIタッチチップを製造し、同チップはタッチセンサーやヒューマンマシンインタラクション、人体検出、材質識別などに関連する幅広いシーンで応用が可能であり、同社は2026年に上場する予定だ。今年5月、青禾晶元は国内で初めて先進的な半導体の複合基板の生産ラインを稼働させ、国内の空白を埋め、国内の先進的な複合基板材料におけるボトルネックの問題を効果的に解決した。晟光硅研が掌握するレーザーマイクロジェット切断加工技術は、次世代半導体材料である6インチの炭化ケイ素インゴットの切断に成功している。
「ダブルイレブン」で74.1%も減少!もはや中国が最大の市場ではなくなった資生堂
最近、資生堂が発表した第3四半期の財務報告によると、中国市場における資生堂の第3四半期の売上額の下げ幅は9%で、資生堂にとって中国はもはや最大の市場ではないことが明らかになった。終わったばかりの「ダブルイレブン」バーゲンで、資生堂による事前販売の初日のGMVは前年比74.1%減だった。
アナリストは、資生堂が核汚染水排出事件から大きな影響を受けたと見ている。スキンケア製品は消費者が長期的に使用する製品であり、代替性が高く、ひとたび消費者が商品の生産地や原料に懸念を覚えようものなら、すぐに国内ブランドや欧米系ブランドの代替品に乗り換えてしまう。
実に、今年上半期、中国市場はまだ資生堂にとって最大かつ成長が力強い市場だった。上半期、資生堂グループの中国での売上額は前年比12.8%増だった。しかし、その強さにも陰りが見え始めた。上半期の増加は主に通常のレベルを超えたセールによって成し遂げられたものであり、「6・18」の大バーゲンセールのおかげで、資生堂グループはEコマースでの増加が20%を超え、CPBの中国地区における売上額は前年比で40%以上も増加した。
しかし、バーゲンセールにおけるマイナスの効果が速やかに現れた。バーゲンでは、同社の主力製品である「アルティミューン パワライジング コンセントレート」の価格を大幅に下げた。大幅な値下げによって、多くの消費者が資生堂製品の価値が下がったと感じ、値段が下がれば下がるほど消費者の購買意欲が削がれた。資生堂もこの問題を意識し、中国事業を大規模なセールをメインにした成長モデルから、持続可能な成長モデルへと転換する意思を示し、価値に基づいたブランドおよび製品の宣伝に重きを置くことにした。資生堂は8月下旬に中国エリアでのマーケティング活動を全面的に縮小した。
このような転換で短期間のうちに効果を上げることは期待できない上に、核汚染水排出事件の影響も重なっているため、資生堂は中国市場で今後も厳しい時期を経験することだろう。
中国でソフトウェアの外注協力だけで満足していないTIS
最近、TIS株式会社は凌志軟件と蘇州市で「TIS-凌志世界デジタル協力センター(TL-GDCC)」のオープニングセレモニーを開催した。
TISは大手ITシステムインテグレーターで、同社の業務は金融、製造、物流、小売り、サービス、公共事業、通信などの各業界を網羅している。日本では人件費の高騰や深刻な高齢化により、IT業界の人材が不足しているが、中国は多くの若いIT技術者を擁しており、TISは業務を凌志軟件のような中国企業に外注することによってソフトウェアのコストを大幅に削減することができている。
しかし、TISは中国においてソフトウェアの外注協力だけで満足していない。今回の「TIS-凌志世界デジタル協力センター」の設立は、双方の協力関係のさらなる強化を意図しており、当初の「受け渡しを中心にした協力」を「戦略的協力」にアップグレードし、今後は手を取り合って世界の消費市場においてデジタル技術の普及と応用を推進する。
2022年7月、TISは自動運転のスケートボード型EVシャシーの製造および完成車開発・製造を手掛ける中国新鋭のPIX Movingに対して単独で戦略的な投資を行い、TISはMaaSおよびスマートシティ、市場開拓(日本および東南アジア地区)、自動運転の大規模商業運用などの方面でPIX Movingと深い協力を展開する。