『必読』ダイジェスト 複数のメディアの報道によると、テスラは中国国内の少なからぬサプライチェーン企業にメキシコに工場を建設するよう働きかけているという。今年以降、テスラの一部の中国のサプライヤーが続々とメキシコに工場を建設する計画を発表した。例えば、旭升集団は今年3月末にメキシコに生産基地を設けることを明らかにしたが、総投資額は約2億7600万ドルで、5月下旬に、同プロジェクトはメキシコのコアウイラ州で正式に始動している。他にも多くの中国の生産ライン設備製造業者がメキシコに事務所を設立しており、設計やアフターサポートなどの業務を請け負っている。

これに対して、一部の中国人は懸念を示し、「同様の動きは中国国内における就労ポストおよび税収の減少を意味する」と考えている。それは確かに認めなければならない。しかし、別の角度から見れば、これらの動きは中国企業の国際化やグローバル化にとって有利であり、長い目で見れば、中国経済にもプラスに働き、中国と多国籍企業の協力にとっても好都合となる。

まず、テスラが急速に発展するにつれて、最短の期間で生産能力を拡充することは重要な業務だ。テスラが計画している低価格モデルは、世界の年間生産能力が400万台に達しているが、中でもメキシコのヌエボ・レオン州の州都・モンテレイに位置するギガファクトリーは100万クラスの生産量を担うことができる。テスラが中国国内のサプライチェーン企業にメキシコに工場を建設するように働きかけていることは、テスラと中国のサプライヤーの間に長期的かつ安定した戦略的協力関係が築かれていることを示しており、中国のサプライヤーは生産パフォーマンスやコスト管理、製品の品質管理などの方面で、比類のない比較優位を有することを示している。メキシコ又は他の国々で新たなサプライヤーを探すよりも、テスラは中国のサプライヤーこそ新工場を稼働させる上で最もふさわしい協力パートナーとして認めているということだ。

想像できる点として、一部の中国のサプライヤーはテスラに追随してメキシコに工場を建設したが、それはこれらのサプライヤーが引き続きテスラの新工場からの途絶えることのない注文を受け続け、営業収入を拡大していくことを意味する。

メキシコの国立統計地理情報院(INEGI)が発表したデータによると、2021年のメキシコの世帯月平均所得は271.58ペソ(約113人民元に相当)で、年間所得は1400元にも満たないが、国家統計局のデータでは、同じ年に、中国の市民一人当たりの可処分所得は3万5128元に達しており、明らかにメキシコを上回っている。

メキシコ国内の安価な労働力や土地などのリソースを利用して、これらのサプライヤーはより高い利潤を実現し、資金を製造装置のアップグレードに用いることによって、今後の発展のために望ましい土台を据えることができる。

中国のサプライヤーは今後、テスラの発展に伴って、さらに多くの国や地域に進出し、自社の世界的な購買および製造能力を強化し、より多くの顧客にサービスを展開することができる。

予期できる点として、今後もし中国の新エネルギー自動車メーカーがメキシコで発展していけば、現地で中国国内に並ぶ整備されたサプライチェーンを見いだすことができ、そのサプライヤーも同様に「CHINA」を名乗り、製品の製造コストや輸出コストを削減できることに気づいて大喜びすることだろう。このように、中国の新エネルギー自動車産業は、企業とサプライチェーンによる共同での「海外進出」を実現することで、より強い相乗効果を形成するだろう。

実に、中国の新エネルギー自動車産業のサプライチェーンがテスラの主導の下で速やかにグローバル化に向かって進んでいるだけでなく、フォックスコンや立訊精密、歌爾股份など多くのアップルのサプライヤーおよびOEM工場もインドやベトナム、インドネシアなどの地区に投資して工場を建設し、海外での生産能力を拡大している。これらの中国資本のサプライチェーン企業は、現地の国に雇用や税収をもたらし、またそれぞれの国の国際競争力をも向上させている。

中国のサプライチェーン企業は積極的に世界経済の発展にかかわっており、より多くの注文を受け入れ、様々な国々の資源要素を統合し、効率的な配分を行い、テスラやアップル、ひいてはさらに多くの多国籍企業とともに発展している。そうすることで、今後より多くの多国籍企業が中国企業に向けて友好的な態度を示すようになることも、全くもってあり得る話だ。最近、少なからぬ多国籍企業の幹部が頻繁に訪中しているのは、中国の製造業と中国市場という二重の価値に狙いを定めているからだ。

中国政府とメディアは一貫して中国が14億人の超巨大市場であることを強調し、中国がどの国および企業にとっても無視することができないほどの発展の余地があるとして、外資企業による対中投資でも毎年安定した状態を維持させている。それ自体はもちろん素晴らしいことだが、今より重視すべきもう一つの面とは、新エネルギー自動車やスマートフォン、家電、クロスボーダーなどの分野の中国企業もまた国外に進出し、海外に工場を建設しているということも、中国の製造業が世界のサプライチェーンに深く融合し、貿易の障壁を回避し、輸出を拡大するための必然的な選択なのだと見なすべきということだ。今や、中国のサプライチェーンの海外進出は加速し、より多くの国と地区を網羅した産業配置によって、世界のサプライチェーン市場で主導権を握り、中国の製造業と世界各国との結びつきをより密接にすることができる。それによって、中国は引き続き製造業大国の優位性を発揮し、世界経済の発展の方向性により大きな影響を与え、新たな発展のチャンスをもたらすことだろう。

(『日系企業リーダー必読』2023年6月20日記事からダイジェスト)

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