研究院オリジナル 2023年8月後半、中国メディアの報道や評論は以下の日系企業について多く取り上げた。
なぜ資生堂は中国人を対象に「日本旅行ガイド」をリリースしたのか?
最近、「観美日本」という名のウィーチャットミニプログラムが静かに姿を現した。このミニプログラムは、資生堂によって開発された「中国人生活者に日本の美をお届けするプラットフォーム」であり、協力パートナーには日本政府観光局や星野リゾート、日本航空、三越伊勢丹などの9つの旅行、小売り、宿泊、交通分野の機関および企業が名を連ねる。「観美日本」の位置付けはコンテンツプラットフォームであって、資生堂を含む参画企業と一般ユーザーはみな日本旅行を紹介する画像やメッセージ、動画などを投稿することができ、いわば日本旅行版のSNS型ECアプリだ。
なぜ資生堂は自社業務とは畑違いの「日本旅行ガイド」を開設したのか?それは同社の最近の戦略調整が関係している。2022年の財務報告によると、同事業年度の資生堂の純利益は27.1%下落し、中国市場での販売額も6%下がった。2023年の「618商戦」で、資生堂商品の売れ行きはロレアルやランコムなどの欧州ブランドに及ばず、それより前に開催された国際婦人デーのセールでも売り上げは振るわなかった。資生堂は、ネット上での極端なセールが、それに見合った売り上げをもたらさなかったばかりか、かえってそれによってブランドイメージが損なわれ、特に自社の高級ブランドにとってマイナスだったと見ている。
それゆえ、資生堂はECでの極端なセールへの依存から脱却して、オフライン市場でのシェア拡大を望んでいる。8月上旬、中国からの訪日団体旅行が再開され、中国人旅行者の訪日旅行やショッピングの回復が加速する可能性があるが、旅行の消費は明らかにオフラインチャネルを活性化し、ブランドイメージを強化する絶好の機会だ。そのために、資生堂は旅行関連企業と協力して、「観美日本」をリリースし、旅行情報を提供することによって中国人旅行客を引き寄せ、中国人旅行客による日本のオフラインチャネルでの消費を促す。
無印良品は中国でモデルチェンジの苦境に直面
最近、無印良品が上海にあるMUJIcomの営業を停止するというニュースが流れ、MUJIcomが中国で営業する店舗は北京にある一店舗のみとなる。
MUJIcomは無印良品が2016年にスタートしたコンビニ型店舗で、主にコミュニティや駅、オフィスビルの地下街に設けられ、最初に東京や大阪などの都市に店が構えられた。2020年、無印良品はMUJIcomの中国市場への進出を果たし、北京に初店舗をオープンした。
ファミリーマートやローソンなどの従来型のコンビニと比べて、MUJIcomの店内面積は広い。商品陳列コーナー以外に、飲食スペースや読書・休憩エリア、そして打ち合わせや談話が可能なソファースペースが設けられている。しかし、2020年に2店舗が相次いで開店した後、MUJIcomは中国市場では店舗数を増やすことはなく、その販売コンセプトも次第に下火になった。
MUJIcomが市場で冷遇された原因は中途半端な位置付けにあるのかもしれない。実のところ、これもまた無印良品全体が中国での発展において直面している苦境でもある。
日本での庶民的なイメージとは異なり、無印良品は2005年に中国市場へ正式に進出した時に、ミドル・ハイエンドの位置付けを選んで業務をスタートさせた。物議をかもしたとはいえ、その位置付けによって無印良品の品質イメージを着実に形成することができ、速やかにフォロワーを引き寄せ、規模が日増しに拡大している都市部における中間層の美的ニーズを満たした。
しかし、2016年以降、中国市場における無印良品の成長は下落し始め、2018年第2四半期には初めてマイナス成長に陥った。そして新型コロナウイルスの大流行により、同社の中国におけるオフライン事業はさらなる打撃を受けた。とはいえ、中国は依然として同社の海外拡張の中心地であり、新たなイメージを示すために、同社は小都市への拡大(即ち三級以下の都市への業務展開)を選択し、値下げを始めた。これと同時に、同社はより細分化された様々なコンセプトを打ち出した。例えばコンビニタイプのMUJIcomをベースに生鮮を組み合わせた複合店舗の展開や電動自動車の販売開始、美団のテイクアウトサービスへの参入、そして北京や深センでのMUJI Hotelの開業などだ。
しかし、収入増加と利益増加において速度の足並みが揃っておらず、財務報告によると、無印良品の母体である良品計画は、2022年9月1日から2023年5月31日までの3つの四半期で、主要業務の収入は17.5%増の4358億円だったが、営業利益と「経常利益」はそれぞれ8.7%、15.5%下落した。
この状況は、無印良品のブランドが同社の打ち出した新しいコンセプトと新業態によって、消費者からの共感を勝ち得ているわけではないことを示している。同じく日本から参入したユニクロと比べると、無印良品は値段が高いうえに、長年にわたって堅持してきたシンプルで自然なスタイルでは日に日に変化する市場のニーズを満たすことは難しい。それに加えて、同様のタイプのブランド間における競争も熾烈になっており、それによって無印良品も今やモデルチェンジの苦境に陥っている。
パナソニックが期待を寄せる中国のクリーンエネルギー市場
8月26日、2023世界クリーンエネルギー設備大会のメインフォーラムで、松下電器(中国)有限公司の趙炳弟社長は、「水素エネルギーは今後必ずより大きな役割を果たし、中国による水素エネルギーを利用したエネルギー転換には、非常に巨大な潜在力がある」と述べた。今回の大会で、パナソニックホールディングスは「2023世界クリーンエネルギー設備産業・世界上位100社」の称号を受け、同社の本間哲朗副社長は、「2023世界クリーンエネルギー設備産業・世界十大パーソン・オブ・ザ・イヤー」の栄誉を受けた。
中国は「3060」ダブルカーボン目標を掲げており、パナソニックは中国のエコ発展に対する固い決意が、同社に大きな発展の余地をもたらすと見ている。この数年間、パナソニックは中国で環境事業を積極的に展開しており、「エコ・スマート製造で未来を創出」のスローガンを打ち出し、ゼロカーボン工場や水素燃料電池、新エネルギー自動車部品などの分野で中国のダブルカーボン活動に積極的に参加している。
新エネルギー分野では、2023年2月、パナソニックは無錫電池工場で冷房・暖房・電力に水素エネルギーを供給する試験プロジェクトを開始した。広東省佛山市での全国初の「水素エネルギーをすべての家庭へ」スマートエネルギーモデルコミュニティプロジェクトでは、パナソニックの最新のENE-Farm 700W燃料電池が導入され、2022年10月に運用が開始された。
ゼロカーボン工場の設立の面で、パナソニックは2024年に中国におけるゼロカーボン工場を16カ所にまで拡大し、最終的に2030年に中国にあるすべての製造拠点における実質的な排出をゼロにすることを目標にしている。新エネルギー自動車の分野で、同社は中国国内にある8カ所の新エネルギー自動車の重要部品工場の発展を積極的に推進することを希望している。
ホンダ傘下の部品メーカーが中国に電池ケース工場を新設
ホンダ傘下の部品メーカー・J-MAXは中国で新たに電池ケースの工場を設立し、寧徳時代に部品を供給する。同社の計画によると、年内に着工し、2025年に生産に入る見込みだ。既存工場の拡張も含めて、投資額は80億円に上り、毎月20~25万台分の自動車用電池の部品を寧徳時代に供給する計画だ。同時に、同社はさらに広州市の既存工場に19億円投資して、プレス生産ラインを拡張する。2つの基地における月ごとの生産能力を合計すると、現在の40倍に達する見通しであり、40~50万台の自動車の需要を満たすことができる。