『必読』ダイジェスト 中国美国商会(AmCham China)が4月26日に公表した最新の調査によると、中国市場での売上に対する在中米国企業の予想は好転しているとはいえ、利益の見通しにはまだ観察すべき余地がある。
中国美国商会によるこの調査は、4月18日から20日まで実施され、3月初めに公表された2023年度の『中国ビジネス環境調査報告』のその後の事後評価であり、ポストコロナにおける米国企業の最新状況を理解することを目的としている。
前回の調査と比較して、今後2年間における在中米企業の売上の見通しはより楽観視できるものだ。59%の会員企業は中国国内市場の成長に対して楽観的な見方を示しており、前回の調査と比べて17ポイントも大幅に向上した。中国における利益増加の見通しに対して、楽観的な見方を示している会員企業も若干増加し、4ポイント増の37%に達した。
中国美国商会のマイケル・ハート(Michael Hart)代表は調査報告発表会で、会員企業は経済状況が好転しているが、回復が持続するか否かはまだ観察中であるという認識を示し、「これらの企業は、売上こそ回復したが、利益回復の速度はそれほど顕著ではない」と語っている。
中米関係に対する在中米国企業の不安は最近になって上昇傾向にある。前回の調査では、会員企業の73%が中米関係について悲観的な見方を示したが、今回の調査では、この比率が87%まで上昇した。
今回の調査によると、調査対象企業の43%が、自社の世界又は地区の幹部が2022年12月以降に中国を訪れたことがあり、さらに同企業の31%が今後数カ月以内に、自社の世界又は地区の幹部が中国を訪問する予定だという。
ハート代表によると、一部の米国企業では幹部による訪中が非常に少ないが、幹部が3年間訪中をしていない状況下で、中国を視察する必要性が顕著になっているという。「今後の米国企業による中国投資の見通しを観察する上で、非常に重要な指標となるのは幹部が中国を訪問するかどうかだ。自社の幹部が訪中している企業が調査対象企業の43%に上るという状況は、少なくとも米国企業が依然として中国市場を重視していることを示している」
今回の調査結果はさらに、在中米国企業の73%が中国からのサプライチェーンの移転を考えていない(前回の調査と比べてわずか1ポイント下がった)という意思を示しており、他の23%が中国からのサプライチェーンの移転を検討、もしくは開始したと回答した。調査対象企業の44%が、企業が移転を検討する主要な要素としてリスク管理を挙げた。
しかし、調査対象企業の27%は他の国への投資を優先的に検討しているという考えを示し、前回の調査と比べて21ポイントも上昇した。
前回の調査と同様に、「中米関係の緊張」は依然として在中米国企業にとって2023年における最大の試練となっており、「新型コロナウイルスの予防措置」や「人件費の高騰」はもはや試練のトップ5にも入っていない。ハート代表は、「多くの要素により中国は依然として競争力を有しているが、巨大な労働力市場や安い人件費、労働力の熟練度、港から開発区までの全体的なエコシステムだけでなく、高い実行力も含まれ、それも同様に重要なものだ」と語っている。
今回の調査では、中国の「政策環境」、「現地保護主義」も2023年の在中経営における五大試練に入ると見なされている。ハート代表は、「一部の米国企業が前回調査時のリスク管理の考え方を、候補となる国を具体的に選んでサプライチェーンのリスクを下げるという構想にまで発展させている」と語った。
中国米国商会が同日に発表した第25本目の年度『在中国米国企業白書』によると、中米双方の関係に対するビジネス界の確信が不十分であることが、中国投資およびリスク全体に対する米国企業の懸念を助長しているという。中国政府が強調する「自給自足」が外資企業にさらなる不確実性をもたらしている。
新型コロナウイルスの流行以降、外資企業にとって大きな試練となっているのは人材の流動性が乏しいことだ。今回の調査では、業務のために外国籍職員が来(帰)中することに対して、会員企業の51%が積極的な見方を持っていることが分かった。同企業の68%が、中米関係の緊張又は他の地政学的リスクの要素こそ、外国籍職員が業務のために来(帰)中を検討する際に、最優先に考慮する問題だとしており、同企業の44%が国際便の便数不足やフライトの価格が高すぎることを問題として挙げている。
ハート代表は、自身が在中米国大使館や在米中国大使館から知り得た情報によるものとして、「近ごろビジネス関係者や学生、旅行客による旅行や訪問の需要がかつてないほどの規模になっており、3年間の新型コロナウイルスの流行以降、それまで抑えられていた需要は非常に大きい」と語った。現在、中米間のフライトは毎週約12便で、コロナ禍前の毎週400便には程遠い状況だ。
中国米国商会は両国間のフライトの増便やビザの手続きをより簡略化することを呼び掛けている。「旅行と当面の交流は非常に重要だ」とハート代表は語る。ハート代表は間もなく中国米国商会の代表団を率いてワシントンを訪れ、米国の官僚に中国における米国企業の運営に関する実情を伝える予定だ。「少なくとも3年は中国を訪れていない米国政府の関係者が中国側の役人と会談することはより重要かもしれず、両国の世論において、実情にそぐわない情報や捻じ曲げられた情報は非常に多い。人と人との間の直接的な交流は、実際の状況を理解するという面においてより建設的だ」
(『日系企業リーダー必読』2023年5月5日記事からダイジェスト)