研究院オリジナル 2023年5月前半、中国メディアの報道や評論は主に以下の中日経済関係のトピックおよび日系企業について多く取り上げた。

日立建機は中国を製品輸出拠点に転換

今年3月、日立建機の新社長に就任した先崎正文氏は正式に職務に就く前に、日立建機が間もなく開始する重大な戦略調整を念頭に置いて、最初の訪問先として上海を選んだ。4月、「日立建機中国事業発展メディアコミュニケーション会」で、日立建機販売(中国)代表取缔役の程暁明氏は自社の中国市場における最新の戦略配置について詳しく説明し、最新の中国市場の位置付けは世界的なイノベーション、開発そして生産センターだという。

現在、中国国内の建設機械市場の需要が低迷しているとはいえ、中国は部品調達の利便性や人件費の面で優位性がある。それゆえ、日立建機のような一部の日系建設機械メーカーは中国の余剰生産能力を利用してサプライチェーンを再構築し始めており、中国を東南アジアおよび欧州輸出向けの生産拠点に転換しようとしている。

2022年11月から、日立建機は直輸入製品と安徽省合肥市で生産されている中国国産製品を一つの販売チャネルに統合し、日立建機販売(中国)有限公司を設立した。現在、日立建機合肥工場で生産された製品はすでに欧州や東南アジアに輸出されており、公開データによると、2022年度に同社は製品の半分以上を中国から東南アジア、欧州などの地区に輸出している。欧州向けに輸出されている中小モデルおよびリース用の汎用モデルなどの製品は以前、土浦工場で主に生産されていたが、現在では一部の生産がすでに合肥工場に移転されている。製品の構造から見ると、日本で生産されている120トン以上の大型装置を除いて、90トンクラス以下の製品はみな中国で生産されている。

日立建機は、産業チェーンの優位性以外に中国が有するさらにもう一つの長所として、中国の顧客が比較的に寛容なことを挙げている。顧客ニーズの変化は時代と市場の発展に伴うものであり、中国の顧客は企業の技術イノベーションや飛躍的な発展を好意的に受け入れる姿勢を示しており、この状況はイノベーションの発展にとって非常に有利だ。

オリンパスの「中国戦略」がもたらした上々の成果

2023年2月、オリンパスは江蘇省蘇州工業団地に自社の中国医療機器生産開発拠点を設立することを決定した。同拠点はオリンパスにとって中国で初めて設立する医療機器製品の生産開発基地であり、同時に主力製品を日本以外の地区で生産するという点でも初めての試みだ。このプロジェクトには初期投資として総額約6000万ドルが投じられ、将来的に製造、開発、調達および販売、ソリューションを一体化したオリンパスの総合的な世界戦略基地になる見込みだ。同計画はオリンパスが「中国戦略」を展開する上での重要な里程標と見なされている。

1987年に、オリンパスは中国に事務所を開設し、中国業務を正式にスタートした。現在、同社は北京に中国エリア本部を設立し、上海に輸入貿易および販売会社を構え、上海、広州に修理工場を設け、大連にシェアリングサービスセンターを有し、全国32の省市に子会社を43社開設しており、さらに上海、北京、広州など複数の地区に医師研修センターを持っている。2020年、中国市場によりしっかりと腰を据えるために、オリンパスグループは「中国戦略」を策定し、開発、調達、生産、販売、サービスなどを一体化した総合的な戦略基地を中国に設立することを計画している。

これまで、オリンパスの「中国戦略」は喜ばしい成果を上げている。中国市場の売上額が同社グループの世界市場売上額に占める比率は14%に達している。2021会計年度、内視鏡など医療部門の中国における売上高は約1009億円で、日本(1108億円)に接近しており、中国国内市場における内視鏡のシェアはトップだ。

オリンパスが中国戦略を全力で推進する上での動力源は、中国における高齢化の加速や何物も阻むことができない医療サービスにおけるアップグレードのペースにある。例えば、2019年に中国国家衛生健康委員会は県級医院における総合的な能力を全面的に引き上げるための活動案を発表し、7900カ所の二級医院における手術設備の配置を大幅に向上させることを要求したが、この要求は巨大な市場のパイであり、2023年第一四半期、中国の内視鏡市場は50%以上の成長を記録した。

ソニーが中国で見出した「バーチャルプロダクション」

2023年3月9日、ソニー(中国)が上海愚見観池科技有限公司と共同で設けたデジタル撮影スタジオが開幕した。同スタジオはソニーが中国で設けた初のバーチャルプロダクションスタジオだ。現在、中国は米国に次いで世界第2位の撮影制作市場に成長しており、ソニーは中国で勢いよく増加しているコマーシャルやショートビデオなどの市場ニーズに着目した。

しかし、市場が注目されることによりライバル他社が続々と市場に押し寄せている。例えば華策集団は昨年2月、松江のLEDデジタルバーチャルスタジオを外部に展示した。愛奇芸は昨年8月、横店に2400平米のバーチャル撮影スタジオを設け、優酷は北京、寧波、厦門など複数の都市にデジタルスタジオを設置しており、各社ともに自社が設けたLEDディスプレイを「国内最大」、「最高画質」と宣伝しているが、これらの撮影スタジオが最終的にどれほどのコンテンツの提供をサポートできるのかは依然として不透明だ。NeXT SCENEは最近『中国バーチャル制作業界市場の調査研究の成果報告』を発表したが、現在中国国内のバーチャル撮影プロダクション市場業界では、業界における見積価格の不透明性や技術を理解している制作チームの確保の困難、プランにおけるニーズの不明確性などが入り乱れている

業界は、ソニーがこの分野で相対的な優位性を有していると見ており、ソニーはこれより前に、東京のバーチャル撮影プロダクション市場スタジオ「清澄白河BASE」で使用されている技術セットを上海に移したが、より重要な点はその背後にソニーグループの強大なアミューズメント産業リソースによるサポートがあることだ。

日系企業と中国の漢方企業が提携して日本市場を開拓

日本の漢方薬が一部の中国の民衆に認められつつある中で、日系企業と中国の漢方企業が提携して日本市場を開拓するというビジネス戦略を打ち出した。近ごろ、イスクラ産業株式会社の陳志清社長の一行が中国津薬達仁堂集団の仁堂製薬工場を訪れ、双方は「星火天津感冒薬」を共同で試作して日本市場に投入することを決めた。イスクラ産業株式会社と中国の漢方界は早い時期から複数の分野で提携しており、イスクラ産業は東京に漢方の知識を普及させることを目的とした「イスクラ中医薬学院」を開設し、クラスを担当する教師の大半は中国の漢方界の人材だ。同社はさらに北京に「星火北京漢方研修センター」を設立し、日本の学生が定期的に中国で漢方の講習を受けられるように取り決めている。同社はさらに日本で漢方研究会を設け、会員が華西医科大学の製薬室や天津楽仁堂製薬所など中国の生産現場を見学して学べるよう定期的に機会を設けている。

大手企業を含む多くの日系企業が購読している『必読』

『日系企業リーダー必読』は中国における日系企業向けの日本語研究レポートであり、中国の状況に対する日系企業の管理職の需要を満たすことを目指し、中日関係の情勢、中国政策の動向、中国経済の行き先、中国市場でのチャンス、中国における多国籍企業経営などの分野で発生した重大な事件、現状や問題について深く分析を行うものであります。毎月の5日と20日に発刊し、報告ごとの文字数は約15,000字です。

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