研究院オリジナル 2023年3月前半、中国メディアの報道や評論は以下の日本企業および出来事を多く取り上げた。
中国で自動車の激しい価格戦争が勃発、日本車メーカーは苦戦
今年1月にテスラが先頭を切って大幅な値下げを断行したことにより、中国市場で激しい自動車の価格戦争の火ぶたが切って落とされ、3月までに、新エネルギー自動車から従来型の燃料自動車まで、多くのブランドや車種が価格戦争に巻き込まれていった。特に東風シトロエンの車種の値下げ幅が6割引相当の9万元に達したことは、世論の注目の的となった。
しかし、その後にこれを大きく上回ったのは、ネットで伝えられた日本車メーカーによる「1台買えば、もう1台進呈」というプロモーションだ。トヨタのディーラーはbZ4Xを買えば、ヴィオスを進呈し、広汽ホンダはブリーズを購入したら、フィットをプレゼントし、東風ニッサンはムラーノを買うと、シルフィがもらえるというキャンペーンが展開された。後にこれらのキャンペーンは単なる「期間および数量限定」の販促手段だったことが明らかになったが、多くのメディアが日本車メーカーも価格戦争に巻き込まれるのを回避できないという認識を示した。近頃、広汽ホンダは広州エリアを対象に、3月に全シリーズの車種の購入優遇キャンペーンを展開し、割引最高額は8万元に達した。
このような価格戦争の背後にある主な原因は、新エネルギー自動車が燃料自動車を代替するペースが加速するにつれて、燃料自動車の在庫圧力がますます大きくなっているため、燃料自動車の販売促進がより強化されていることにある。このことは依然として燃料自動車が主流の日本車メーカーにとって、大きなショックをもたらしている。そして、価格戦争は新エネルギー自動車市場にも飛び火しており、テスラとBYDの最大手2社が続々と値下げし、日本の新エネルギー自動車はまだ出だしの段階で厳しい市場競争に直面することになり、一汽トヨタが熱い期待を寄せる純電動自動車のbZ4Xは3月に入ってすぐに6万元まで値下げせざるを得なくなった。日本の自動車メーカーが中国の自動車市場で送る日々がますます厳しいものになるのは想像に難くない。
早くて、新しくて、凄まじい!中国の消費回復ボーナスを争奪するユニクロ
2023年に中国の新型コロナウイルスの流行が落ち着き、消費が回復し出すと、ユニクロは速やかに新たな拡大に着手し、毎年80~100店舗の新規出店を計画している。今年は地方の三・四級都市で新規開店をした他に、ユニクロはさらに一・二級都市でも旗艦店の改装または改修を含む既存店舗のリニューアルを実施した。現在、ユニクロは中国の200以上の都市で900店を超える直営店を有し、数億に上る消費者を抱える。
従来の開店以外に、ユニクロはさらにオンライン販売モデルの刷新に特に力を入れている。3月3日、ユニクロは初めてTモールと提携して、2023年春夏新商品発表会をタオバオのアプリでライブ中継し、Tモールは同時に新春の新商品を初めて発売し、またオフラインの上海・准海中路にあるグローバル旗艦店の店舗とコラボして、展示会の見物、ウインドーショッピングと買い物をタイアップさせて、消費体験を大きく向上させた。このライブでは100万人規模の聴衆を獲得し、ネット上での転載とレコメンドを合わせるとアクセス数は10億回以上に達した。
ある情報によると、今年に入ってからユニクロの来客者数データの増加に大幅な伸びが見られるという。中国のメディア界は、複雑で変化が多い中国市場に、ユニクロは完全に対応しているだけでなく、市場イノベーションの牽引者となっているという認識を示した。
テレビ製造世界一の中国で、なぜソニーは依然として人気があるのか?
中国国内のテレビメーカーは、かつて中国市場を牛耳っていた日本のテレビを王座から引きずり下ろし、これまでずっとメイドインチャイナ台頭の代表的存在と見なされてきた。現在、中国のテレビ製造能力は世界一であり、技術も進歩し続けているが、テレビのミドル・ハイエンド市場で、中国産テレビは依然としてソニーに太刀打ちできず、例えば昨年、ソニーのX90Kは中国のミドル・ハイエンド市場で主力モデルとなった。
そのわけは主にソニーの技術や品質が飛び抜けているからだ。中国産のハイエンドテレビと比べて、ソニーのX90Kは、HDRにおける表現がより安定しており、画面もより自然だ。この差は主にチップの違いによるものであり、ソニーのX90Kに搭載されているクアッドコアのA73 1.8GHzプロセッサは、中国産テレビに搭載されているA73 1.3GHzよりも先進的で、画質調整の面では、さらにソニーの高性能のXR認識チップが搭載されている。この他にソニーはさらにPS5ゲームエコシステムを有し、PSのプレイヤーなら当然、ソニーのテレビを真っ先に選ぶことだろう。西側諸国による中国に対するチップ技術の包囲網が日増しに深刻になっており、またゲームのエコシステムに競争障壁が形成されているため、ソニーは中国のミドル・ハイエンドテレビ市場で今後も長期的に優位な地位を保持することだろう。
中国の不動産市場は下落しているが、日立エレベーターは依然として中国市場を有望視
エレベーターと不動産の二つの市場は密接に関係している。2021年下半期より、中国不動産の主な指標は急速に低下し、エレベーターのニーズも大幅に減少した。しかし、日立エレベーターは依然として中国市場を有望視している。なぜなら、市場の成長以外に、中国のコミュニティの改修、既存エレベーターと新しいエレベーターの入れ替え、古い住宅に対するエレベーターの追加設置、エレベーターのメンテナンスサービスなど「市場の成長」に伴うニーズの規模が巨大であり、成長も加速しているからだ。
中国には約1000万台のエレベーターが稼働中であり、エレベーターの保有量は世界の40%を占め、20年以上運用している多くのエレベーターが続々と交換時期に入っている。このゆえに、巨大なストック市場が創出されている。新旧交換の場合、決して既存のエレベーターブランドに従って製品を選ぶ必要がないため、日立エレベーターが視野に入れているのは、長年にわたって製造してきた中国国内にある約100万台の自社製エレベーターだけでなく、他社ブランドの既存エレベーターの交換もターゲット市場に選定している。
近年、日立エレベーターの新旧交換業務は非常に速いスピードで増加している。4月1日より、日立エレベーター(中国)は全面的に台湾の永大電梯(中国)公司の業務を引き継ぐが、このことは中国における日立エレベーターのさらなる拡大につながる行動と見なされている。
住友が中国の自動運転技術企業に投資
しばらく前に、住友商事傘下の投資会社であるSCEA(Sumitomo Corporation Equity Asia Limited)は中国の商用車自動運転企業の卡睿智行科技(以下、Corage)に戦略的投資を行い、さらに日本の別の投資会社であるPKSHA SPARX Algorithm Fundも続いて投資した。現在、Corageは貨物輸送の専用路線による都市間物流市場を対象にしたL4自動運転を専門とする企業として、広東や重慶など多数の地区でL4新エネルギー商用車のプロジェクト運営を展開している。
住友商事の中国企業で新事業開発部総経理を務める福岡徹氏は、中国の自動運転業界でも、特に物流用商用車の自動運転技術は急速に進化しており、今後の発展の余地にも大いに期待が持てるという考えを示した。住友とCorageの業務提携は、物流を起点として、住友商事グループによる中国および世界の新事業の開発をサポートすることだろう。
Corageの創業者兼CEOの佟顕橋氏は、住友商事からの戦略的投資により、自社は中国ひいては中国以外でのより広い物流シーンに深くかかわるチャンスを得たと述べた。業界内では、佟顕橋氏が言及した「中国以外の市場」で、まず目を向けているのは日本に違いないという見方がある。