研究院オリジナル 2023年1月下旬、日系企業およびその出来事に関して、中国メディアの報道とコメントで頻繁に取り上げられたのは主に以下の点だ。
自動車業界の見方としてトヨタの佐藤新社長が中国市場を渡り歩くのは困難
2023年4月1日より、14年間にわたってトヨタ自動車を率いてきた豊田章男社長が正式に社長(代表取締役)兼CEOを退任し、佐藤恒治氏が新社長として後任を務める。トヨタのトップ交代は、世界の自動車産業における電動化のペースに速やかに追いつくためだが、中国メディアの報道によると、中国自動車業界の多くの関係者は同社のトップ交代に期待を寄せていない。
その理由として、まず佐藤氏にはこれまでに自社ブランドの電動化業務の十分な経験がないため、トヨタ自動車を短期間内で首尾よく電動化への道に切り替えられるのか、いささか疑問であることだ。そして佐藤氏の経営能力にも疑わしいところがある。昨年、佐藤氏が担うレクサスは中国市場での販売台数が19%も大幅に下がり、17年間続いた同車種の販売台数増加記録がついに途絶えた。レクサスは新エネルギー自動車市場でも惨敗だった。もう一つの点は、新エネルギー自動車の分野でトヨタと中国企業の差がますます大きくなっており、2022年末にトヨタは中国でbZシリーズの電動自動車を2モデルリリースしたが、市場での販売台数や消費者からのフィードバックから見ると、振るわなかった。bZ4Xの月間販売台数はわずか三ケタだったのに対し、比亜迪(BYD)などの中国の新エネルギー自動車ブランドは単一モデルの月間販売台数が軽く万を超えている。この他に従来型燃料自動車の分野で、昨年トヨタはこの10年間で初めて中国市場での販売台数に陰りが見られた。それゆえ、佐藤氏が今後、中国市場を渡り歩くのはますます困難になる。
「中国のバフェット」段永平氏が語る日系企業の問題
步步高グループの段永平代表取締役は、深い洞察力を持つ企業経営者および投資家として知られており、「中国のバフェット」という異名を持つ。近ごろ段氏は日系企業に関して以下のコメントを発表した。「一般的に、従業員たちが上役たちの前でビクビクしている企業は、時が経つうちに問題が生じる。なぜならこのような企業では職員たちの多くが何も自分で担おうとはせず、全ての決定を上司に委ねたいと思うからであり、その結果として効率も下がる。こうした企業の商品が非常に注目されるとしても、社長が全ての大きな業務を確実に顧みられるのでない限り、遅かれ早かれ問題が発生する。私が思うに、日系企業がこの数年間にいくつかの業界で抱えている問題の原因はまさにここにある」
ポカリスエットは中国市場における長期主義者の成功例
2022年末、アイソトニックドリンクが中国市場で突然ブレイクし、各地のスーパーでアイソトニックドリンクの棚が常に空になった。京東やタオバオなどのEコマースプラットフォームでは、大半のアイソトニックドリンクが一時的に欠品又は入荷待ちになった。このような盛り上がりが見られる中で、大塚製薬が販売するポカリスエットの売り上げは中国の元気森林に次ぐものであり、業界二位となった。実のところ、同社はアイソトニックドリンク開発企業の一つであり、早くも2002年に中国初のポカリスエットの工場が天津に設けられたが、中国におけるアイソトニックドリンクの市場はこれまでずっと非常に小さいままだった。機が熟するのを待つこと20年、ポカリスエットはついに市場でブレイクする瞬間を迎えた。
中国メディアは、日系企業が特定の市場や戦略を長期的に堅持することに対して敬服の念に堪えないという見方を示しており、アイソトニックドリンクのポカリスエットだけでなく、さらにサントリーのウーロン茶や乳酸菌飲料のヤクルトも中国市場での成功例だ。そして、これらの企業の控えめで辛抱強いスタイルにも学ぶ価値がある。コカ・コーラやペプシコーラといった米国飲料ブランドの辺りを埋め尽くすかのような広告の嵐と比べて、日本の飲料会社はまるで存在しないかのように静かであるため、これらの日系企業は中国企業と誤解されることも多々あり、それぞれのニッチな分野でも人々の心に深く入りこんでいる。例えば、ヤクルトは長年にわたってずっと国内の乳酸菌飲料市場でトップに立っている。
中国企業が特許侵害で日本の電子材料大手を提訴
近ごろ、江蘇和成顕示科技有限公司(以下、「和成顕示」に省略)は中国にあるDICの子会社2社を特許侵害で提訴したが、同社の特許は液晶表示のPSA、PSVAなどの技術に関連するものであり、賠償額は6000万元に達する見込みだ。同案件は南京市中級人民法院で提訴されている。世界の液晶材料市場は、長きにわたってドイツのメルクや日本のJNC、DICの三大グローバル大手の独占状態にあったが、中国企業による追い上げの速度は加速し続けており、その中でも和成顕示はいち早く液晶技術のグローバル大手による独占を打ち破った企業と見なされており、国内の大きなパネル工場の重要なサプライヤーになっている。
中米半導体摩擦が日本の半導体装置企業にもたらす災難
現在、日本政府は中国の半導体発展に制裁を加える米国側の陣営に入ることを検討しているが、中国メディアは日本の半導体装置企業にとって、この出来事はまさに災難であるという見方を示している。中国が主要市場である日本の半導体装置大手は少なくない。2019年、米国がファーウェイと米国企業による通常貿易に制限をかけたため、ファーウェイによる日系企業からの部品購入額は1兆1千億円に達し、これにより日本が米国に取って代わり、同社にとって最大の部品調達地になった。しかし、2020年までに、ファーウェイのチップ購入を封鎖する米国の手が日系企業にまで伸びたことにより、日本におけるファーウェイの購入量は20%下落した。日本半導体製造装置協会(SEAJ)が近ごろ発表した報告では、2023年度の販売予想額は前年比5.0%減に下方修正されており、2019年以降初の縮小になる可能性がある。
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