研究院オリジナル ホンダ中国は2022年5月の最新販売台数を公表したが、同社の中国市場における自動車の販売台数は8万9000台で、昨年同期と比べると約3割減であり、同社は3カ月連続で30%以上の減少となった。ホンダはトヨタなど他の日系自動車メーカーと同様、電動自動車の発展において取り残されており、ホンダが将来的に直面する市場競争の形勢は楽観視できないものだ。
しかし、多くの人々はまだ気づいていないが、ホンダは別の分野で大きな強みを持っている。ホンダは世界最大のオートバイメーカーであり、中国市場では、ホンダのオートバイは王者のような存在であり、そして今まさに中国のオートバイ市場に復活の波が押し寄せている。
中国オートバイ市場の猛烈な復活
意外なことに、中国が世界最大の自動車市場になったときに、あたかも早々に孤児のようになってしまったオートバイが静かに再ブレイクしようとしていた。その主な要因は中国の中産階級が今、急速に拡大していることにあり、オートバイには強烈な自由、情熱的な文化要素があり、中産階級が訴える個性と自己の心理的ニーズに合致しているため、オートバイはもはや足代わりの乗り物ではなく、暮らしやファッションおよび精神文化の象徴となっている。ティックトックでは、オートバイ関連のビデオの再生回数が540億回以上に達している。
中国公安部のデータによると、2021年のオートバイの新規登録台数は1005万台で、前年比21.67%増だった。今年第1四半期に新規登録されたオートバイの台数は271万台で、前年比33%増だった。一、二級都市では、非常に人気がある一部のオートバイは入手困難となっている。例えば、ホンダのフォルツァ350は納品まで1年待ちだという。
同時に、30年以上続いてきた「オートバイの使用制限・使用禁止」政策も緩和の動きが出ており、近年においては交通部が継続的にオートバイの運転規範を緩和し、高速道路におけるオートバイの走行が許可され、西安や済南、青島、廊坊など一部の都市ではオートバイの使用制限・禁止がすでに解除されている。
中国オートバイ商会のデータによると、2021年に中国におけるオートバイの販売台数は再び2000万台にまで回復し、2014年以降最高の水準に達している。スタティスタ(Statista)のデータによると、中国は世界最大のオートバイ市場であり、2021年に中国のオートバイ業界の規模は200億ドルを超えており、世界におけるオートバイ業界の市場規模の約20%を占めている。
この盛り上がっている市場に対して、チャンスをうかがっているのはホンダだけではない。米国の有名オートバイブランドのハーレーは2021年12月に中国の銭江モーターと合弁会社を設立しており、中国の国内自動車メーカーもオートバイ市場の新たなライバルとなっている。2021年8月、長城自動車がオートバイの分野に進出し、河北省保定市に年間生産1万台のオートバイ工場を建設した。2021年6月、柳州五菱自動車工業有限公司にオートバイ事業部が設立され、オートバイ市場への参入を正式に宣言した。
ガソリンオートバイ分野で王者の地位にあるホンダ
しかし、欧米の昔ながらのライバルにせよ、中国国内メーカーにせよ、ホンダにとってはどれも相手にならない。
なぜなら、まずホンダは100年にも及ぶ技術の蓄積と特許で形成された城壁を有し、ライバルがその高い壁を超えるのは至難だ。中国の産業研究者は、国産自動車と日本の自動車の差が追いつける程度のものであるとすれば、国産オートバイと日本のオートバイの差はまるで天と地の差であり、それを追い越すのは永遠に無理かもしれないと悲観的な見方を示した。
中国市場に対してホンダは常に防備性の高い技術施策をとってきた。中国市場において、ホンダは3つの販売体系を維持してきた。一つ目は、新本、五本という二大販売チャネルであり、二つ目は本田中排(HondaWing)で、三つ目は本田大貿(Honda Dream Wing)だ。排気量が200㏄以下の車両の場合、ホンダは中国との合弁工場で生産を行うが、組み立てをするのはたいてい日系企業だ。中排の製品は二つの合弁工場で生産されるが、ホンダが基幹技術を管理しており、電子制御燃料噴射システムやエンジンから多くの精密部品まで全てを同社が供給し、中国国内の合弁工場が担うのは、ほぼ組み立てだけだ。技術が最も組み込まれているホンダの500㏄以上の製品は正規輸入業者によって輸入され、多くの関税を課されるとしても、中国の組み立て産業チェーンとは関係を有さない。
しかし昨年から、ホンダが突然戦略的転換を図りだした。その一つは、ホンダが成長が最も早く、利益が最も高いミドル・ハイエンド市場に焦点を合わせ、急に業務拡大に乗り出したことだ。2021年、ホンダは一気に多くの中排気量の車種を中国に持ち込んで価格戦を仕掛け、販売価格を3万元から4万元台にまで大幅に値下げした。ひとたび売り出すと、市場ではすぐに在庫がなくなり、中国の国産オートバイに対して非常に強い抑制力となっている。もう一つは、ホンダの中排気量の車種が中国で生産されるようになり、日系のオートバイにおいて初めて国産化された中排気量のブランドとなったことだ。
ある分析によると、自動車と同様に、オートバイの電動化も今後の主流になることをホンダもすでに意識している。ホンダは2040年にガソリンオートバイの販売を停止するとすでに発表しており、2024年に電動オートバイをリリースする予定だ。ホンダはガソリンオートバイで技術の大きな蓄積を有しているが、その価値を電動オートバイに発揮しないなら、遠くない将来にそれらの技術の蓄積は歴史的遺物と化してしまう。ホンダは中国オートバイ市場に対して、2021年から2030年までの10年間が最後のチャンスになると判断している。それゆえ、ホンダはガソリンオートバイで蓄積した価値を最大限に発揮するために奮闘するだろう。
ホンダが次に中国における中大排気量オートバイ市場での地位を強化し続けることが予想される。バイク専門メディア「YOUNG MACHINE」は6月25日に、ホンダが中排気量の四気筒エンジン車種を開発中であり、排気量は500㏄前後と見られ、中国市場を対象に開発しており、価格面でも申し分ないと報じた。
電動オートバイに満ちる今後の不確定要素
しかし、未来の電動オートバイの分野で、ホンダがガソリンオートバイのような王者の地位を獲得できるかどうかは疑わしい。
なぜなら、まずホンダは電動バイクの開発において明らかに競争相手に後れを取っているからだ。米国のハーレーは同社初の電動オートバイ「LiveWire」を2019年に販売したが、今年5月には二台目の電動オートバイ「LiveWire Del Mar」をリリースしている。6月に、ドイツのボルボは二台目の量産型純電動オートバイであるフルモデルチェンジされたBMW CE 04の中国初公開および先行予約販売を実施した。中国企業はより早くアクションを起こしており、電動オートバイを大逆転のチャンスと捉えているが、これに対してホンダは2024年になってようやく電動オートバイをリリースする予定という有様だ。
次に技術と産業の方面で、今は各社の電動オートバイが競争において横並びの状態にあるが、中国企業は産業化の面でより経験がある。例えば、達芬騎の純電動オートバイDC100はフル充電時の連続走行距離が400キロに達している。
ホンダのオートバイの将来は決して安泰ではない。