『必読』ダイジェスト 2022年の年初、多くの西側メディアは次のように報じた。韓国のチップメーカーがワシントンでロビー活動を強化しているのは、緊迫している米中関係に対応したものであり、合わせて鍵となる輸出許可証を手に入れ、貿易上の規制を受けている中国企業に製品提供の面で便宜を図ろうとしているからだ。

韓国企業のサムスン、SK、LGはこうしたビッグビジネスを秘めた業務を開拓中である。同時にこれらの企業はワシントン側の戦略的に敏感な製品(例えば、半導体や電気自動車用電池)の米国内生産という要求に屈し、米国でのグリーンフィールド投資を選択した。これらの企業は同時に地理的な、マネジメント上の便を利用して、米国のハイレベルに対するロビー活動によって、中国に対するチップ輸出の拡大実現を希望している。

現在、バイデン政権は大規模な「産業の国内回帰」計画を推進中であり、そのために巨額のファンド設立による奨励、行届いた総合的なサービスとインフラ整備を実施している。韓国、台湾を含む大手チップメーカーは昨年、末相次いで米国に対する100億ドル規模のグリーンフィールド投資を宣言しているが、こうした現象は世界中のチップメーカーの対米投資集中を加速させている。米国本土の投資市場の優位性と米国の対外投資の制度的なコントロールはますます活発化し、こうした条件によって、米国政府は全世界のチップ産業に対する影響力をますます強化させている。

米国商務省の規定に基づいて、2020年11月9日から2021年4月までに、中国企業の華為技術(ファーウエイ)、中芯国際集成電路製造有限公司(SMIC)に対する製品輸出許可総額は1030億ドルを上回った。こうしたクオータ方式の貿易は一方では米国が中国のハイエンドメーカーに対するコントロールを実現したが、また一方では「仲介業」取引を通じることによって、中国企業はコスト増を強いられている。

中国側は当然、いつまでも受け身の立場にあることを望まず、対外買収が問題を解決するための「クイック攻撃」――少額投資で、短期間に収益を上げる――の選択となるが、この道にも尋常ではない困難が伴う。2021年末、中国のプライベート・エクティー・ファンド(PEファンド)、智路資本(ワイズロード・キャピタル)が韓国のマグナチップ・セミコンダクターを買収する計画は米国政府の干渉によって、成就しなかった。両社の合併協議は昨年3月に合意に達したが、米国の対米外国投資委員会(CFIUS)は同年6月、取引の棚上げを要求した。また同年8月、米財務省は一方的に、「この買収案は米国の“国家安全に対するリスク”を構成する」と認定した。両社は数カ月にわたって努力を重ねたが、CFIUSの承認を得られる通しが立たないとして、合併協議を中止せざるを得なかった。

上述の件は次のような意味を持っている。中国企業が対外的に企業買収を通じて先進的なチップ製造技術を手に入れるパイプを作ろうとすると、米国の規制を受け、ブロックされる。それならば、仲介業者のパイプを通じて購入することで、不可欠なチップを手に入れるのが唯一の手立てになる。しかし、それでは中国自身のチップ製造技術の発展の遅れを招き、国際的な「パイプ業者」あるいは「仲介業者」への依存により、中国の企業と消費者はさらに高いコストを支払わざるを得なくなる。

米国政府は世界の主要なチップメーカーとの取引によって、米国における「再工業化」の道で、多くのブレイクスルーを実現している。この過程で、米国政府は多国籍企業と共謀して、チップの輸出制限を通じて、中国のチップ産業チェーンを、米国に対して基本的に「透明」化させようとしているのかもしれない。また韓国企業の中国市場に対する渇望も、多国籍企業をコントロールし、影響を与える「レバレッジ(てこ)」をさらに米国政府に持たせることになるのかもしれない。こうした一連の複雑なゲームの過程で、中国の政府、企業はその中に飛び込んで局面に影響を与える「プレイヤー」になるのは難しく、他人の合従連衡をただ見つめているしかなく、あるいはゲームが終わった後でその結果の「受領者」になるしかない。

この角度から見ると、中国政府がなぜコア技術の「自主コントロール」を急ぎ求めることになったかを理解でき、少なくとも戦術的な意味において、「自主コントロール」ができない場合は、中国の工業発展を妨げようとするのは、米国政府だけでなく、極端な場合、韓国、台湾の企業も加わるかもしれない。また、この角度から見ると、世界のチップ産業が細分化された業界が独占されている時代には、中国メディアが一貫して吹聴してきた中国の巨大市場がもたらす交渉の優位性も実際にはさして大きな意義を持たない。世界的なハイテク産業の競争はもはや単純なビジネス利潤の競争ではなく、国家安全保障とビジネス利益の混在、産業チェーンの抑圧と反抑圧の複合的なゲームとなっている。パイプと生産力を持つ韓国のチップ企業に中国は依存せざるを得ないが、これは米国国家権力が世界的に拡張したことの反映であり、中国が目下、我慢して受け入れざるを得ない現実である。

(『日系企業リーダー必読』2022年1月20日-2月5日号記事からダイジェスト)

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